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イノベーターズ・トーク

【大室正志×麻野耕司】日本企業のガンは人事部だ

2016/3/7
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、毎週2人のイノベーターたちが、時代を切り取るテーマについて議論を交わす。
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第16回には、産業医の大室正志氏とリンクアンドモチベーション執行役員・麻野耕司氏が登場する。

近年、企業においては、いかに組織を改革し、人材を活用するかが喫緊の課題になっている。社員のパフォーマンスを向上させるだけでなく、メンタルヘルス対策も求められており、論点は尽きない。

今回議論するテーマは、その中心的な役割を担う「人事部」だ。企業経営において非常に重要な組織でありながら、いまだ変革が遅れているのがこの領域。人材の課題は業績に直結するにもかかわらず、遅々として進んでいない現状がある。

大室氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの統括産業医を経て、現在は約30社の企業で産業医として活躍。数多くの社員のケアを行い、働き方や組織の課題についても熟知したエキスパートだ。

そして、麻野氏は気鋭の組織変革コンサルタントとして知られ、「ヒト」を重視した施策を実行することによって企業がよみがえると主張。職場の変革に力を注いできた。同氏のメソッドは、経営者などから高い関心が寄せられている。

果たして、日本企業の人事部を変えるためには何が必要なのだろうか。徹底議論する。

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冒頭から「企業の人事部をクライアントとしている僕らからすると、非常に語弊があるタイトルですよね」と笑い合う、人事部を知り尽くした2人。

初めに麻野氏は、日本企業が置かれている環境の変化を捉えることが大事だと指摘する。たとえば、商品市場では「ソフト化」と「短サイクル化」が進行し、1つのヒット商品に頼ることはできず、「継続的にヒットを生み出すためには、商品を生み出し、磨き続けられる組織や人材をつくる必要がある」と語る。

さらに、労働市場が流動化し、「やりがい」や「成長」が求められるようになっているが、人事がその変化についていけていないという。

これに対して大室氏は、経営者も人事もその問題を頭ではわかっていながらも変革に手を出せていないとして、いかに風土を形成するかが課題だと語る。

麻野氏は、これを解決するためには「戦略人事」が必要だが、人事部では成果指標が存在しないケースが多いため、「古いままのシステムが何となく運用されていても、それが課題視されずにいる」と明かす。

この課題をクリアするためには何が必要なのか。日本の大企業の多くが抱えている問題に、2人が切り込んでいく。

第1回「人事部が、労働市場の変化に対応できていない」に続く。

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2人の共通認識は、「現場と人事が分断している」ため、弊害が生まれているということだ。

麻野氏は、「ここが分断されていると、人事の施策で事業の成果がどう上がったか、注目されない」と指摘。とりわけ、昔からの大手企業がその傾向にあるという。その一方で、ベンチャー企業の場合は、会社によって人事のレベル差が大きいことが課題だと語る。

また、大室氏は産業医の視点から「うつ病で退職された人、1人の上司に対し部下が今まで何人休職したか、休職者数、これらをちゃんとデータとして数字化している企業は、すごく少ない」と問題提起。

社員の働きやすさにつながることはもちろん、かかるコストもバカにならないとして、早急に改善すべきだと主張する。

現場と人事、双方の視点から人事システムについて深掘りしていく。

第2回「現場と人事の分断で起きる弊害」に続く。

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日本の「採用」をめぐっては、企業側にとっても、求職者側にとっても非効率で時代にそぐわない慣習が残っている。

麻野氏は、人事部を受動的にしてしまったのは、求職サイトやシステムを提供している企業である「ベンダーだ」と喝破。「日本ほど、人事に関してベンダーの力が強く働いている国はほかにない」とその本質をえぐる。

大室氏も、「外資系企業で外国人によく不思議がられるのは、日本企業の新卒採用時のお祭り騒ぎです。この時期に湯水のようにおカネを使って、一気に大量採用しようとする。これが彼らには理解できない」と指摘する。

近年では、この問題点の改善に乗り出す企業も現れてきていると語る両氏。“攻めの人事”の在り方とは、どのようなものなのだろうか。

第3回「本当の意味で望ましい人材採用の在り方」に続く。

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企業にとって、採用にも育成にもコストがかかる。そこで重要になるのが「マッチング」だ。

大室氏は、「面接には限界があります。本来、エントリー数は少なくてもいいから、来た人材をしっかり吟味するほうに注力すべき」と、企業側が方針転換すべきと主張する。

また麻野氏は、就活生などが「自分を成長させたい」と語ることに対して注意を喚起。会社の実態を見極めなければ、ミスマッチの要因になると指摘する。

そして、「結局のところ、採用する側の視点に立てば、いい人材を採るためのポイントは1つに集約できると思うんです。それは“選ぶ”という意識を、“口説く”に変えること」と持論を展開。

それを踏まえ、「過去に最も素晴らしい人事システムを構築した企業」について、話は展開する。果たして、それはどこなのだろうか。

第4回「最も優れた人事システムを構築した企業とは」に続く。

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企業にとっては、社員のパフォーマンスを最大化させるだけでなく、メンタル対策も重要な課題だ。

大室氏は、ビジネス環境の流動化と、縦社会が弱まった時代の変化を踏まえて、若いうちに“理不尽慣れ”をさせることが大切だと説く。「“理不尽な存在”に出会うことを繰り返して、なんとか折り合いをつけていく作業を経ないまま社会に出ると、急に『高熱』を出してしまう」からだ。

すると、麻野氏は「その点を踏まえると、たとえば人事が転職や異動直後の社員をモニタリングするなどで、メンタル不調の手前で食い止める手立てはありそう」と、今後の具体的施策を示唆する。

そして、これまでの総括として、人事の役割がどう変化していくのかについて議論が展開。人事と現場の役割をどう分担するのか、戦略人事を実現するための方法とは……今後の可能性を探っていく。

第5回「戦略人事を実現させるために必要なこと」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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第1回:3月7日(月)公開
人事部が、労働市場の変化に対応できていない

第2回:3月8日(火)公開
現場と人事の分断で起きる弊害

第3回:3月9日(水)公開
本当の意味で望ましい人材採用の在り方

第4回:3月10日(木)公開
最も優れた人事システムを構築した企業

第5回:3月11日(金)公開
戦略人事を実現させるために必要なこと

(取材:常盤亜由子、構成:菅原聖司、デザイン:名和田まるめ、撮影:竹井俊晴)