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プライベートジェットのほとんどは活用されておらず

プライベートジェットの旅でも、ウーバーのようなサービスを利用できるようになりつつある。プライベートジェットをスマートフォンから予約できるサービスを提供するジェットスマーター(JetSmarter)は、プライベートジェット業界で最大級の顧客であるサウジアラビア王族の一員から新たに2610万ドルの出資金を獲得した。

ロシア出身で現在はフロリダに暮らすジェットスマーターの創業者、セルゲイ・ペトロソフは、プライベートジェットのほとんどはあまり活用されていない、とインタビューのなかで述べている。

利用されていないプライベートジェットは、空港で待機していることもあれば、特定の場所で顧客を乗せるために乗客なしで飛んでいることもある。そうした空いている座席やフライトを、ジェット機の通常のチャーター料金よりも安く、少なくともファーストクラスの料金と同程度の価格で旅行者に提供しようというわけだ。

「定期航空便のビジネスクラスを利用している人たちに、そうした余った座席を提供すれば、画期的なすばらしいサービスになるはずだと考えた」とペトロソフは言う。

これまでにない予約システムで、安価でプライベートジェットの旅を実現

27歳のペトロソフは、ジェットスマーターのサービスを「ウーバー・ブラック」になぞらえている。ウーバー・ブラックは、ウーバー・テクノロジーズが提供する配車サービスの高級自家用車版で、「メルセデス・ベンツSクラス」や「キャデラックXTS」などの高級セダン車で、任意の場所から目的地まで送ってもらえるサービスだ。

有名ラッパーのジェイ・Zことショーン・カーターも出資者に名を連ねるジェットスマーターは、今回の新たな出資により、中東、アジア、欧州で業務を拡大する計画だ。今回出資したサウジ王族は、2000万ドルを獲得した前回7月の資金調達にも参加している。

ペトロソフがこのアイデアをひらめいたのは、2009年に自身がプライベートジェットをチャーターしようとしていたときのことだ。1件の予約をするために、何枚もの書類に記入し、ファクスで送らなければならなかった。

もっと簡単に航空機を予約できる方法を提供する会社としてスタートしたジェットスマーターは、いまやジェット機所有者からの余った座席の購入、乗客のいないフライトの座席販売、ニューヨーク・マイアミ間など人気ルートのシャトル便の企画にまで手を広げている。

現在のところ、3月1日に「リアジェット45」でニューヨークからマイアミへ向かうフライトの料金は1990ドルで、最低購入座席数は4席だ。ジェットスマーターでは、乗客なしになりそうなフライトについては、出発間際になったら無料で会員に座席を提供している。会員の年会費は9000ドルだ。

ジェットスマーターは2015年12月に、サウジアラビアのリヤドとアラブ首長国連邦のドバイを結ぶフライトを編成した。2016年4月からは、ロンドン・パリ間、パリ・ジェノバ間などの欧州ルートのシャトル便を提供する予定だ。ペトロソフによれば、4月には香港、2017年はじめにはモスクワでもサービスを開始する計画だという。

ジェットスマーターの予約システムは、これまでにない方法により、ネットジェッツのような分割所有サービスよりも柔軟かつ安価なやり方でプライベートジェットでの旅を実現するものだ。

ネットジェッツは、ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ傘下の高級航空サービス会社だ。ネットジェッツや、ライバルのフレックスジェットは、裕福な個人や企業顧客に航空機の所有権を分割販売し、購入者に時間単位の年間使用権を提供している。

1500万人の手に届く料金を実現する

ジェットスマーターのシステムには、3100機のジェット機が連携している。アプリのダウンロード数はおよそ35万にのぼり、2015年の乗客数は3万5000人だった。会員数は前四半期と比べて135%も増加している。

顧客が増えれば、空(から)の状態で飛ぶ航空機や座席の数が減るのでコストは下がり続けるだろう、とペトロソフは見込んでいる。

「当社はプライベートジェットを、ファーストクラスやビジネスクラスを利用する最大250万人にとって手が届くものにした」とペトロソフは言う。「次のステージでは、1500万人にとって手が届く料金を実現する方法を模索していく」

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Ilya Khrennikov、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Predrag Vuckovic/iStock)

©2016 Bloomberg News

This article was produced in conjuction with IBM.