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イノベーターズ・トーク

【グリーンスクール設立者】次世代リーダーの育て方

2016/5/9
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、イノベーターが時代を切り取るテーマについてトークを展開する。
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第25回は、バリ島の秘境の中につくられた未来のリーダーのための学校「グリーンスクール」の設立者ジョン・ハーディー氏が登場する。テーマは、「次世代リーダーの育て方」についてだ。

グリーンスクールは、「奇跡の学校」とも目される。場所は鬱蒼としたジャングルの中。校舎は竹製で壁もない。

生徒は、まるで野生児のような暮らしぶりだ。にもかかわらず、3歳児から高校生まで、世界中から450人ほどの生徒が集い、入学希望者もひきもきらない。

ジャングルの中にあるグリーンスクール。©John Singleton / Green School Bali

ジャングルの中にあるグリーンスクール。©John Singleton / Green School Bali

人気の理由は、同校の徹底した行動重視型の教育だ。

生徒の中には、わずか10歳にして、使い古しの食用油で走らせるスクールバスを“発明”した子ども。6、7歳にしてレジ袋撲滅運動を起こす……など驚くべき子どもたちがたくさんいる。

そんな生徒たちに会いに、ハーバード大学をはじめとする欧米の名門大学の担当者がわざわざリクルーティングに来るほどだ。

果たして、奇想天外なこの学校をつくった人物とは?

設立者のハーディー氏は、もともと75年に設立したジュエリー会社「John Hardy」を国際的なブランドに成長させたデザイナー兼実業家だった。

そして、その会社を2007年に売却。ジュエリー会社の製造拠点でもあり、自身の長年の住処でもあるバリに貢献したいとの思いから、「新しいリーダー」を輩出する学校をつくることを思いつく。

しかし、設立までの道のりは苦難の連続だった……。

本連載では、「奇跡の学校」設立までの背景やその授業の中身などに迫る。と同時に、次世代リーダー育成という切り口から、ハーディー氏の教育論を縦横無尽に語ってもらった。

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ジュエリービジネスを30年間以上営み、大成功を収めたハーディー氏は、2008年、私財を投じて、次世代リーダーを養成するための学校、グリーンスクールを創立した。

会社を売却し、悠々自適の身となった時は、ゴルフ三昧で遊んで暮らすことも考えた。

だが、自身は、4人の子どもと孫1人に「良いもの」を残していないと気づいたことが学校創立のキッカケとなったと言う。

だが、学校創立までの道のりは険しいものだった。洪水被害で校舎の一部が流されたこともあった。それでも、ハーディー氏は学校づくりを諦めなかった。そこにある強い思いとは?

第1回「会社の売却資金で『奇跡の学校』設立」に続く。

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ハーディー氏は、日本やアメリカなどの先進国の教育システムについて、大いに異論があると言う。

それはまるで、「要塞化された大きな古い城」。ビル・ゲイツが何億ドルも費やしてきたはずのアメリカの教育改革も、そのほとんどは失敗に終わっていると語る。

“戦犯”は、「テニュア(終身在職権)」「組合」「1800年代に書かれた教育法」だ。

「終身在職権を持つ教師は現場でまったく使えないにもかかわらず、免職することもできない。彼らは何もしないまま、ただ座っているだけなんだ」

また、ハーディー氏いわく、先進国の子どもたちは「まるで囚人」だと言う。

「あの環境でクリエイティビティが育つわけもない」

さらに、ハーディー氏は先進国の家庭教育にも疑問を呈する。わけても、“タイガーマザー(アジア式のスパルタ教育をする母親)”には、「見ていて泣きたくなる」とさえ言ってのける。

その理由とは。さらに、先進国の教育はどうあるべきか。ストレートな持論を展開する。

第2回「先進国の教育崩壊、戦犯は『終身雇用』」に続く。

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「子どもは、大人が考えているよりずっと賢い」

ハーディー氏は、そう語る。

大人が子どもを子ども扱いすることで、可能性を狭めているだけ。ポテンシャルを開花させれば、10歳以下の子どもでも驚くほどの行動力や自立性を見せると言う。

実際、近隣住民を説き伏せ、使用済の食用油をもらい歩き「バイオバス」を走らせるなど、グリーンスクールの子どもたちがやってのけた行動力には驚かされる。

その背景には、同行の教師の存在があるという。ハーディー氏は、教師は「いい先生」なだけでは不足だと言う。では、氏が考える理想の教師像とはどのような人物なのか。

キーワードは「志」だ。

第3回「10歳の生徒が起こした『環境革命』」に続く。

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グリーンスクールの校舎は竹でつくられ、それを覆う壁もない。究極のオープン環境だ。

なぜ、ハーディー氏はこのような突飛ともいえる校舎にこだわったのか。理由は明確。「人間は環境によりつくられる」からだ。

それは人間関係についても同じこと。大人が子どもにただ勉強を詰め込む行為は、「奴隷と主人の関係と同じじゃないか」とさえ言ってのける。

では、子どもの自立心や行動力を育む、環境とはどのようなものなのか。

第4回「人間を変えるのは置かれた環境だ」に続く。

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グリーンスクールの生徒や教師の国籍はさまざま。アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、地元バリ、そして日本人の子どももいる。いわば、究極のグローバル教育環境といっていい。

だが、ハーディー氏はグローバルに活躍できる人間になるためには、まずは「ローカルな課題に注目すべき」という。

果たして、その、意図とは。

また、本物のグローバル人材とはどのような人物なのかについて、ハーディー氏が鋭く切り込む。

第5回「地元の課題を解決する人こそグローバル」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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*目次
第1回
会社の売却資金で「奇跡の学校」設立

第2回
先進国の教育崩壊、戦犯は「終身雇用」

第3回
子どもは大人が思うよりずっと賢い

第4回
人間を変えるのは置かれた環境だ

第5回
地元の課題を解決する人こそグローバル

(予告編構成:佐藤留美、本編構成:Jordan Krogh、翻訳:前田雅子 、藤原朝子、 服部真琴、撮影:遠藤素子、デザイン:
名和田まるめ)