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「COMPANY Forum」レビュー(2015年、キーノートセッション)

日本から世界的イノベーションを生むには

2016/8/25
3つのクラウドを活用すれば、資金がなくても新しいビジネスを世界規模で瞬時に始め ることができる時代。最新テクノロジーと発想力で一人の人間が世の中を変えていく。21世紀型世界企業はすでに異次元の活動を始めている。
*この記事は2015年12月10日に開かれた「COMPANY Forum 2015」のキーノートセッションの内容をワークスアプリケーションズが取材した記事の転載です。

「アイドルエコノミー」とスマホセントリックなエコシステム

テクノロジーの進化は世界のビジネスシーンを大きく変えた。1994年にジェフ・ベゾス氏が本のネット販売から始めたアマゾンは今やショッピングサイトの枠を超え、クラウドコンピューティングの分野で世界のトップを誇る。

一方、ICTの活用で「選択と集中」を実行し、農業の生産性を飛躍的に高めることに成功したのはオランダだ。国土面積が九州とほぼ同じという小国ながら世界第2位の農産物輸出国に成長している。また、3つのクラウドの発達も世界を大きく変えつつある

「クラウドファンディングで投資家から直接資金を調達して、クラウドコンピューティングが提供する最新技術を活用しながら、クラウドソーシングの優秀な人材を必要に応じて使う。そんなやり方でたった一人でも新しいビジネスを始められる時代になっている」

誰もがスマートフォン1台で世界規模のビジネスを展開することが可能になり、スマホセントリックなエコシステムも様々な形で進化を遂げつつある。

大前氏がその好例として挙げたのは配車アプリ運営会社Uberだ。

「Uberの成功に学ぶことは多い。近くにいるタクシーをスマホの専用アプリで呼べるサービスを2009年にサンフランシスコで創業した。瞬く間に成長し、2015年12月現在、68か国・350以上の地域で展開している。運賃の決済はすべてオランダのサーバーで行われ、資金は税率の低いバミューダにプールする。このやり方は最近のグローバルなビジネスモデルの典型ともいえる。日本でもセキュリティシステムsafieなどスマホを使った革新的なサービスが次々と誕生している」
 大前氏2

ビジネス・ブレークスルー 代表取締役社長 ビジネス・ブレークスルー大学 学長

大前氏が注目するのは自らが「アイドルエコノミー」と名付けた新しい経済現象だ。

「以前は資材や人材、資金などリソースを保有していなければ事業を始めることはできなかった。ところが自分のものではない空きリソースを有効活用するアイドル(Idle=余剰)エコノミーが登場して経済の枠組みが本質的な部分で変化している。例えば自社には印刷機がないのに印刷物を受注して、空いた機械がある工場で印刷するラクスルというネット印刷通販サイト。固定費がかからないので料金は格安だ。クリーニング業界でも宅配業者のネットワークを使った同様のサービスが始まっている」

アイドルエコノミーとGPS(全地球測位システム)技術の組み合わせで多くの新しいビジネスが生まれると大前氏は言う。

「映画館の空席(アイドル)情報を周辺にいる人たちにSNSで配信し、上映時間直前に割引で販売する。映画館は空席が埋まり、来場者は安く映画を見ることができる」

GPSは物流、農業、建設機械、パーソナルナビゲーション、民間警備、災害対策など様々な分野で活用されており、その市場は2020年までに日本のGDPの12〜13%になると予測されている。

「アイドルエコノミーで安価で便利なサービスを提供できるようになれば、利用者はもっと増大するだろう」

大前氏が日本の起業家に提案するのは「最新のテクノロジーと新しいビジネスの手法を徹底的に研究すること」だ。「3つのクラウドを効率的に使って業務を簡素化し、素早く世界規模で展開する。そのスピード感を身に付けた時、日本発のイノベーションが世界を席巻するだろう」

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*大前研一氏が登場した「COMPANY Forum」は、今年は9月28〜29日に開催します。 イノベーション創出に関連するセッションを設けており、無料で参加できます(事前登録制)ので、こちらからお申込みください。