(Bloomberg) -- スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」は、2015年に亡くなった任天堂の岩田聡前社長が深く関わったゲームだった。「ゲーム人口拡大」を掲げた経営者の思いが、スマートフォンを生かしたゲームとなって結実した。

「岩田さん、ようやくここまで来ました。どうか空からどれだけの人々が外へと飛び出していくか、見ていてくださいね」。ポケモンGOを開発したナイアンティックのアジア統括本部長、川島優志氏は8日、岩田氏へのメッセージをウェブサイトに書き込んだ。ナイアンティックは米グーグルから分社し任天堂とポケモンの出資を受けたが、川島氏によれば、背景に岩田氏の尽力があったという。

任天堂の持ち分法適用会社のポケモンとナイアンティックが制作したポケモンGOは、米国やオーストラリアで配信され人気となっている。日本でも近日中に配信開始の予定。スマホのカメラレンズを通して実際の世界を見ると画面にキャラクターが現れ、捕まえることができる。株価はポケモンGOの人気で上昇し、時価総額は大幅に増加した。

エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「スマホを使うとゲーム専用機よりも1桁多い人たちをターゲットにしたビジネスができる。桁が1つ上がったビジネスをしていこうというのが、岩田さんの思いだった」と述べた。またポケモンGOについては、スマホゲームでは「本当の意味での社会的な現象を起こしたゲームは、これが初めて」だと話した。また任天堂の収益面への影響については「広く薄くの課金で、ものすごい収益を上げられる可能性がポケモンGOで示された」と述べた。

両方にプラス

ナイアンティックの川島氏は12日、ブルームバーグのインタビューに応じ、岩田氏がゲームについて、人をつなげるようなものであってほしいと考えていたことが印象的だったと述べた。また「ナイアンティックのような、まったく新しい切り口のものに対しても可能性を見いだしていただいたこともわれわれとしてはありがたかった」と話した。

ポケモンGOは想定を超えた人気となっており、配信国拡大に向けナイアンティックはサーバーを増強中だ。日本でもなるべく早く配信できるよう作業を急いでいる。

任天堂は従来、ゲーム配信を自社のゲーム機に限っていたが、スマホの普及に伴い方針を転換した。今年3月に同社初のスマホ向けアプリ「Miitomo(ミートモ)」の配信を開始。秋には「ファイアーエムブレム」と「どうぶつの森」の2本のゲームアプリ配信を開始する。

岩田氏は、据え置き機「Wii(ウィー)」や携帯型機「DS」を投入し、一時代を作った。スマホゲームには当初、否定的な見解だったが、参入を決断した。15年3月の会見では、スマホ向けにゲームを配信する方向にかじを切った理由について、ゲーム機とスマホの「両方のためにプラスになるという答えが見つかった」と説明し、「早期に複数のヒットタイトルを生み出したい。任天堂のプラットホームの再定義への取り組みになる」と話していた。

夢と現実

ナイアンティックの川島氏のウェブサイトへの投稿によれば、ポケモンGOは、14年4月に行ったイベントがきっかけで開発された。イベントではウェブ上の地図でキャラクターを捕まえたが、「これを現実の世界でできないか」とナイアンティックの最高経営責任者(CEO)のジョン・ハンケ氏から依頼があったという。

ハンケ氏はポケモンの石原恒和社長と日本で面会し、プロジェクトが開始された。石原氏は15年9月の会見で、任天堂の岩田氏と取り組んできたゲームであることを明かし、「本来であれば一緒に発表したかった」と話している。

川島氏は「Dreams come true(夢はかなう)」と言いながら米国版の配信開始のボタンを押した。「夢と現実が混ざり合って、新しい現実が世界中でつくりあげられていく、そんな始まりになったらいいな、と思います」とウェブサイトに記載した。

任天堂株は4日連騰、12日は前日比13%高の2万2840円で取引を終了した。4日間で株価は6割近く上昇し、時価総額は3兆2357億円と昨年10月以来9カ月ぶりに3兆円台を回復した。

(第5段落にナイアンティックの川島氏の発言内容を追加しました.)

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