20160517-robots-trends-b

公開された2つの特許から見えるもの

グーグルはロボット技術で何を仕掛けるのか

2016/05/19

グーグルが出願しているロボットに関するパテント2件が米国特許商標庁(USPTO)のサイトに公開された。やはり、ロジスティクスに関するもののようだ。

グーグルは2013年に買収した7社のロボット会社の技術でいったい何をするのだろうとうわさが絶えない。日本のシャフトを含むロボット会社は、ほとんどが先端的な技術を持つ優秀な企業であることも、人々の関心を引きつけてきた。

だが、買収を指揮したアンディ・ルービンがグーグルを辞めてしまったことに加え、最近は買収された1社でヒューマノイドや動物型などびっくりするようなロボットを開発してきたボストン・ダイナミクスが売りに出されていることが明らかになり、「いったいどうなるのか」という好奇心が否応にも高まっていたところだ。

買収したロボット会社には「歩行」「バランス」「エンターテインメント」「コンピューター・ビジョン」といろいろな強みがあったので、グーグル・ロボットがもちろんロジスティクスだけに制限されるとは限らないだろう。

だが、今もっともロボットが必要とされている分野のひとつがロジスティクスであることを鑑みると、なるほどと言えるところだ。

倉庫で「箱を認識してつかむ」技術

今回公開されたパテントは、ロジスティクスの中でも倉庫や発送センターのロボットで使えそうなものである。

ひとつはトラックから荷下ろししたり荷積みをしたりするロボットと、倉庫の中で荷物を運ぶロボットだ。前者は自動走行カートにロボットアームがついているもので、それがトラックに積まれた段ボール箱を認識してつかむ。つかんだ箱をもうひとつのロボット、後者の自走カートの上に積載するというものだ。自走カートは、それをしかるべき場所へ運ぶ。

ここでいうしかるべき場所というのは、配送センターで荷下ろしされたものならば商品整理部門かもしれないし、商品を荷積みするのならば製造や箱詰め作業現場からトラックまで運ぶということになるだろう。

製造現場や配送センターで自走するカートは、現在さまざまなロボット企業が開発を行っているものだ。だが、このパテントにはそれ以上の技術が盛り込まれている。

ひとつは、箱を認識してつかむという技術。これは、買収された1社であるインダストリアル・パーセプションという会社が開発していたものだ。買収された当時は汎用(はんよう)的なロボットアームに搭載された技術だったが、今度はロボットアームを自走カートに載せたことになる。

トラックにさまざまなサイズや形状の段ボール箱が無造作に積み上げられていても、ロボットアームが箱をちゃんと認識して、その箱の外側をしっかりと把持するというのは、実はけっこう難しい技だ。

ロボット同士が自律して動く仕組み

そして、何といってもロボットアームをつけた自走カートと荷物を運ぶ自走カートが互いにコーディネートしながら動くというしくみもある。それがふたつ目のパテントで、複数のロボットの動きを無駄なく管理する中央システムや、ロボットが互いにぶつからないようにするしくみが含まれている。

現在、他社の倉庫ロボットでは人間が棚からピックしたものを自走カートが発送センターへ運んでいくというものはある。一方、このグーグルのパテントでは人間なしにロボット同士が互いの仕事の進捗(しんちょく)に合わせて自律的に作業を進めるわけだ。一度目にしてみたい光景ではないだろうか。

それに、この技術はひょっとするとアマゾンにも売れるかもしれない。

周知のように、アマゾンはロボット技術を配送センターに大掛かりに導入している。だが、アマゾンのロボットは棚を配送係に持ち運んでくるところまでだ。

箱詰め作業をどうロボットにやらせるのかがアマゾンの大きな関心事であることは間違いないのだが、もうひとつ、トラックからの荷下ろしや荷積みがあった。この部分は、アマゾンとはいえ、まだかなりの部分は「人の手」で行っているはずだ。

アマゾンにもまだできない部分をグーグルがロボット化しようとしている。ロジスティクスというサービス分野にも、着々とロボットが生まれている。それを感じさせるパテントである。

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。

(文:瀧口範子)