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RECRUIT×NewsPicks 求人特集

スーパー希少人材になりたいなら、地方に行け

2016/2/25
東日本大震災後、東北を再創造すべくGRAは設立された。「農業×IT」で一粒1000円の「MIGAKI-ICHIGO」で農業に変革を起こし、地方を生まれ変わらせている。その代表でありNewsPicksプロピッカーである岩佐大輝氏に、地方に求められる人材像や、地方だから得られるものを聞いた。

地方に迎合する必要はない

——来月で、東日本大震災から5年がたちます。震災の翌日には被災地に行き、その数カ月後には現地で事業を始めた岩佐さんから見て、東北の復旧・復興状況はいかがでしょうか。

ハード面での復旧は進んでいます。たとえば、壊れた線路を敷き直したり、流された家を違う場所に再建したり。

特に、沿岸被災地は景色がガラッと変わりましたね。そこに出てきたのが、「なんで景色を変えるんだ、高い防波堤なんていらない」という意見や、反対に「ゼロベースで思い切った改革を進めるべきだ」という意見。

もちろん、どちらも正しくて、答えはありません。東北は、まだまだ混沌(こんとん)としています。

震災直後は、東北にとって1000年に1度と言えるほど多くの人が支援に来てくれました。でも、今その人たちの多くは去りました。

都会から来た人が、その土地の人になろうと意見を聞きすぎた結果、しがらみに押しつぶされたのです。彼ら彼女らは、地方に迎合せずに、新しい勢力として突き進めば良かった。

今、もう一度震災直後に戻れるなら、お互いにリスペクトした上で、迎合しなくていいんだよとみんなに伝えたいです。これは僕の大反省。だって、僕は最初から地方の意見を気にしないようにしていたから。

四方八方からいろいろなことを言われましたが、何を言われても、心の中で「うるさい!」と一蹴して好きなことをやっていたので(笑)。

地方で育てた技術を世界へ

——東京で活躍されていた岩佐さんは、震災から程なくしてGRAを立ち上げましたが、現在はどのような状況でしょうか。

ITの力を使って栽培しているブランドイチゴ「MIGAKI-ICHIGO」は、世界進出も果たしました。

地方で育てた技術を海外に持っていこうと、インドに現地法人を作って、イチゴ作りをしています。しかも、そこで教えているのはイチゴ農家歴約40年のベテラン日本人です。

今、GRAには社員が約20人、パートやアルバイト、研究員を含めると約50人の従業員が働いています。

内訳は、20代の若者からベテランの農家までさまざま。地元の人はもちろん、東京からのIターン者も複数いる多様な会社です。

僕が組織を作る上でこだわっているのは、若者も年配の人も、お互い遠慮せずに言いたいことを言うこと。

すると、テクノロジーと匠の技が掛け合わさって、面白いアイデアが出てくる。多様性からイノベーションのきっかけが生まれています。

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地方は未開の地。いくらでも開拓できる

——いま地方で求められるのはどのような人材だと思いますか?

地方の保守勢力に負けないで、好きなことをやれる人。地方を未開の地だと思って開拓できるなら大活躍するのではないでしょうか。だから、起業したい人やスタートアップで働きたい人は向いています。

逆に、「みんなの意見を聞いて調整しよう」と考える人は、きっと一生かかっても地方ではやりたいことができないでしょう。

政治関係や権力構造、その街の暗黙のおきては知らなくていい。住みたい場所に勝手に家を建てるくらいの気持ちで、転職なり起業なり、周りを気にせず突き進めば、ちょっとずつ地方は変わります。

「何か始めた若者がいるぞ」と。興味を持ってくれたらこっちのもの。巻き込んで一緒に始めればいいのです。

そもそも地方は若者が少ないので、行った時点で「スーパー希少人材」。若い人にとっては大チャンスですね。東京にいるときよりも10倍の価値があると思います。

たとえば、宮城県女川町は須田善明町長が圧倒的なリーダーシップでけん引しています。パワーがあり、変わることに抵抗がない。

するとそこに多くの若者が集まってきました。いずれも、「地方を変えたい、行政を作り直したい、新しい産業を起こしたい」といった志を持つ優秀な若者たち。

今彼らは、東北オリジンのギターを作ったり、地元の素材を利用した石鹸を生産販売したりと、さまざまな事業を起こしています。

須田町長はよく「女川で、シムシティというまちづくりのゲームをリアルでやっている感覚だ。人生でこんなことができるなんて、とてもラッキーだ」と言いますよ。

1977年、宮城県山元町生まれ。株式会社GRA代表取締役CEO。2002年にITコンサルティングを主業とする株式会社ズノウを設立。2011年に特定非営利活動法人GRAおよび農業生産法人株式会社GRAを設立。先端施設園芸を軸とした「東北の再創造」を目指す。2012年11月にはインドのマハラシュト州タレガオンに先端イチゴハウスを建設。2014年に「ジャパンベンチャーアワード」で「東日本大震災復興賞」を受賞。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)がある。

1977年、宮城県山元町生まれ。株式会社GRA代表取締役CEO。2002年にITコンサルティングを主業とする株式会社ズノウを設立。2011年に特定非営利活動法人GRAおよび農業生産法人株式会社GRAを設立。先端施設園芸を軸とした「東北の再創造」を目指す。2012年11月にはインドのマハラシュト州タレガオンに先端イチゴハウスを建設。2014年に「ジャパンベンチャーアワード」で「東日本大震災復興賞」を受賞。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)がある。

圧倒的な自己成長機会は地方にあり

——若者や優秀な人材が地方で働くことで得られるものとは何でしょうか?

一つは、自らの力で地方を変えるという経験。もう一つは、圧倒的な自己成長の機会です。都会から地方という対極の場所に行くことが自己成長につながります。

たとえば、営利企業で働く人が非営利企業でボランティアをすると、全く違うタイプの人と出会えますよね。すると新しい気づきや学びがある。都会から地方に行くことで同じことが起こります。

「なるほど、こういう価値観があるのか」「この仕組みには無駄がある」など、ずっと地方にいる人は気付かないことに気付けるので、新しい仕組み作りや取り組みができるのです。

僕の場合は、1年のうち3分の1ずつを海外と東京、宮城県の山元町で過ごしています。いろんな人と出会えるし、刺激も学びも多く、ありがたいこと。

また、山元町は海が近いから、仕事の前にみんなでサーフィンに行ってから出社できるという、すてきなメリットもありますね。

大自然に恵まれた豊かな暮らしは、東京だけで働いていたら、まず無理でしょう。

考えなくていい、行動あるのみ

——最後に、日本の未来を作るビジネスパーソンに対してメッセージをお願いします。

この世の中で唯一有限なのは「時間」です。それをどう使うかを考えて、自分がやりたいことをやってほしい。

人生は思うより短いから、地位や名誉、常識と思われている既存のルールなどに縛られていると、やりたいことを成し遂げられません。

だから、あれこれと考えるのをやめて、心の声に耳を傾け、思い切ってジャンプして欲しい。行動あるのみです。

もし、地方を変えたいと思っているのなら、いますぐ行って、現状を肌で感じてください。頭で考えて解決することなんて、問題が100個あったら1個くらいしかない。

残りの99個は、自分の五感や第六感で判断しているはずです。

吉田松陰が海外留学をしようと、勝手に黒船に乗ろうとしたように、やりたいことがあるのなら、すぐに行動を起こしましょう。変革者は、行動が9割。恐れずにまずは一歩踏み出してみてください。

そして、動き始めるときにリソースを確保するところから考えてはいけません。それを考え始めた時点で、リソースは集まらない。

ヒト・モノ・カネは、リーダー、すなわちあなたの行動に集まってきます。

(聞き手・構成:田村朋美、写真:福田俊介)