[東京 16日 ロイター] - 米ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ(SSGM)のグローバル・マクロ戦略責任者、マイケル・メトカフ氏(ロンドン在勤)は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票を控えて、英国債市場では海外投資家によるエクスポージャー縮小の動きがみられず、結果次第では資金引き揚げが起きる可能性があるとの見方を示した。

SSGMは、米金融大手ステート・ストリート<STT.N>の投資調査、為替・株・債券・デリバティブ取引などを行う部門。

メトカフ氏は、ロイターとの10日のインタビューで、今月23日に迫る国民投票を前に、ブレグジットという「計量できない不確実性」に対する投資家の警戒態勢は市場ごとに差があると指摘した。

為替市場については「十分な備えがある(very ready)」との見方を示し、投票の結果EU残留が決まれば、前もって売られたポンドは急伸するだろうと述べた。逆に離脱となれば、ポンドは一段安が見込まれるほか、単一通貨ユーロも「大国であるメンバーがクラブを抜けることが(EU弱体化との連想から)ネガティブに作用する恐れがある」ため弱含むと予想。対して、米ドルと安全通貨とされる円は上昇するとみている。

英国債市場については、「国民投票を前に、海外投資家が目立ってエクスポージャーを縮小していることを示す証左がないことは驚きであり懸念でもある」と述べた。「(ブレグジットで)ポンドが大幅に下落すれば、それは急速な(輸入)インフレを招き、たとえ中央銀行が追加買い入れを行なっても英国債の魅力が損なわれる恐れがある」との見方を示した。

株式市場については、英FTSEはエネルギーと金融関連銘柄の比率が高く、英国経済を強く反映するものではないとしたうえで、ブレグジットが決まれば金融株はその影響で下げるだろうが、エネルギー株はもっと固有の要因に左右されるため、総合的な影響は予想しづらいとしている。

さらにメトカフ氏は、国際通貨基金(IMF)や米連邦準備理事会(FRB)の高官がブレグジットはグローバル市場にとって大きなリスクだと繰り返し警告しているが、実際には経済的な影響は数カ月、数年がかりで顕在化し、経済が短期的に大打撃を受けるわけではないと指摘。その上で、「ただ、金融市場は常に将来を見通す努力を行い、将来の出来事を踏まえて現在価値を求めようとする性質があり、市場は(ブレグジット決定なら)即座に反応するだろう」と述べた。

財務省が公表した対外証券投資統計によると、日本の投資家のポンド建て債券投資は、4月に5325億円と2008年12月以来の高水準、05年の統計開始以降では3番目の高水準を記録。また日本銀行のマイナス金利発表後の2月からの3カ月間では、9062億円の買い越しとなっており、英国債市場の動向は日本の投資家にとっても無縁ではない。

(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)