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特集「LINE韓日経営」続編

上場が明らかにしたLINEの本当の「序列」

2016/6/29
 今年7月の日米同時上場に向けて、いよいよカウントダウンに入ったLINE。NewsPicks取材班が連載したLINE特集をベースに、さらに取材を積み重ねた経済ノンフィクション「韓流経営LINE」の発売(7月2日)を前に、独自インタビューなどを紹介していく。

第1回:ホリエモン、LINEのライブドア軍団を語る
 第2回:LINEが勝つには「買収」しかない
 第3回:ライブドアがあったら、iPhoneをパクっていた

明るみに出た“日韓格差”

「さすがに、あれを最初に見た時は、少しやる気をなくしましたよ」(LINE社員)

2016年6月10日、東京証券取引所がLINEの株式公開を承認し、今LINE本社のある渋谷ヒカリエは、上場を前にした熱気に包まれている。

時価総額は約5800億円。上場を検討し始めた2年前の想定時価総額より大幅に目減りしたとはいえ、今年のIPO案件として世界最大規模であることは間違いなく、7月15日の上場に向けて、“LINEフィーバー”は続いている。

だが、LINEの上場が承認されたことで、浮き彫りになった真実もある。

それは、LINEの経営陣や社員たちに割り振られていた、ストックオプション(新株予約権)の途方もない格差だ。人間の欲望をかき立てる報酬に関わる内容だけに、社員からの関心も高い。

ストックオプションとは、自社の株式を報酬として、経営陣や社員たちに与えることだ。

働けば働くほど、自社の業績が成長し、それが株価の上昇につながってゆく。そうしたプラスのサイクルを生み出すための報酬システムと言える。

もちろん、会社の業績にとって果たす重要性や貢献度に比例して、付与されるストックオプションの株数というのも決まってくる。

では、LINEという会社において重要な役割を果たし、大量のストックオプションをもらった人々というのは誰だったか。

下の表は、6月10日にLINEが提出した有価証券報告書によって明らかになったストックオプションの保有数ランキングだ。

非上場のためこれまで詳細な役員報酬などは開示していなかったが、有報によって実態が明らかになった。

 ストックオプション.001

おそらくLINEの社員であっても、この保有数ランキングを見て、あっと声を出して驚いた人がたくさんいたに違いない。それは、このLINEという組織における、ある意味での、リアルな序列を表しているからだ。

冒頭のように、あまりの歴然とした“格差”を見て、モチベーションに影響が出そうな社員もいた。

LINEの父の貢献度

ストックオプションの保有でダントツのナンバーワンなのが、“LINEの父”ことシン・ジュンホ(最高グローバル責任者)だ。

シンは、NewsPicks編集部が、5月の20回連載「LINE韓日経営」で、事実上のLINEのトップであることを解き明かしてきたLINEにとっての絶対的な存在だ。

ここで付与されているストックオプションのすべてが、仮に資料に書かれている通り1株当たり1320円で取得でき、公募価格の2800円ですべて売り払うことになれば、単純計算で151億9146万円の売却利益が見込まれる。

まさに超のつく億万長者だが、それだけの貢献があったということだ。

シンとともにLINEの「トロイカ体制」を担うCEOの出澤剛、CSMOの舛田淳が享受する恩恵は、シンのストックオプションの株数と比較して、その100分の1にも満たない。それは図らずも、このLINEという企業内における“ランキング”をあからさまに表したものだった。

シンに続くのが、LINEの親会社である韓国ネイバーの創業者であるイ・ヘジンその人だ。

韓国IT黎明期からネイバーを率い、すでに9億3500万ドル(約1000億円)という途方もない資産を築いているコリアン・ドリームの体現者ではあるが、このLINE上場による巨大なストックオプションの価値は、長年の苦労もあいまって胸に輝く勲章のようなものに違いない。

また、かつてシンと共に、ネイバーが買収した韓国ITベンチャー「チョヌン」で同じ釜の飯を食ってきた仲間たちも堂々のランクインを果たしている。

最高技術責任者であるパク・イビンや、LINEのグローバル戦略子会社である「LINEプラス」のサービス企画部門トップなど、重要なポジションを担っているコ・ヨンスなどはその代表格だろう。

さらには、かつてネイバーと韓国で巨大IT企業「NHN」を形成し、今や完全に分社化したゲーム会社「NHNエンターテイメント」のトップであるイ・ジュンホも3位に名を連ねている。7位のキム・ソンフンは、現在のLINEフレンズのCEOだ。

このほか、LINEという会社に精通している人ならば、思わず目にとまるのが、15位にランクインしているカン・ビョンモクのはずだ。

彼はLINE特集でも紹介した、あのLINEのスタンプとなった可愛らしい公式キャラクターを描いてきた、韓国人のイラストレーター、mogiだ。

かつてはインターネット上で読まれるマンガ「ウェブトゥーン」の書き手で、現在はLINEプラスに所属するこの若きmogiは、その貢献度の大きさからか、LINE前社長の森川亮とほぼ同等のストックオプションを与えられていた。

2年越しの上場に、LINE社内も盛り上がっているという。

2年越しの上場に、LINE社内も盛り上がっているという。

開示されたトップ49人のランキングを眺めると、もちろん2010年に買収され、成長をけん引してきたライブドア出身幹部にも、ストックオプションの恩恵があることにも目が行く一方で、まず何よりも、その75%にあたる37人が韓国側の経営陣や社員であるという事実がくっきりと読み取れる。

韓国ネイバーの子会社であるという資本関係、そして10年以上にわたって日本市場攻略に強く注力してきた歴史を考えれば、ある意味では当然ともいえるが、それでもLINEという会社組織を象徴している人物リストになっているとも言えるだろう。

2014年夏からうわさされ、今年7月にようやく実現するLINEの株式公開は、この会社の「韓流経営」そのものを映し出すクライマックスになるはずだ。

*LINE特集から大量の追加取材を加え、大幅に再構成した経済ノンフィクション「韓流経営LINE」は、LINEをめぐる多数の秘話を盛り込んでおり、下記リンクより予約購入いただけます。

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