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イノベーターズ・トーク

【藤沢烈×小暮真久】ソーシャルベンチャーという働き方

2016/2/22
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、毎週2人のイノベーターたちが、時代を切り取るテーマについて議論を交わす。
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第14回には、一般社団法人RCF代表理事の藤沢烈氏と、TABLE FOR TWO International代表理事の小暮真久氏が登場する。

かつて日本で社会貢献といえば、「メセナと称してカネのある会社が海外の美術品を買いあさるもの」というネガティブな印象を持たれていた時期もあった。

しかし、そんなイメージも今は昔。特に東日本大震災を経て日本における社会貢献の位置付けは大きく変わった。

アフリカに衣料を届ける活動を続けるユニクロ(ファーストリテイリング)や、宅配便輸送に路線バスを活用することで過疎地域のバス路線の維持に一役買っているヤマト運輸など、今では事業会社も続々と社会貢献活動に乗り出している。

企業の動きとともに注目されるのが「ソーシャルベンチャー」と呼ばれる人たちの存在だ。長らく解決されずにきた社会課題に挑む彼らの中には、社会人として豊富な経験と実績を持つ者も多い。

そんなソーシャルベンチャーの代表的な存在が、今回の対談に登場するRCFの藤沢烈氏とTABLE FOR TWO Internationalの小暮真久氏だ。

今、企業が続々と社会貢献に取り組む背景にはどんな動きがあるのか。あえてソーシャルベンチャーという組織のかたちを選んだ理由は何か、その強みとは。今まで解決されずにきた社会課題に敢然と立ち向かう2人のイノベーターが語り尽くす。

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近年では企業の社会貢献活動もずいぶん一般的になったが、その流れができたのは2000年ごろのことだ。2001年のエンロン事件などが一つのきっかけとなり、企業の社会的責任(CSR)という考え方が世界的に広まっていった。

この流れをくんで日本企業も徐々に「CSR」や「社会貢献」に本腰を入れていったが、2000年代半ば頃までは、欧米諸国に比べるとまだその取り組みは本格的とはいえなかった。

この時期にTABLE FOR TWOを立ち上げた小暮氏は「NPOって今よりもずっと低く見られる感じがあった」と当時を振り返る。

だが、2011年に起きた東日本大震災を機に、社会貢献に対する企業の取り組みは一気に本格化する。「震災を機に、企業の社会貢献はCSR部門のものから経営者のマターに変わった」と藤沢氏は指摘する。

3・11以降の企業の社会貢献の特徴は、なんといっても「若い世代の台頭」だ。若者らしい発信力と行動力を武器に社会課題の解決に乗り出す彼らの姿は、2人の目にどう映っているのだろうか。

第1回「社会貢献は今や企業の『経営課題』」に続く。

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「寄付」「社会貢献」というと、どこか自己犠牲的な印象を持つ人もいるのではないだろうか。

しかし近年では、こうしたイメージを覆すような動きが目を引く。東北の復興支援の現場で、社会貢献と事業採算性を見事に両立させた取り組みとして、藤沢氏はある企業の例を紹介する。

一方、これまでに多くの企業と協働してきた小暮氏は、NPOと組む際の大企業の姿勢に「もっとお互いの強みを生かしたタッグを組めるといい」と期待を寄せる。

なぜそう思うのだろうか? 小暮氏はその理由を、NPOを立ち上げて間もない頃に味わったほろ苦い経験とともに語るのだった──。

第2回「NPOと企業はどうすればうまく付き合えるか」に続く。

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昨年12月、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが5兆円の寄付を行うことを発表し、日本でも大きな話題となった。

翻って、日本ではどうか。小暮氏は「ザッカーバーグのような多額の寄付を日本のIT起業の社長がやったとしたら、絶対に叩かれる」と、文化的背景の違いを指摘。藤沢氏も、東日本大震災の際の例を引き合いに出しながら、日本の「寄付市場」が成長するためにはあるものの存在がカギになると話す。

今や企業が社会貢献に積極的に乗り出すようになった。と同時に、NPOの間でも事業の採算性を重視する動きが広がってきた。そう、社会貢献をする主体に垣根はなくなりつつあるのだ。

こんな時代に、NPOの存在意義はどこにあるのだろう。その問いかけに、小暮氏は「僕はやはりNPOでしか解決できない社会課題はあると思う」と言葉に力を込める。そこで彼が語ったNPOならではの強みとは何か。

第3回「NPOだからこそ解ける課題がある」に続く。

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2014年にイタリアでも活動を開始し、今は生活拠点も彼の地に移した小暮氏。イタリアはスローフード発祥の地ということもあり、「『食×ソーシャル』という価値観がすでに共有されているという点で非常にやりやすい」という。

一方、東北支援を続ける藤沢氏にとっても、食をはじめ土地に根ざした観光資源をブランド化することに長けたイタリアには、学ぶべき点があると感じているようだ。

「何を参考にしたらいいのでしょう」と問いかける藤沢氏に対し、小暮氏が返した答えはあまりにも意外なものだった。

その答えをきっかけに、2人の会話は、NPOの代表として世間から寄せられる期待とプレッシャーにどう対処しているか、という苦労話へと発展する。

第4回「正義感よりもNPOに必要なものとは」に続く。

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以前と比べればNPOと企業の隔たりは確実に狭まりつつある。とはいえ、現場で活動を続ける藤沢氏の目には、両者の交流はまだ十分とはいえず、もったいない状況が続いていると映るようだ。

小暮氏もこれに同意。「企業からNPOへの出向」が増えてほしいと述べ、「(企業は)他企業や省庁に対しては人を出せるのに、NPOへの出向ってなかなか決断してくれない」と悔しさをにじませる。

では、もし仮に企業が優秀な人材をNPOに出向させたとして、1年間でその人材はどのようなことを学べるのだろうか。

小暮氏は、「大きな企業の中ではなかなかできない新規事業の立ち上げも経験できて、リーダーシップを相当鍛えられる」と太鼓判を押す。藤沢氏は「それに加えて僕が感じているのは──」と、“ブルーオーシャン”を探し当てる能力はNPOだからこそ磨けるあるスキルによって増すと語る。

第5回「NPOならリーダー人材をこう育てる」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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第1回:2月22日(月)公開
社会貢献は今や企業の「経営課題」

第2回:2月23日(火)公開
NPOと企業はどうすればうまく付き合えるか

第3回:2月24日(水)公開
NPOだからこそ解ける課題がある

第4回:2月25日(木)公開
正義感よりもNPOに必要なものとは

第5回:2月26日(金)公開
NPOならリーダー人材をこう育てる

(構成:常盤亜由子、デザイン:名和田まるめ、撮影:竹井俊晴)