本を読まない人間はビジネスで勝てない

2016/5/2
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、注目すべきイノベーターたちが時代を切り取るテーマについて見解を述べる。
作家エージェント会社、コルク社長の佐渡島庸平氏、手数料無料のオンライン決済サービス「SPIKE(スパイク)」を展開するメタップス社長の佐藤航陽氏が登場する。
テーマは、本の読み方、そして情報収集術についてだ。
講談社の敏腕漫画編集者として『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などの編集担当を務め、数多のヒット作を世に送り出してきた佐渡島氏と、20歳前までは本を読まなかったと言いながらも、今では本から得た情報を血肉化し、会社経営に生かす佐藤氏が議論する。
二人の本との接し方には共通項がある。キーワードは「キュレーション」と「数珠繋ぎ」。
たとえば佐渡島氏は、村上春樹の本を読んだら、村上氏が最も影響を受けたフィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』を読むといったように作家を “キュレーター的”に使ってきたと言う。
その読書術は、現在、インターネットユーザーがツイッターやフェイスブックで気に入ったユーザーをフォローする構造と重なる。
一方、佐渡島氏が「丁寧な本読み」だと評価する佐藤氏は“熟読派”だ。
たとえば、起業の際は、経理や会社経営のノウハウを学ぶため、「その周辺の本を10冊ほどざくっと買った」。そして、一日中家に引きこもり本と対峙。「概要を掴み深彫りしていく」ためだ。
本質を知るのに、余計な情報は邪魔。そのため、不要箇所はちゅうちょなく、読み飛ばす。逆に重要箇所は、わざわざ打ち直し、自分宛にメールを送るなどして頭に叩き込む。
テクノロジーの本を読んだ後は、「数珠繋ぎ」で興味が湧いた、宇宙の本を新テーマに据えるなど興味の幅を横展開させていく様子は佐渡島氏と同様だ。
もちろん、2人の知識の泉は、本に留まらない。
ツイッターやフェイスブックなどのSNS、メールマガジンやブログ……。佐渡島氏は、ソーシャルで得た情報を、どんどん「リアル」につなげる。興味を持った人にどんどん面談を申し込み、会いにいくのだ。
本、ネット、対面などさまざまなメディアから得た情報は、2人の脳内でどう整理されているのか──。
2人の本の読み方、情報収集術を学ぶことで、情報を自分の知恵にするためのヒントが見えてくる。
佐渡島氏は小学生の時からの「本の虫」。中学時代は、治安が悪く外出もままならない南アフリカで育ったために読書家に磨きがかかったと言う。
そんな佐渡島氏の読書法は「樹木図的」。好きな作家という“幹”が見つかると、その作家が影響を受けた作家、そしてその作家が私淑する作家といった具合に興味の範囲が枝分かれしていく──。
つまり、佐渡島氏は意識せずに作家を自分の新たな知へと誘う「キュレーター」として活用してきたと言う。
そして、話は当代随一の“キュレーション上手”にまで話が展開。その人とは、堀江貴文氏。刑務所にいながらにして、佐渡島氏以上に情報通だったという堀江氏流の、情報キュレーション術とは?
佐藤氏は佐渡島氏とは対照的に、子どものころはまったく本を読まなかったと言う。本を読み出したのは23〜24歳になってから、会社経営を始めたため、経理の方法などを知るために「必要に迫られて」読み始めたそうだ。
だからこそ、佐藤氏の読書術は徹底して効率的。必要のない箇所はアッサリ読み飛ばす。ざっと見て興味を持てない本は、二度とページを開かない……。
一方で、知りたいテーマの概要をつかむために必要なことは、自分の知識にするために、徹底して読み込む。
さらに、佐藤氏は本を読む際に、「未来を先読みするための3つのキーワード」を意識すると、仕事や人生の充実に直結しやすいとアドバイスする。果たして、そのキーワードとは何なのか?
2人の読書術の共通項は、興味を持った作家の愛読書を読む、面白いと思ったテーマの類似テーマをたどるなど、一冊の本や一人の作家を媒介に、新たな興味範囲を広げていくことだ。
では、具体的に、2人はどのような「数珠繋ぎ読書」を体験しているのか?
佐藤氏の場合、最近は「事業で宇宙領域を扱いたいから」という理由から、物理学の本に傾倒した。ちなみに、宇宙に興味を持ったのはテクノロジーの本を乱読した結果だという。
テクノロジー→宇宙→物理学という流れは理解できるが、いずれも難解なテーマゆえ、常人なら、ただ字面を追うだけで終始しがちだ。
では、佐藤氏はどうやって、本から得た情報を「自分の知識」に転換しているのか? キーワードは、「頻出ワード」「ホワイトボード」、そして「答え合わせ」だ。
「あなたが、どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかをあててみよう」と言ったのは、ブリア・サヴァランだが、佐渡島氏は「読んだ本で人は作られる」と語る。
たとえば2人とも面識があるLINE元CEOの森川亮氏は、「いかに人に気持ちよく働いてもらうかを大切にする人」だから、『7つの習慣』など自己啓発系の本をよく読む。
ミクシィ元CEOの朝倉祐介氏は、本人が論理的なだけに「バリバリのビジネス書」を読んでいる。
では、佐藤氏はどうかというと、先に述べた宇宙や物理学の本などの加え、「第一線を退いた経営者の本」をよく読むという。
そして、その行間から諸行無常や人間の悲しさを感じ取っているそうだ。
こうした読書体験は、佐藤氏を形成するどんな要素をつくっているのだろうか。
対談の最後は、会場に来た参加者からの質疑応答で締めくくる(編集部注:本対談記事は、文藝春秋社で行われた「本を読まない人間はビジネスで勝ち残れない」セミナーを元に構成)。
「正しい情報かどうかを、見分けるための判断基準はありますか?」
この質問に対する佐藤氏の回答は、白眉だ。
「発言者のこれまでの人生を見る」と言うのだ。果たして、その意味とは?
そのほか、「子どもを本好きにするには?」「Amazonのレビューを参考にするか?」といった質問に、2人が本音で答える。
(予告編構成:佐藤留美、本編構成:合楽仁美、デザイン:名和田まるめ、写真:遠藤素子)