【ヨッピー】テレビや雑誌の人間に、企画で負ける気はしない

2016/2/14

紙はなめてる、テレビは白旗

──ネットコンテンツのつくり手として、既存メディアの人間をどう見ているんでしょうか。たとえば、「紙メディア」についてはいかがですか。
ヨッピー 紙か……! 正直、紙に関してはなめてますね。だって、競争してないんですもん。ネットはもう戦国時代もいいところでしょう。
文章を書くプレーヤーの数は、ライター、ブロガーも含めて、圧倒的にネットのほうが多いわけですよ。少し前までは確かに紙のほうがギャラが良かったんですけど、それも媒体によっては逆転しつつありますし。
ウェブのほうがGIF使えて動画使えて表現の幅がめちゃくちゃ広いし、文章の長さの制限もなくて、早くて、ファンも獲得しやすいしで、紙で書くメリットってマジでもう何もないかもしれないなって思ってるんです。
デメリットと言えば、ネットは読者を選べないので炎上しやすい、くらいかな。
しかも、ウェブって全部「数字」が出るんですよね。誰がウケているのか、一目瞭然じゃないですか。じゃあ雑誌のライターで今誰がウケているかって言われても、誰もわからないし、わからないから比べられてもいない。
そんなところで競争は生まれないんだろうなぁって。ネットだと大多数の読者と直接向き合わなきゃやっていけませんが、紙は究極的には編集長にウケてればなんとかなるじゃないですか。
こっちは日進月歩でペースも早い、激戦地で頑張っているんだから、言っちゃあなんですけど、ぬくぬく過ごしている人たちには負けないでしょ、とは思っていますね。
──それでは、テレビについてはいかがでしょう。
やっぱり資金力が違うし、届く範囲が全然違うので「テレビには勝てないな……」って白旗上げてます。テレビの威力って、あんなもん完全に暴風雨じゃないですか。なんですかあれ。反則やん。決闘するってなって金属バット持って集合したら、いきなり上からミサイル打ち込んでくるようなもんですよ。
僕、銭湯とか温泉が大好きで、そういう記事もたくさん書いてるんですよ。そしたら、ツイッターで、「ヨッピーさんが言っていた、○○温泉に行ってきました!」ってツイートしている人がいたり、その紹介した銭湯に行ったら浴槽で「ヨッピーさんの記事見て来たんですよ!」って話しかけられたりするんで「少しは経営に貢献できたかな」とか思ってたんです。
でも、以前に「アメトーーク!」で銭湯芸人という企画をテレビが放送したら、僕が取材した銭湯にもめちゃくちゃお客さんが増えているんですよ。ロッカーが満杯のレベルで。待ち時間とかあるんですよ。
パンケーキ屋じゃないんですよ? 銭湯ですよ? 番台のおばちゃんも「テレビの力ってすごいわ」って言ってたんですよね。そんなわけで悔しいですけどテレビには全然勝てないですね……! あれはズルい。
ただ、それはあくまでテレビという「ガワ」の問題で、テレビが持っている電波の力を含めてのアレなので、テレビの中の人たちと勝負して負けるかというと、これ実はけっこう良い戦いができるんじゃないかなと思ってます。
とは言えスキルはまったくないので、企画を考えるとかそれくらいのことしかできないと思いますけど。
──機会があれば、テレビの仕事をしたい気持ちもあるんでしょうか。
テレビの仕事、したいんですよ……! 番組の構成作家とかやらせてくれないかなぁと思ってるんですけどね……!
だってね、「×××××××」とか、僕らがインターネットでやった企画をめっちゃパクるんですよ。企画がパクられるってことは、僕らの発想がテレビで通用していることの証明になるじゃないですか。
──本当ですか。いま地上波で一番面白いと言われることもある番組ですね。
企画を数えてみたら1つの番組で10件も企画がカブってるんですよね。当然僕らのほうが早いし、そもそも番組から友達のところに「何かまだインターネットに書いていない良いネタないですかね」って連絡が来たっていうくらいなので、向こうは当然見てますよね。
僕の友達もそれで怒っちゃって、無視してるらしいんですけど。本当に、きれいに企画がカブりますよ。
そんなことやるんだったら、僕らをブレーンに入れてくれれば良いのになぁと思いますよ。精いっぱい頑張るし……。ギャラも別に安くていいので、テレビさん、お願いしますよほんと……。
──それでは、面白いと感じているテレビ番組はありますか。
「世界の果てまでイッテQ!」や「探偵!ナイトスクープ」「ザ! 鉄腕! DASH!!」とかですね。共通点は、リアリティがあるところと熱量があるところかなと思ってます。
過剰に演出するよりも、そこにあるものをそのまま切り貼りして届けてくれるのが、一番いいコンテンツだなと思います。僕の記事も、基本「探偵!ナイトスクープ」とか「電波少年」の影響を思いっきり受けてますから。
やっぱり書き手がつくっちゃうとあんまり受けないですよね。事実が一番受ける。変にコントみたいな企画をやろうとすると、面白くなくなっちゃいます。

ヨッピーから見たNewsPicks

──続いて、ネットメディアの例として、『NewsPicks』に対する印象を伺えればと思ったのですが。
僕はNewsPicksって本当にいいサービスだなと思っていますよ。いわゆる掲示板的なコメントシステムで、フェイスブック的な実名寄りで、いろんな人のコメントが一気に読めるサービスってほとんどないですから。
でも、別に経済に絞らなくていいのになあと思います。あと、有名人システムはちょっと気に食わない。一言だけで、たくさんLikeがつく人がいるじゃないですか。「いいね!」「いいね!」って。あれ見ると「いや別に良くないけどね」ってちょっとスネます。
結局フォロワーがたくさんいると、義理とか惰性でLIKEを押しちゃう人がいるので、そこを改善できればいいのになと思うんですよね。
フォロワーが少なくても、良いこと言っている人もいるのに、それが埋もれるのは、もったいない。
今、どんどんプロピッカーも増えてきていますけど、「プロが愚民を先導しまっせ」みたいな感じにならないようにしてほしいですね。みんなでやればいいじゃんと思うんですよ。ユーザーの質も匿名掲示板とかに比べたら明らかに高いので、集合知でいいんじゃないかという気がします。
「プロピッカーにはナンボ積めばなれるんや?」と札束を差し出して迫るヨッピー氏。
──主要コンテンツである、オリジナル記事に関してはどうですか。
それがね、つまらないです。つまらないですよねえ……うん、つまらないです。
──3回出ましたね。
なんだろうな、深掘りが足りないのかな、と。優等生的すぎる気がするんですよね。インタビューも想定問答集っぽい感じがするんですよ。もっと泥臭くても良いんじゃないかって。
建前の質問をして、建前の回答が載ってるんですよね。こういうことを言いそうだなっていう人がそういうことを言ってるって感じですね。これだとあんまり面白くない。
経営者のインタビューでも、もうちょっと人柄にフォーカスを当てたり、ちょっと変な質問投げてみたり、「それ聞いちゃうの?」と思うくらいに切り込んでもいいんじゃないかなーって。
対談でも、本当に仲が悪い人同士をぶつけるとかね。もうちょっと本音が見え隠れするメディアだったらいいなと思います。
あと、みんながNewsPicksの内輪に籠もってる気がしますね。コンテンツもそうですけど。それを外に開いていく必要があると思う。
ほかには、組織だからこそできる企画をやってほしいな。僕は以前に「ヨッピーの一日派遣社員」という連載をしていて、ヤフーやはてなに行って面白かったんですけど、手間がかかりすぎてやめちゃったんです。
マイクロソフトに行こうとしたら、打ち合わせだけで5回も呼ばれましたね。こういう企画は、広報にも関わることなので慎重になるのは当然なんですが、とはいえ、一つの記事いくらで売ってる個人の力では重過ぎるんですよ。
だから、是非NewsPicksでやってほしいと思います。一日派遣社員シリーズ。転職するときに、どんな会社かわかりますし、ユーザーにも役立つ。それが溜まってカタログになったら、すごく有意義じゃないですか。
そんなふうに個人ではできないようなことに、NewsPicksにはもっとチャレンジしてほしいですね。金とコネを駆使して。秋葉原にビルを持っているトレーダー、B・N・Fさんに密着するとかもいいかもしれないですし。プロゲーマーの梅原大吾さんとかもいいんじゃないですかね。「おー! そこ来たか!」っていう喜びが欲しい。
──ちなみに、機能面はいかがですか。
それこそ、経済以外のタグを増やしてもいいんじゃないかなと思ってますよ。芸能でも良いし恋愛でもいい。あとは、過去のログが見づらいですね。はてなブックマークだと、はてぶがついた記事順に見れますよね。そういう機能があればといいと思います。
さしあたり、「今週のピックランキング」とかを定期的にやったほうがいいんじゃないですかね。
まあいろいろ言いましたけど、サービスとしてはすごくいいと思います。でも僕みたいな人間の意見聞いてどうするんですか。18禁コーナー増やせとか言いますよ、そのうち。
──NewsPicksは普段からご覧になっている感じなんですね。
それがね、見てないです。そんなには見てない。見てないな。
──また3回出ましたね。
僕の使い方はちょっと特殊で、普段はあんまり読んでないんです。ネットを見ていて、腹立つ記事があったり、これ違うんじゃないのと思ったときに起動して、文句のコメントをつけに行くんですよ。
ツイッターで書くとフォロワーが多すぎて波紋を呼んだりトラブルになったりするかもしれませんけど、NewsPicksはその意味で吐き出す場所としてはちょうどいいんですよ。さっきも言った通り内輪に閉じてるっていうのもありますし。
──ヨッピーさんをフォローすると本音が見えるわけですね。
そうそう。「悪ヨッピー」が出てくる。ヘドロの中のヘドロって感じですね。よくわかんないけど。

世界中でウケたい

──それでは、最後に少し真面目な話として、コンテンツのつくり手としてのキャリア形成について伺えればと思います。
うーん、それで言うと、「バランス」はずっと心がけてきましたね。僕がネットで記事を書き始めた頃って「シモネタの覇者」というニックネームがついていたんですよ。実際、当時の記事は全部下ネタでしたから。
でも、やっているうちに飽きもくるし、そういう色もつくじゃないですか。下ネタしかできないと思われるのも嫌だから、少しずついろんなことに手を出して、次々と椅子を座り替えてきたんです。ポジションというか立ち位置というか。
僕は、椅子の種類にこだわりはないんです。ウケるコンテンツをつくりたい。「人に褒められたい」ってそれだけなので。
ほかに下ネタを書くライターが出てきたら、下ネタの椅子をそいつにあげて、次は体を張ったリポート系に行く。体を張ったリポートをやるライターが出てきたら、今度はまた別のことをするっていう。
基本的には「椅子取りゲーム」みたいなものだと思ってるんですよね。この企画ならこの人、っていう。そういう椅子が自分の中にたくさんあればあるほど良い。
そうやって自分の幅を少しずつ広げて、できることを増やしつつも仕事の規模を大きくしていこうと思ってるんですよね。たぶん、2年前の僕だったら市長と一緒の企画はできなかったんじゃないかなぁ。
幅を広げる作業と、規模を大きくするという作業は今後も頑張っていきたいですね。
──最終的には、どんな姿をイメージしているんですか。
うーん、最終的に、かぁ。こうやって発展してって幅が広がりきって規模が最大まで行ったらどうなるんですかねぇ。やっぱりアレじゃないですか。
「プーチンって本当に強いの? 戦ってきた」っていう記事を書くことじゃないですかね。
「こんにちはヨッピーです。本日はクレムリンに来ています」って。
それでプーチンに投げ飛ばされる僕をGIFアニメにして記事にするんですよ。これ書いたらもう完全にライターとしてあがりですよ。
世界中でウケると思うんですよね。プーチンって柔道黒帯で元KGBでめちゃくちゃコワモテじゃないですか。「実際強いのかな?」って思ってる人は世界中にいると思うんですよ。それで僕も丸々3カ月くらい仕事を休んで格闘技習って、プーチンに挑むと。
戦った後はプーチンに「プーチンって、泣くん?」とかそういう人間味のある話を聞くとか。4億ページビューくらい取れるんじゃないですかね。
もちろんそんな企画が実現するわけないんですけど、仮に僕のフォロワーが3000万人とかいて、世界中に影響力があったらまかり間違って実現するかもしれないじゃないですか。そうなったら最高だろうなぁ。
そんな感じで最終的には、世界中でウケたいですよね。日本人って、逆輸入が大好きじゃないですか。「海外で大人気のヨッピーさんです」となれば、ネット出身者として、日本のどんなメディアでも活躍できるだろうし
──そこには、「ネット出身者」としての思いが見えますね。
そうですね。テレビの仕事したいって言うのも、ネット出身者として意地を見せたい、みたいな感覚ですもん。僕がもしそういう仕事で評価されたら、「ほかにもネットで面白い人を連れてこい」ってなるだろうし、その道筋をつけられたら、ネットに対する恩返しになるかなと思いますからね。
まあ、別に僕が行かなくたって、いずれそうなりますよ。今でも、やまもといちろうさん、犬山紙子さん、はあちゅう……ネットに明るい人、ネット出身の人、いっぱいテレビに出てきていますからね。
──近い将来、世界でバズっているヨッピーさんを見てみたいです。
いやー最高ですね。「プーチンに投げ飛ばされる」とか、「ビルゲイツからパソコンを取り上げる」とかそういうのやりたいですね。やれるといいなぁ。プーチンにボロカスにやられる僕に対してNewsPicksの人たちが「ザマアミロwwww」みたいなコメントつけてくれるのを楽しみにしてます!
(写真:福田俊介)