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秘密のベールの向こう側

スペースXとブルーオリジンが「宇宙征服」をめぐって激しい争いを繰り広げていることは誰もが知っていることだろう。

しかし、あまり知られていない事実がある。それは、ブルーオリジンのほうがスペースXと比べてはるかにガードが堅いことだ(この2社はイーロン・マスクとジェフ・ベゾスによりそれぞれ所有・運営されている非公開企業だ)。

スペースXの場合、人工衛星を打ち上げ、その後、打ち上げに使った同社のロケット「ファルコン9」を地上に着陸させることに挑むなど、同社の試みに関する発表がない月はほとんどない。

打ち上げが遅れたり、ロケットが衝撃で「破裂」したりしようものなら、その失敗でマスクとスペースXはヤジの集中砲火を浴びる。

対照的にブルーオリジンには、同社の宇宙船打ち上げを事後まで秘密にする傾向がある。

成功は鳴り物入りで発表される。だが、失敗はあまり発表されない。運が良ければ、失敗の原因を総括したブログ投稿が見つかるかもしれない……1週間後に。

だからこそ、ベゾスとブルーオリジンが先日、極秘にされてきた本部施設をメディアに向けて開放し、記者たちを招いてツアーを行ったというニュースを知ったとき、われわれはおおいに驚いた。

残念ながら、われわれ「モトリー・フール」社宛の招待状は郵送中に紛失してしまったようだが、その後、参加者による啓発的なレポートがいくつか公開された。

彼らが明らかにしたことから、ブルーオリジンによる宇宙探査への取り組みが目指すもの、そして、それが投資家に何を意味するのかがはるかに明確になった。以下にさっそく紹介しよう。

観光事業を大きく上回る野望

ベゾスとブルーオリジンは、好奇心旺盛な観光客たち(1度に6人)を大気圏と宇宙空間の境界まで打ち上げ、そこから地上に戻ってくるまで地球を見下ろす体験を彼らに提供するという構想を持っている。

しかし、3月8日(米国時間)に明かされた最大の事実は、この構想をはるかに上回る壮大な野望をジェフ・ベゾスが抱いているということだろう。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事によれば、ベゾスは「何百万という人々」が宇宙を短時間訪れるだけでなく、実際に「宇宙で暮らし、働く」時代の到来を待ち望んでいるという。

こうした未来の実現に向けて、ベゾスとブルーオリジンは現在、独立しながらも相互につながる3つのベンチャー事業に着手している。

その筆頭が先述した宇宙旅行事業だ。この事業は、ブルーオリジンがロケットを次々に打ち上げて着陸させることに関連する諸問題を解決していくうえで役立つだろう。

ベゾスが説明するように、「年に10~12回行う程度では、物事は上達しない」。ブルーオリジンがこの事業に熟達するためには、毎年、何十機ものロケットを打ち上げる必要があるのだ。

ブルーオリジンは来年にも、同社宇宙船「ニューシェパード」で従業員の宇宙への派遣を開始する計画だ。2018年までには、この宇宙旅行事業を一般に開放するかもしれない。

さらにブルーオリジンは2021年までに、より大型のロケットを開発し、それを使って商業衛星を軌道に乗せる計画を立てている。

とりあえず目下のところ同社は、目標とするこうした軌道ロケットの一部、つまりエンジン「BE-4」の開発に取り組んでいる。BE-4は、ボーイングとロッキード・マーチンの合併事業、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のロケット「ヴァルカン」に使われる予定だ。

眼中にないライバル

ヴァルカン向けに競合エンジンを開発している企業にはエアロジェット・ロケットダインもあるが、ベソスは同社の「AR1」をとりたてて気にしていない。ロッキード・マーチンのほうも、AR1よりBE-4のほうが望ましいと表明している。

『フロリダ・トゥデイ』紙の取材に対して、ベゾスは「ヴァルカンの設計は、ブルーオリジンのBE-4エンジンをベースにして行われている」と語っている。

「バックアップ用のエンジン」としてAR1の名前が挙がるのは理にかなっているとしながらも、ベゾスは、BE-4がやるべきことをやる限り、今回のチャンスを逃す可能性はほぼないだろうと述べている。

飼い主の手は噛まない

ブルーオリジンがBE-4をULAに対して販売できれば、今後の成長の資金となる現金収入がもたらされる。そして、ブルーオリジンの財務的未来の大部分がこの契約にかかっている以上、ベゾスはULAを怒らせないように細心の注意を払っている。

ULAは「国家安全保障」向けの衛星打ち上げ事業を行っているが、ブルーオリジンがこうした衛星に関する米空軍との契約に入札する可能性はあるのかと質問されたベゾスは、それをやんわりと否定した。

「われわれが国家安全保障のためのペイロード事業に参入するべきだという確信はない。フライト数が比較的少なく、業績を上げるのは非常に難しい。それに、ULAがすでに優れたサービスを提供している。われわれが参加したところで、何らかの価値を追加できるとは思えない」

つまりベゾスは、ロケットの打ち上げが得意なだけではない。相手の自尊心をくすぐるお手並みもなかなかのものなのだ。

実現できる財力はあるか

ベゾスは、ブルーオリジンの未来に対する野心的な戦略をすでに練り上げている。しかし、それを実現するだけの財力が彼にあるのだろうか。

ベゾス本人によると、彼はブルーオリジンを現在の位置、つまり商業宇宙飛行の最前線に押し上げるために、5億ドル以上を投資してきたという。先に進むにはさらに費用がかかるにちがいないが、ULAとの契約が成立すれば、それが助け船になってくれるだろう。

また、おもにアマゾン・ドット・コムの成功から得られるベゾスの私財は、ULAから金が入ってくるのを待つ間のギャップを埋めるのに十分なはずだ。

昨年6月にモトリー・フール社が調べた際には、ジェフ・ベゾスの純資産は393億ドルとされていた。しかしそれ以来、アマゾン・ドット・コムの株価は28パーセント(3月19日[米国時間]現在)上昇し、およそ110億ドルがベゾスの財布に追加された。

これにより、彼の純資産はおそらく500億ドルに達しているはずだ。

つまり、彼にはその財力が十分にあるのだ。

※ ジェフ・ベゾスは、自身の個人投資会社であるベゾス・エクスペディションズを通して、ビジネス・インサイダーに出資している。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Rich Smith, The Motley Fool、翻訳:阪本博希/ガリレオ、写真:sbhaumik/iStock)

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