東大卒・元銀行員、「ミドリムシに賭ける男」の脱線人生

2016/5/21
ユーグレナ社長の出雲充氏は東京大学卒業後、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に就職するが、1年で辞めて起業した。「ミドリムシで地球を救う」。この壮大な目標に向かって前進を続ける。

生物は本来「ずっと同じ」が安定

実は、生物というのは、昨日と今日と明日がだいたい同じというのが、本来、一番安定する。
新しいことに挑戦しない人は、生物として考えると、合理的で賢い選択をしていることになる。
しかし、今、生き残っているベンチャーは、明らかに非連続な展開をしてきたからこそ成功した──。

飢餓問題の本質

私は今、ユーグレナという会社で、ミドリムシという小さな生物を大量培養し、地球を救うことに人生を賭けている。
私たちが生活しているこの地球は現在、間違いなく危機にひんしている──。
バングラデシュでの体験が、私の目を大きく開かせた。
バングラデシュでは山ほどコメが取れるから、とりあえず炭水化物で腹を満たすことはできる。
足りないのは、人間に栄養をもたらす野菜や肉、魚、卵、フルーツ、牛乳などであり、こうした栄養不足を解消する妙策がないということが、発展途上国の飢餓問題の本質だったのだ──。

度胸がなくて銀行に就職

大学卒業後の進路として、銀行への就職を選んだ。
研究のためにも会社設立のためにも、お金は必要になる。
ビジネスの現場でお金の動き方を勉強しておいて損することはないと考えたのだ。
もっとも、実際には自分の「弱さ」が原因だった。
それまで自分が歩んできた「レール」を降りることが怖かったのだ──。

堀江さんとの出会い

2005年、堀江貴文さんが参加する新年会に招かれた。
ミドリムシの話をすると、堀江さんが「これは大事な研究だから、こういう飲み会の場ではなく、もう一回詳しく話を聞かせてほしい」と言い出した。
「資金が足りない」と答えたら、「六本木ヒルズのカードキーを今、渡すから、パソコンもコピー機も会議室も自由に使っていい。これでやらない理由はないよね」と言ってくれた──。

大量培養成功が一転…

「出雲さん、やりました。プールがミドリムシでいっぱいになりました」
「本当か!」
しかし、事態は思いもよらない方向に急転した。
1月16日、六本木ヒルズにあるライブドアのオフィスに、東京地検特捜部の強制捜査が入ったのだ。
この日から、人々は少しでもライブドアと関わりのあった人や会社を忌避するようになった──。

1つの望み

ユーグレナの経営危機は深刻化していった。
自分たち役員の給与を削り、社員に給料引き下げを伝え、ついには退職を呼びかけなければならなくなった時期もあった。
それでも事業を継続したのは、1つだけ望みが残っていたからだ──。

ミドリムシでジェット機を飛ばす

ミドリムシ由来の油がジェット機の燃料になるのであれば、将来、ユーグレナにとって食料ビジネスに続く第二の柱になるかもしれない。
何より、ミドリムシでジェット機を飛ばすことができれば、日本経済の活性化にも大きく貢献できる。
私はミドリムシ燃料ビジネスを本格始動することを決意した──。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:織田 篤、撮影:後藤麻由香)