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ビジネスエリートたちのお金の使い方には法則がある。それは、お金を使って、使った額以上にお金を増やすということ。そのためのルールは5つあり、「時間を買う」「ノウハウを買う」「人脈を買う」「希少性を買う」「お金を生む資産を買う」だ。黒木陽斗氏の最新著書『シリコンバレーのビジネスエリートたちが実践する使っても減らない5つのお金のルール』から一部を抜粋・要約し、数回にわたってお届けする。

役職クラスが変わる日本企業

私は外資系企業キャリアを積んだ後に、ヘッドハンティングで日本の大手企業に幹部社員として転職をしました。日系企業といっても一部上場のグローバル企業なのですが、外資系企業と異なるビジネス習慣に、しばしば驚かされたものです。

例えば、まず驚いたのは、役職の高さに応じてフライトのクラスが決まるということ。つまり、一定以上偉くなればビジネスクラス。それ以下はエコノミークラス、ということです。

私が在籍した外資系企業は違いました。外資系企業は移動距離や移動時間に応じてクラスが変わり、役職は関係ありません。日系企業はフライトのクラスを、高い役職にまで上り詰めた人間にとっての「特権」であり「特典」、長年仕事を頑張って偉くなった「ご褒美」と考えるのだ、と私はすぐに理解しました。

対して、外資系企業の考え方は、ごくごく合理的なものです。長時間にわたるフライトで疲弊すると、目的地に到着してからの仕事に差し障る。「いい席を用意するから、これで疲れを予防して、現地に着いたら即、働きなさい」こういう考え方なのです。

フライトひとつで、日系企業と外資系企業、ずいぶん違いがあるものです。もっとも、これはあくまでサラリーマンの視点です。これが起業家になると、また違う考え方をします。起業家にとって、自分の財布と会社の財布はほぼイコールです(厳密には違いますが、心理的には同じです)。

そのため、会社のお金であっても余計な出費は極力避けようとします。フライトなどでちょっと贅沢するくらいなら、本業のビジネスに回したいと彼らは考えるでしょう。

単純な「ケチ」とは違います。というのは、少しでもお金に余裕があれば、それをビジネスに回し、最短最速で成功を目指していくのが彼らの行動指針だからです。何をするにも、最高度の費用対効果を求める。そこに、彼らビジネスエリートたちの本領があります。

ビジネスクラスに乗らないビジネスエリートたち

シリコンバレーのベンチャー企業のコミュニティには、何人もの伝説的な経営者がいます。当然ながら、彼らはそろって億万長者。輝かしい成功者たちです。

そのなかの一人と仕事をする機会があったのですが、彼の会社では、一定の基準を満たせば、ビジネスクラスを使えることになっていました。しかし現実には、誰もその権利を行使していませんでした。なぜなら、ボスである彼自身がエコノミークラスしか乗ろうとしないからです。マイクロソフトのビル・ゲイツも同じ主義だと聞いています。

「お金持ちなんだから、ビジネスクラスくらい、いいじゃないか」「社長なら、ファーストクラスに乗っても懐は痛まないだろう」普通の感覚なら、そう言いたくなるところです。

しかし、彼らはこんなふうに考えるのです。日米間のフライトであっても、長くて10時間程度の旅です。ビジネスクラスやファーストクラスの料金を追加で払ったからといって、その10時間が短縮されるわけではありません。つまり費用対効果が非常に薄いのです。

その出費がどれだけビジネスに貢献するのか。それが彼らが重視する「生き金」の使い方のポイントなのです。

「優越感」は生き金とは無縁

ビジネスにおいては、とことん費用対効果を追求するビジネスエリートたち。彼らは会社の経費を使ってビジネスクラスに乗ることは、まずありません。ビジネスクラスに乗ったからといって、仕事の成功につながるわけではないと、単純にそれだけを考えています。

それに、すでに大きな成功を収めているビジネスエリートは、小さな贅沢でいちいち喜ぶこともありません。フライトのクラスの違いなど、せいぜい提供されるお酒が「手軽なスパークリングワインか、シャンパンか」くらいのものでしかない。

それを喜んでいるようでは、ビジネスエリートとはいえません。喜ぶ人間がいるとしたら、日系企業で時折見かける、会社員の「特権」を行使したい人。すきあらば会社の経費で豪遊したいと目論んでいる人。普段、金銭的に報われていないのか、その特権をご褒美代わりに頑張っているのでしょう。

もちろん、ビジネスクラスやファーストクラスにも、そこでしか得られない価値があります。例えば、エコノミークラスに対する優越感です。これはマーケティングの成果というべきでしょう。

実は「シートが広い」「料理が豪華で美味しい」といった部分は、さほど価格に反映されていません。肝心なのは、エコノミークラスという「下」を設定することで、ビジネスクラスである自分が「上」であると感じられる優越感。そこに価値があるのです。

それがお好きであれば、ビジネスクラスやファーストクラスに乗る意味もあるということです。もっとも、ビジネスとは何ら関係ない部分。ビジネスエリートが使う「生き金」とは、まったく関係のないものです。

ビジネスクラスに1回乗るなら、エコノミーに3回乗れ

前述の億万長者は、こうも言っていました。「どんなフライトだろうと、10時間も我慢すれば目的地にたどり着く。ビジネスクラスに1回乗るくらいならエコノミーで3回来日したほうがビジネスチャンスが広がるよ」

言われてみればその通りです。3回来日して3社を訪問するのと、1回の来日で1社訪問するのとでは、ビジネスチャンスの数に3倍の開きが生じます。同じお金を使うなら、費用対効果は高いほうがいいとビジネスエリートたちはシンプルに考えます。

ビジネスクラスに高いお金を払ったからといって、早く着くわけではありません。「快適さ」で比べたらビジネスクラスのほうが上かもしれませんが、それが「ビジネスにつながるか」という点では、エコノミークラスと何ら違いはありません。

むしろ、高いお金がかかる分だけ、費用対効果は薄い。加えていうなら、「エコノミークラスかビジネスクラスか」なんて、取引する相手はまったく興味のないこと。話題にのぼる機会すら、まずないでしょう。

それならば、エコノミークラスにして来日回数を増やし、ビジネスチャンスを増やしたほうがいいとビジネスエリートたちは考えるのです。

機会を増やし、チャンスを広げるためにお金を使う

要するに、機会を増やせばチャンスも増える。ならば、機会を増やすためにお金を使うのが「生き金」ということになります。

例えば、「なるべく多くの人、多くの会社に接触しようとする」のはビジネスエリート特有の行動パターンだといえます。とにかく回数を多くこなす。ビジネスにつながりそうだと思う相手を大量にピックアップして、優先順位をつけた上で、端からアプローチしていくという方法を彼らは好みます。

日本ではコネや紹介に縛られて行動が制限されてしまう傾向があります。アメリカでもそれがないとはいいませんが、コネや紹介があってもお互いにメリットがないとわかれば、深追いはしません。

コネだけでなく、幅広くアプローチしていれば、お互いWIN-WINの関係を作りやすい相手が、必ず見つかるからです。

非常にシンプルな確率論です。チャンスを増やしたいなら、試行回数を増やすことが大切。同じ金額を使うなら、なるべく多くの人と出会い、多く話すために使うべきなのです。

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(写真:Flightlevel80/iStock)