【新社長インタビュー】伊藤忠メタルズ・中谷次克氏「トレード規模拡大へ投資模索」
2016/04/04, 日刊鉄鋼新聞
――4月1日付で社長に就任した。まずは抱負を。
「お取引先の皆様をはじめ、歴代社長や全従業員が長年にわたり築いてきた当社をより良く、さらに強固な会社として次の代に引き継いでいきたい」
――これまで経営企画部長として4年間、伊藤忠メタルズを見てきた。現状をどう分析している。
「中国の景気減速を背景に事業環境としてはアグレッシブになりにくいが、我々が目指す事業分野ではチャンスは多いと感じる。当社の2015年度業績は歴代でも最高の収益になるが、その大きな要因は中国でのリサイクル事業の売却益。当社の主力事業であるトレードでは想定した数量、収益の7割程度に落ち込んでいる。景気の波に左右されやすいトレード分野だけで約200人の従業員を支えるのは難しい。このため、当社では買収を含めた投資によってトレードの規模を拡大する手法を模索している。投資先としては主に国内の流通分野を想定しており、今年1月に住商鉄鋼販売から鉄スクラップの製鋼原料事業を承継した形を好例と捉えている。事業を成長させていくには投資先にとってもメリットがあるよう話を進めていく考えだ」
「組織としては4月1日付で金属リサイクル事業部を、主に鉄スクラップ事業を手がける『金属リサイクル事業部』と、産業廃棄物の適正処理などのサポートを行う『リサイクルビジネス推進事業部』に分割した。従来からの製鋼原料と新たなリサイクルビジネスを分けた体制とし、産廃分野では伊藤忠グループの核の一つであるファミリー・マートとの取引拡大にも力を入れていく」
――経営の数値目標などは。
「現在の当社はトレード中心の会社であり、最終利益で10~14億円が実力。この利益水準を安定的に確保できる取引先との関係は当社にとって財産でもある。これに投資案件などを加えていくことで、1~2年のうちに20億円の利益水準に引き上げていきたい」
「商社の鉄スクラップ事業として当社は国内2番手。最大手との差は大きいが、トップに近づくためにも投資案件を積極的に掘り起こしたい」
――昨年、中国のリサイクル事業『大連新緑再生資源加工』を中国企業の『斉合天地集団』に売却した一方、斉合天地の株式を一部引き受けてリサイクル事業の共同会社を香港に設立した。中国のリサイクル事業に対する考え方は。
「中国で日本人が単独で事業を行うのは非常に困難だ。現地パートナーである『斉合天地』は非鉄スクラップの分別・回収や地金製造などを手がけている。今後は日本から雑品ではない非鉄スクラップを斉合天地に輸出するよう検討している。中国のリサイクル事業から完全に手を引く考えではなく、市場の大きい中国とは投資、トレードの両面で機能を発揮していきたい」
――非鉄金属の分野で注力することは。
「非鉄金属製品を扱う製品事業部は景気の影響を受けやすいが、当社にとって祖業とも言える重要分野。『非鉄製品』、『電材・機能材料』、『冷熱・空調』の3グループそれぞれ課題は違うが、当社にとって一番大きな事業部になれるようしっかり強化していきたい」(小堀 智矢)
プロフィール 伊藤忠商事では主にアルミ畑を歩いた。最も印象深い仕事は、入社当初に担当していたアルミ軽圧品の輸出事業。「当社が最大手だったこともあって数量だけでなく、情報も集まりやすく非常に面白かった」。当時の経験からナンバー1の座の重要性を強く認識する。慶応義塾大学では野球部に所属。ポジションはキャッチャーだった。東京六大学野球では準優勝までだったが、4年生の春と秋に宿敵、早稲田大学から勝ち点をあげられたことが良い思い出という。
略歴 中谷 次克氏(なかたに・つぐよし)1984年慶応義塾大学商学部卒、伊藤忠商事入社、軽金属や貴金属部に勤務後、99年伊藤忠インターナショナル金属部門(ニューヨーク駐在)、2002年伊藤忠商事(東京)非鉄軽金属部非鉄事業統括チーム、03年8月鉄鉱石部、10月金属資源部事業統括課長、08年IMEA出向(シドニー駐在)、12年伊藤忠メタルズに出向、同社執行役員、13年常務執行役員、16年4月社長就任。1960(昭35)年7月17日生まれ。富山県高岡市出身。
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