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イノベーターズ・トーク

【新】南壮一郎×佐々木大輔「無駄を価値に変える思考術」

2016/5/30
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、イノベーターが時代を切り取るテーマについてトークを展開する。
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第28回は、会員制転職サイトを運営するビズリーチ南壮一郎社長、クラウド会計ソフトを運営するfreee社長の佐々木大輔氏が登場する。

テーマは、「ユニコーン予備軍の経営論」だ。

ユニコーン──。もともとは伝説の一角獣のことだが、アメリカではめったに見られないとの意味合いで、非上場だが企業価値が10億ドル(約1100億円)を超える優良ベンチャーのことをこう呼ぶようになった。

では、ここ日本ではどうか。

2009年の創業以来、急成長を続け、今年37億円超の資金調達をした会員制転職サイトを運営するビズリーチ。2012年の設立以来、新興フィンテック企業の雄として快進撃を続け、2015年は累計45億円を調達した、クラウド会計ソフトを運営するfreee──両社は、「ユニコーン予備軍」と呼ぶのにふさわしい存在だ。

ビズリーチを率いる南壮一郎氏、freeeトップの佐々木大輔氏には共通点がある。ともに、「非効率をテクノロジーで変える」ことを目的に起業したことだ。

ビズリーチは、南氏が転職活動をしていた頃、エージェントに行っても、紹介してくれる案件が限定的だったことから、その全部の案件を見たいとの思いでつくられた。

一方、freeeは佐々木氏がグーグルで中小企業向けマーケティングを担当していた頃、多くの中小企業がテクノロジーを活用できておらず、経理で苦労していることに気づいたことが着想の原点だ。

二人はかねてからの情報交換仲間というだけあって、その経営哲学にも共通項が多い。その一つが、「当たり前の価値観ややり方を、徹底的に疑う」姿勢だ。

その考え方を樹立した背景もよく似ている。佐々木氏は開成中学時代、優秀な同級生を目の当たりにしてアイデンティティを喪失しかけた。南氏は、幼少期にカナダで「マイノリティ」として過ごした。つまり二人ともアウェー経験から「常識を疑う」ことを覚えた。

そして二人は、「マイノリティ体験をした人のほうが、革命を起こしやすい」と口をそろえる。

革命は疑うことから──。そんな2人のものの見方、革新的な経営法、新たなビジネスシーズの見つけ方を聞くことで、新時代のヒト・モノ・カネの動かし方のヒントが見えてくる。

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非効率をテクノロジーで変えるのが、自分の役割だ──。

ビズリーチとfreeeは起業の立脚点からして、似ている。

さらに、二人に共通するのが「ヒト」に対する考え方だ。南氏は、「ベンチャーにとって、採用は本当に大切。『何をするか』以上に『誰と働くか』が重要」だと強調する。

そして、「組織のあり方」については楽天イーグルス時代に、三木谷浩史氏に教え込まれたことが基盤になっていると、言う。果たして、その教えとは?

第1回:「重要なのは『何をするか』より『誰を雇うか』」に続く。

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南氏は楽天イーグルス時代、三木谷浩史氏に「上司を雇うつもりで、自分より優秀な人間を採り続けること」が重要だと教わり、それを実行してきたことが、ビズリーチ成長の秘訣だと話す。

佐々木氏も、これに同意。「マネージャーは『偉い人』ではなく『メンバーを活躍させる人』だ」と定義する。

こうした考え方は、両社の組織カルチャーにも色濃く反映されている。上意下達ではなく、社長自身の考え方や思考プロセスを社員と徹底して共有する。

一方、創業して早いうちに黒字を達成した南氏は、経営の投資を続ける佐々木氏に、「赤字がこわくないか?」と率直な疑問を投げかける。それに対する佐々木氏の答えとは?

第2回:「過去の価値観を徹底的に疑え」に続く。

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佐々木氏は、かつてメディアで「正攻法で生きても負ける」と発言した。これに対し、南氏は、どういう意味か?と突っ込む。

佐々木氏によると、発言のルーツを中学時代にさかのぼる。佐々木氏は文武両道で知られる名門、開成中学で優秀な生徒に埋もれてしまっていた。

だが、人がやらないあることに目をつけ、一躍、名を知られる存在に飛躍した。その出来事とは何か?

一方、南氏も幼少時代をカナダで過ごしたマイノリティ体験が自分の基盤になっていると告白する。

そして、2人は「マイノリティ体験者こそ革命にむく」との結論に行き着く。はたして、その理由とは?

第3回:「正攻法で生きても負けるだけだ」に続く。

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「日本版ユニコーン」的な存在たるビズリーチとfreee。トップの南氏と佐々木氏は上場に対して「できる会社がすればいい」と、冷静な構えを示す。

「小なサイズで上場すると、ちょっとしたことで株価が上下して冷や汗をかきますから。それに対処するパワーがもったいないですよね」(佐々木氏)

また、以前は上場して知名度をあげることで優秀な人材を採用できるメリットがあったが、今は未上場のままでも、優秀な人材は採用できると自信を見せる。

さらに、2人のトークは両社が昨年と今年にわたり行った大型調達の目的について発展。2人が描く、両社の未来予想図とは。加えて、2人が注目する、今後開拓余地のある有望領域とはどこか。

第4回:「『非効率』がまかり通る分野に勝機あり」に続く。

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2人の経営論は、出身企業にルーツがある。

佐々木氏がもっとも影響を受けたのは、一番長く在籍したグーグルだ。

入社したばかりの時は、わからないことを周りの人にきくと、「そんなこと、ここに書いてある」と誰も教えてくれず、ただ説明が書いたリンクがメールに貼られて送られてくるカルチャーに戸惑った。

だが、その超効率的で合理的な文化こそが、「社会の非効率を改善したいという今の思い」の礎になっていると言う。

グーグルのムーブメントを起こそうという姿勢を知ることで、仕事が楽しくなり働く意義をよりいっそう感じられるようになった、とも。

南氏も、楽天イーグルス時代に一緒に仕事をした、三木谷浩史氏やヤフーの小澤隆生氏らから、「仕事を楽しむ」ことを学んだ、と語る。

最終的に、経営の神髄とは仕事を楽しむ喜びを仲間と分かち合うことだ──と結論付ける2人。本対談を通じ、その本質が、余すところなく語られる。

第5回:「起業に必要なことは全部グーグル、楽天で学んだ」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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第1回:5月30日(月)公開
重要なのは「何をするか」より「誰を雇うか」

第2回:5月31日(火)公開
過去の価値観を徹底的に疑え

第3回:6月1日(水)公開
正攻法で生きても負けるだけだ

第4回:6月2日(木)公開
「非効率」がまかり通る分野に勝機あり

第5回:6月3日(金)公開
起業に必要なことは全部グーグル、楽天で学んだ

(予告構成:佐藤留美、本文構成:合楽仁美、撮影:竹井俊晴、デザイン:名和田まるめ)