ソニーブランドへの愛ゆえに経営転換できなかった
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「経営の舵を握っていたものとして責任を感じ、正直に反省する。」
ソニーの一時代を築いた出井氏のソニー回顧録。本稿で出井氏は真摯に自らの成したことに向き合った上でそう述べている。
私がこの15年以上、ずっと不思議だったことの一つに出井氏に対する罵詈雑言の数々がある。そしてその多くが極めて感情的。ここNewsPicksでも、まるで出井氏を親の敵かのように情緒的に揶揄するコメントを良く見かける。
1995年、出井氏がソニーの代表取締役社長に就任、"Digital Dream Kids"の旗印の下、ソニーは燦然と輝いていた。しかし、その頃ですら、出井氏を揶揄する声は、全く異業種にいたヒラサラリーマンの私の耳にも良く入ってきた。いわく「出井さん、今あんなだけど、英語も大して出来ないし、30代までは同期じゃ平均以下だったらしい」「所詮、宣伝部長あがりだしね。運だけで来た人らしいよ」いずれもソニー内部や周辺で働く私の友人が、当時ソニーで40-50代以上だった人たちから聞いた言葉だ。
出井氏とは私がGoogle在籍時に何度かお会いしたことがある。最初にお会いしたのは、当時のGoogleのCFOとアジア太平洋地域(APAC)責任者へ日本市場に関するレクチャーをする際の一環で、その会議を私が取り仕切った時だった。
その会議の直前、APAC責任者が苦々しそうに私に耳打ちした。「俺が一番嫌いな日本人の一人が出井なんだよ。俺は奴を空港で見ただけなんだが、どうにもイケ好かない奴だった。何しろその時、俺の人生の中で最高の美女を奴は連れて歩いてたんだ。あの光景を俺は一生忘れない。」ちなみに彼は今、Google本社の事業開発部門のトップだ。
出井氏を揶揄したり、批判するとき、常にその背後に出井氏への「嫉妬」を感じる。ソニー凋落の原因など、今となってはどうでも良い。設立趣意書も過去の経営者のこともどうでもいい。平井ソニーはただただ新しいソニーの形を作ればいいだけだ。そしてもうそろそろ、出井氏を揶揄するのは止めにしてはどうか?連載を最後まで読んでの感想ですが、やはり出井さんには、本当は経営者としてソニーのあるべき未来は見えていたのだろうな、と思いました。
ネットとの融合というソニーが目指した道は、決して間違えではなかった。
しかし、ソニーとアップルが違ったのは、彼が創業世代のメンバーではなかったことではないでしょうか。
時代の端境期に、巨大になりすぎた組織を変えるためには、とてつもないカリスマが必要です。
そんな時、アップルはジョブズが戻り、ソニーは創業メンバーが会社を去った。
思う通り動かない組織を動かすためには、数字で回りを従わせなければならず、そのことは結果的に創業の理念に背くことになって、さらに第一世代の反発を強める結果になってしまった。
そこで第一世代の牛耳る本丸のエレクトロニクス部門ではなく、成長中のコンテンツ分野の責任者を、しかも日本本社ではなくアメリカから持ってくることで、改革の継続を目指したものの、それが最終的にはソニーの命取りになってしまった。
私には、そんな経営者としての苦悩が、連載を通じて伝わってきました。
「ソニーブランドへの愛ゆえに経営転換できなかった」という言葉に、その10年間の苦悩がすべて凝縮されているような気がします。
そして、それは創業の後を継いだあらゆる経営者の抱えているであろう、悩みと問題そのものだったのでしょうね。
今後の出井さんのご活躍をお祈りしたいと思います。