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ホークスの経営戦略【14回】

“世界最大&日本初”のビジョン活用。鷹ファンをつかむ球場演出

2016/5/7

プロ野球を最も手頃に楽しむことができるところ、それが外野席だ。

しかし、悩ましい点が一つある。12球団本拠地球場はどこでも、外野スタンド後方に立派なビジョンボードが備え付けられていて、スコアや出場メンバーはもちろんさまざまな演出や情報など、グラウンド以外の楽しみをファンに提供してくれている。

ホークス本拠地の福岡ヤフオクドームには「世界最大の合計表示面積を誇る」(球団発表)5画面構成の「ホークスビジョン」が備わっている。ジャンボジェット機にたとえれば、なんと3機分の長さになる。

今シーズンからシステムを新たにして、これまで以上に特性を生かした、最新技術をより駆使した場内演出が楽しめるようになった。

ありきたりなビジョンCMにしても、5画面『ホークスビジョン』ならではの「見せ方」が工夫されており、ついつい目が行ってしまう。

ヤフオクドームの球場演出は圧倒的迫力

ヤフオクドームの球場演出は圧倒的迫力

だが、外野席に座ってしまうと、それを見るためには体を大きくひねったり、首を大きく回したりしないと視界に入ってこない。そもそも斜めからだと見づらい。

そんな悩みが、この5月から、ヤフオクドームでは不必要になったのだ。

国内初のつり下げ型ビジョン導入

5月7日の公式戦より、球場バックネットの上部につり下げ型ビジョン「スカイスクリーン」が導入された。

スカイビジョンの完成イメージ図

写真はスカイビジョンの完成イメージ図

実際に見ると、まるでのれんのように薄っぺらい、黒い幕のよう。しかし、美しい映像がくっきりと浮かび上がる。

つり下げ型のタイプは国内の野球場では初となる。

開幕に間に合わなかったのは、耐震性や風(ヤフオクドームの屋根は開閉式なので)をはじめとした強度のテストを繰り返したためだと球団広報は説明した。

「外野後方にある『ホークスビジョン』と同じ画角の映像が映ります。スタメン発表やハニーズ(球団オフィシャルダンスチーム)ダンスなど演出系をはじめ、試合中はスタッツ(選手成績)を紹介するなど、基本的には『ホークスビジョン』と同様のものを映す予定です」

マーケティング本部営業戦略部の小針達也さんはそのように紹介する。

広告の売上目標は毎年上昇

外野スタンドはコアで常連のファンが多い。応援スタイルを覚えていないと行きづらい……という声もしばしば聞く。

「外野席が盛り上がることで、球場全体がもっと楽しくなる。球場全体の雰囲気つくりをする発火点、それが外野席なんです。もっと楽しめる外野席にしたい」

「また、外野席はいつも球場に足を運んでくださる熱心なファンの方が多くいらっしゃいます。非常にありがたいことです。その中に『私も入ってみたい』『僕も一緒に』といった、ライト層からコア層へ行く途中のファンの方々が、より行きやすく、楽しめるように。『スカイスクリーン』にはそのような思いも込められているのです」

満員のファンが一体となって盛り上がることで、球場全体が高揚感に包まれる

満員のファンが一体となって盛り上がることで、球場全体が高揚感に包まれる

スカイスクリーンの導入により、外野スタンド派の顧客満足度は大きくアップするだろう。

しかし、「お手頃」の席である。それなりの総工費がかかったはずだが……。

「もちろん我々としては『スカイスクリーン』を活用した広告収入のアップも目指しています。売上目標は基本的に毎年右肩上がりですから。どうすれば広告収入を増やせるのか。そのうえで、バックネット裏に新たにビジョンを設置するということになりました」

QVCマリンフィールドや阪神甲子園球場などには細くて横長のリボンビジョンが設置されているが、主に文字だけの演出に限られてしまう。「ホークスビジョン」と同じような演出効果やCMを流すためには同様の画角のビジョンである必要があったのだ。

自由な発想が生まれる秘訣

ところで、バックネット裏に、しかも球場では日本初のつり下げ型にしたというアイデアとチャレンジには正直驚いた。

「初めは球場壁面に設置しようとしましたが、放水口や携帯アンテナ基地などがあり、それは無理と判断しました。ただ、それであきらめては先に進みません。物事や計画が行き詰まるときって、何か『前提条件』が邪魔をしていることが多いんです」

「もちろんそれにすべて逆らうわけではありませんが、『一度、その条件を取っ払って考えてみよう』と言います。そうすると自由な発想が生まれてくることが多いです」

ヤフオクドームは毎年のように、新たな「何か」が誕生している。

チームが強く、球場演出にも工夫が凝らされる。そうしてホークスはリーグ最多の観客を集め続けている

チームが強く、球場演出にも工夫が凝らされる。そうしてホークスはリーグ最多の観客を集め続けている

屋根が開けられる日は、ドームで開放感を満喫できる

屋根が開けられる日は、ドームで開放感を満喫できる

球場の“変化”を楽しんでほしい

この「スカイスクリーン」以外にも、バックネット裏の高級シートの一部に、1~3人掛けのソファシートとテーブルがついた「〈みずほ〉プレミアムソファシート」(7500円~30000円・価格は人数、カードによる)を導入。

また、三塁側内野座席の一部には、世界的自動車用高級シートとタッグを組んだ「RECAROスタジアムシート」(6000円~8000円、価格はカードによる)も生まれた。

さらに従来の立ち見エリアに「ヒップバー」を設置して、より快適な観戦環境を整える工夫もなされた。

「昨年と今年、今年と来年、来年と再来年。そのスタジアムの“変化”もお客様には楽しんでいただきたいのです」

まだ2016年シーズンが始まったばかりだが、早くも次のシーズンも期待が膨らんでしまう。

「プレッシャーですけどね(苦笑)」と、小針さんは頭を掻いていた。

(写真:©SoftBank HAWKS)