日本の会社員、ここがおかしい

2016/2/15
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、注目すべきイノベーターたちが時代を切り取るテーマについて見解を述べる。
お笑い芸人でIT企業テラスカイの役員でもある厚切りジェイソン氏がかつて、日本企業で慣習となっている「手書きの履歴書」を非効率で時代錯誤だと批判したことに対して、堀江貴文氏が自身のツイッターで「ずっと言ってるよ俺」とコメント。
この発言を見た厚切りジェイソン氏が「いつか対談させてください!」とリプライしたことが、今回の対談のきっかけとなった。
堀江氏は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用など日本企業の制度や日本のビジネスパーソンのマインドを痛烈に批判。厚切りジェイソン氏も自身のツイッターや近著『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』などで疑問を呈し、多くの賛同を得てきた。
そんな2人が今考える「日本人のここがおかしい」最大のポイントは? 初対面にもかかわらず議論は白熱。徹底的に語り尽くした。
テラスカイの役員として活躍する以前には、GEヘルスケア、旭化成など日米の大企業とベンチャー企業を渡り歩いてきた経験を持つ厚切りジェイソン氏。
そんなグローバル人材の目からすると、日本の会社には非効率が横行していると言う。
堀江氏は、社印など「はんこ」も、その典型的事例だと水を向ける。社内の稟議(りんぎ)書から取引先との契約書まで、なぜいまだに重要書類には、はんこを押さねばならないのか? たとえそれがシステム上の、かたちばかりのはんこでも……。
日本人が何となく受け入れてきた現象も、厚切りジェイソン氏の目からしたら「ただの画像でしょ。捺印してないじゃん! それで満足するのはおかしい」と映る。あまりの旧態依然とした企業文化に「やめろ! そんなのやめろ!」と絶叫する一幕も。
究極の合理主義者である堀江氏も、「おかしいでしょ」「俺もそう思うよ」と賛同する。
そして、話は、日本の会社員はなぜクビにできないのかにまで発展。そこで2人が語った内容とは?
日本の古い企業文化を批判し続けてきた、厚切りジェイソン氏。その壁を壊すことこそが新たなビッグチャンスを生むと語る。
そこで、今すぐにもアナログに依存せずに機械化で効率性を高めた「クールビズ」ならぬ「クール請求書」などの仕組みを導入すべきだと強く提案する。
しかし、堀江氏は、アイデアには同意するものの、日本社会を変えるためには「直球勝負では難しい」と主張。そこには、日本企業の組織が抱えている、ある大きな課題があったのだ。
それを聞いた厚切りジェイソン氏は、その不合理さにショックを受け、またも叫び出してしまう。
第2回「Why? 日本は正論が通らない」に続く。
なぜ、日本人はおカネに関する交渉が下手なのだろうか。
堀江氏は「今後、給料は上がらない時代」にもかかわらず、日本人がおカネのことを何も考えずに就職している原因は、学校教育や家庭のしつけにあると喝破する。
厚切りジェイソン氏も、「きちんと交渉しないと安い給料で働くままだ」と語気を荒げ、残業代に頼ろうとする姿勢にあきれ果てる。
さらに、日本人は同調圧力に屈している一方で、グローバルスタンダードに対する視点は欠けていると痛烈に批判し、「周囲」の範囲が狭すぎると一刀両断。
2人の議論は明治維新にも及んで、日本人の視野が狭い原因について迫っていく。
厚切りジェイソン氏は、今の日本の教育制度では、優秀な人間が成長できる環境がないため、人材が国外に流出し、国のレベルが下がり、会社がつぶれてしまうと憂慮。そして、年功序列などの実力を伴わない制度も無駄だと批判する。
これに対して堀江氏も、自身の学生時代を振り返りながら、「できない生徒」に合わせた教育にいら立ち、暴れていたと明かすとともに、日本の企業文化は不可解だとバッサリ。
そのうえで、日本の現状を変えるためには厚切りジェイソン氏のような「外国人」の力が必要だと語る。
その真意を聞いた厚切りジェイソン氏は複雑な表情に……。日本人に、日本を変えることはできないのだろうか?
最終回は、本音を言えない日本人のサラリーマン体質について議論が盛り上がる。
厚切りジェイソン氏はその理由をまったく理解できないとして、本音で話すメリットについて力説する。
さらに、「日本ではジェネラリストを求められるのに、複数のスキルを磨いてはいけないのは矛盾だ」と、キャリア形成にも話が及ぶ。
この点について堀江氏は、「自分は100足のわらじを履いている気分だ」と語る。そこで堀江氏が提唱した、あるべき仕事のかたちとは?
2人の議論を通して、今後の日本人の働き方のヒントが浮かび上がってくる。
第5回「Why? 本音を言えない日本人」に続く。
 (構成:菅原聖司、デザイン:名和田まるめ、映像制作:古田清悟、植田城維、久藤拓実)