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車や電柱の周りに取り付け可能

コロンビア大学の研究所でシュリー・ナーヤル教授が作ったカメラレンズは、おそらくいままでだれも見たことがないものだろう。透明のシートにたくさんの突起がついているもので、スマートフォンの中のカメラレンズとは異なる。非常に柔軟性が高く、曲げていくと画角が広がるというものだ。

まだ試作品の段階だが、いずれはこのフレキシブル・レンズアレイによって、あらゆる面にカメラを取り付けることが可能となるだろう。たとえば車のまわりに取り付け、自律走行の補助や渋滞時の周りの状況把握に使用することもできる。あるいは電柱の周りに取り付け、360度の監視映像を撮影することも可能だ。

またナーヤルは、このレンズアレイをフレキシブル・ディスプレーと組み合わせることで、シート型のフレキシブル・カメラを作る構想も持っている。

「用途に合わせ、車のバンパー全体などどんな表面にでも装備することができる」とナーヤルは言う。

実際にどう機能するかを確かめるため、研究者はナーヤルたちの試作品を参考にフレキシブルシート・カメラを製作した。

まず、33個x33個のレンズから成る非常に低解像度のフレキシブル・レンズアレイをシリコーンゴム上に成形した。このレンズアレイを穴の空いたプラスチックのフレキシブルシートと拡散シートの上に重ね万力に据え付けると、すべての層を一度に曲げられるようになる。

万力の上には画像を映し出すためのコンピューターモニターを配置した。すべての層をさまざまな角度に曲げながら装置の下に置かれたデジタルカメラで撮影すると、拡散シート上に画像(さまざまな色の点や馬と一緒の男の子など)をとらえていることがわかる。

実用化にはフレキシブルな電化製品が必要

いずれはこのフレキシブルシートの概念を使って、大学院生で論文の執筆者であるダニエル・シムズの手製のものよりもさらに高解像度のイメージセンサーが生産されるだろうとナーヤルは考える。研究者はレンズを変形することでズーム機能としても使えるかどうかを調査中だと同氏は言う。

だが、この技術を真に実用化するには別のタイプのフレキシブル・エレクトロニクスや、シリコン基板上ではなくさまざまな面に形成できる有機イメージセンサーの研究の進展を待たなければならないとナーヤルは指摘する。

たとえば、非常に柔軟性の高いカメラを作るには、すでにLGやサムソンが発表しているようなフレキシブル・ディスプレーを必要とする。だが、こういったディスプレーは曲面形状のディスプレーを超えた家庭用電化製品としてはまだ手に入る状態ではない。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で柔軟性および伸縮性エレクトロニクスや生物に学ぶカメラデザインの研究を行うジョン・ロジャースはナーヤルに同意する。また、光学的な実証実験としては上出来だとロジャースは言う。

しかし、このレンズアレイを実際にカメラに実装するには、非常に柔軟性が高く、高密度、高画素数の光センサーが必要で今のところ入手不可能だ。それでも「非常によい研究成果だ」と同氏は述べた。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Rachel Metz、翻訳:山口桐子、写真:kurmyshov/iStock)

This article was produced in conjuction with IBM.