ひとつだけ後悔していること。「抽選採用」の構想へ

2016/8/8

リンゴ栽培と会社組織

18年間の会社経営の中で、ひとつだけとても後悔していることがあります。
僕の意思で、ある社員を解雇したことです。13年前の話です。
とくに事業の行き詰まりで人件費を削減したかったわけではありません。その社員が何か不正を働いたり、勤務態度が悪かったりというわけでもありません。
日ごろの言動などを見ていて、なんとなく「この会社の社風には合わないのでは?」という曖昧な理由でした。
その当時、何かの本を読んでいる時に、解雇についての考え方を、どこかの社長さんが語っているのをたまたま目にし、情けないことに、その考え方に影響を受け、社員の解雇を決めてしまったのです。
その本にはこんなことが書いてありました。
「解雇とはリンゴの栽培に似ている」と。
たとえば、リンゴの木に10個の実がなっていたとします。
そのうちの1個がなんらかの原因で、小さかったり、痩せていたりして、売り物になりそうにないと判断した場合、他の9個に栄養を集中させるために、その1個のリンゴを収穫前にもぎ取って捨ててしまいます。
これは会社組織と一緒だと。冷酷ではあるけれども、時には会社は利益を上げるために、そのような判断をしなければならないと。
それを読んだ時は、「ごもっともだ。自分が農家の人だったらきっと同じことをするし、この人は正しいことを言っている」と、そう思いました。
解雇を通知したのは、それからすぐの、ある朝でした。
社長室から泣いて飛び出していくその社員を見て、社内のスタッフたちもすぐに何が起きたのかを理解しました。
その後すぐに、解雇になった社員の仲間数人が社長室にやって来ました。
「社長! なんでですか? 今までにはいなかったタイプの社員ですけど、僕たちとは仲良くやってたし、仕事だって何の問題もなくやってくれてたじゃないですか! なんでですか!?」