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世界トップ1000サイトの49.2%が利用

一般人にとって耳慣れないスタートアップ企業のなかでも、特に重要な会社のひとつがNginx(エンジンエックス)だ。同社はオーストラリアの通信大手テルストラから800万ドルの資金を調達し、その勢力範囲をさらに拡大している。

目下のところ、Nginxの主力であるウェブサーバー技術はきわめて高い人気を集めており、1億5000万ものウェブサイトが利用している。

それどころか、ウェブ関連の調査会社W3Techsの調査結果によれば、アクセス数で世界トップ1000に入るサイトの49.2%がウェブページをブラウザに届けるという負荷の大きな作業を処理するにあたってNginxを利用しているという。

この割合は、競合するマイクロソフトの「IIS」(トップ1000サイトの6.8%)やグーグルのサーバー(同9.8%)をはるかに上回る。全体ではもっとも人気の高い「Apache」でさえ、トップ1000サイトの利用率は26.6%で、最上位のNginxには敵わない。

米航空宇宙局(NASA)までもが、火星探査車「キュリオシティ」から送られる映像をストリーミングするウェブサイトにNginxを採用し、膨大な数の人が同時にアクセスするために生じる激しい負荷に対処している。

豪通信大手との連携で世界進出へ

さらに、Nginxはいわゆるマイクロサービスの流行により、その勢いをさらに強めてきた。

マイクロサービスは、ひとつの大きなアーキテクチャではなく多数の小さなサービスからソフトウェアを構築するというもので、シリコンバレーのトレンドになっている。Nginxの技術は、サービス上でどこの会社の技術が使われているかにかかわらず、そうした小さなサービスを連携させるうえで重要な役割を果たしている。

「当社は周囲に変革をもたらしている」とNginxのガス・ロバートソン最高経営責任者(CEO)は述べる。

テルストラとの連携に伴い、Nginxは事業の世界進出を計画している。テルストラのような通信会社はNginxの熱烈なファンだとロバートソンCEOは言う。さらにそうした会社は、オーストラリアやそのほかの地域でコネクションを築いている。したがって、テルストラの支援を得たいまこそ、Nginxが世界へ進出する絶好の機会なのだ。

だが、Nginxの人気は同社を難しい立場に追いこんでもいる。

Nginxのファンのほとんどは、無料オープンソース版のNginxを使っている。彼らはこれまでNginxのソフトウェアを利用するにあたり、同社に一銭も支払う必要がなかった。ドッカーやカノニカルといった注目企業も、同様の難問に直面している。

コンサルティング事業は収益の柱になるか

収益の獲得を目指すNginxには、いくつかの策がある。そのうちのひとつが「Nginx Plus」だ。これはまさしく有料のソフトウェア製品で、無料版の範囲を超えたより高度なウェブアプリ管理ツールを顧客に提供するものだ。

「Nginx Plusでは単なるウェブサービングにとどまらない、さまざまなことができる」とロバートソンCEOは述べている。

ふたつ目の策はコンサルティング事業。専門家チームを派遣し、Nginxベースのアーキテクチャの導入や管理に関して顧客を支援するというものだ。

この事業は、各企業がマイクロサービスへ移行することに関して特に重要となる。というのも、従来の方法でソフトウェアを構築するのに慣れた企業にとって、マイクロサービスはまったく新しい大胆な分野であるからだ。

ロバートソンCEOによれば、この事業は急速に成長し、2015年の売上は前年比で300%増加したという。ただし、Nginxは具体的な財務状況を公開していない。コンサルティング事業の採算性については、ロバートソンCEOもコメントを拒んでいる。

Nginxは積極的に出資者を探していたわけではなく、当面の資金はすでに調達していたとロバートソンCEOは話す。だが、世界的な拡大に向けた戦略をテルストラに持ちかけられたことで、いまこそ資金調達をすべきときだとNginxは最終的に判断した。

オープンソースモデルが持つ上昇力

今回の資金調達には、これまでにNginxに出資してきたニュー・エンタープライズ・アソシエーツやe.ベンチャーズ、ルナ・キャピタル、インデックス・ベンチャーズも参加した。Nginxは2011年の創業以来、今回調達分も合わせて4100万ドルの資金を調達している。

それでも、Nginxはごく小規模の体制を維持している。多数のユーザーを擁しているにもかかわらず、同社の社員数は最近になってようやく100人を超えた程度だとロバートソンCEOは話す。また、ユーザーが本当に必要としている機能だけを追加し「肥大」するのを避けるように努めているとも述べている。

「あまり余計なものを製品に付け足さないようにしている」とロバートソンCEOは言う。「機能の追加に関しては、きわめて慎重におこなっている」

それに関して大きな役割を担っているのが、Nginxのコミュニティだ。Nginxの核となるソフトウェアはオープンソースであるため、世界中の開発者がダウンロードし、手を加え、修正点や改良点をアップロードしてメインのソースコードに還元することができる。それはつまり、Nginxがコア製品の改良に多大な時間や資金を費やさなくても、Nginx Plusが継続的に改良されることを意味する。

「オープンソースのモデルやコミュニティは、それ自体が上昇力を持っている」とロバートソンCEOは述べている。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Matt Weinberger、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:mattjeacock/iStock)

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This article was produced in conjuction with IBM.