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イノベーターズ・トーク

【膳場×スー】今晩「NEWS23」に復帰の膳場貴子が語る育児、仕事論

2016/2/8
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では気鋭のイノベーターたちが登場し、時代を切り取るテーマについて議論を交わす。

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第12回には、キャスターの膳場貴子さんと、作詞家・ラジオパーソナリティー・コラムニストのジェーン・スーさんが登場する。

昨年11月に女児を出産したばかりの膳場さんは、本日2月8日、「NEWS23」のメインキャスターに復帰する。

復帰の前には、さまざまな報道が飛び交った。今年3月末に「NEWS23」を降板することが決定しているが、それは膳場さんから「番組に区切りを付けて、育児に専念したい」とTBS側に申し入れしたからだと報じたスポーツ紙もあった。

これに対し、膳場さんはフェイスブックを介し、「責任と愛着を持ってやってきた仕事です。降板申し入れはしておりません。このような誤報を、たいへん残念に思っています」と反論した。

出産の10日前まで仕事をし、昨年11月末に産休に入る前には視聴者に「皆さまの前に戻って、この番組でお目にかかる日を楽しみにしています」とあいさつしたほど、膳場さんの仕事にかける思いは強い。

「女性は育児に専念するもの」というバイアスの入った記事は到底看過できなかったのだろう。

今回の対談は、そんな膳場さんが今回の復帰にかける思いについて、そして子どもを産み育てながら働くということについて、盟友ジェーン・スーさんとざっくばらんに話したいとの思いから実現した。

あえて独身のスーさんを対談相手に指名したのは、「以前から、子育てや仕事にかかわらず、『それぞれが得意なことを持ち寄って、みんなが力を発揮できる社会がいいよね』というような話を、スーさんとしていたんです」(膳場さん)

2人が考える「役割分担社会」とは、どのようなものなのか。また、膳場さんが子どもを産んでみて初めて気づいたこととは──。はたまた、社会を維持していくことと、個人の幸せは両立できるのか──などについて、議論は白熱していく。

一般的に、女性2人が集い、育児や仕事について語るとなると、「女性は大変だ」議論に集中すると思われがちだが、今回の対談は違う。

スーさんは、膳場さんが一部報道で「女性は育児に専念するもの」という固定概念に封じ込められたように、男性は男性だというだけで家庭の主たる稼ぎ手として見られていると指摘する一幕も。

生きていくのが大変なのは、なにも働く母だけではない。性別や年齢だけで、役割を分断するのは危険だと示唆する。

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「育児に専念したいから降板を申し入れた」と書いたスポーツ紙に対し、誤報だと声を上げた膳場さん。

もちろん子どもはかわいい。育児は想像以上に大変だが、楽しい。だが、たとえ乳幼児を抱えていても、相変わらずニュースは見るし、仕事への意欲が減ることはない。

それを、「育児に専念したい」と、「生き方」や「自分の信条」に関わる部分を誤って断定されたことが、容認できなかったと言う。

また、この2カ月子育てに専念し、「母親1人だけで子育てするのは無理」だと実感するに至ったエピソードも赤裸々に語られる。

「1人で面倒を見ていたとき、娘が泣いて手が離せないのに、どうしてもトイレに行きたくなったことがあって。とっさにバスタオルをひっつかんでトイレの床に敷き、そこに赤ちゃんを寝っころがしてコトなきを得た、なんてこともありました」(膳場さん)

第1回「膳場貴子が『NEWS23』降板報道に反論した理由」に続く。

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膳場さんのご主人はこの2月から1年間の育児休暇を取得するという。男性の育休がまだ普及しているとは言いがたい日本の会社で、これだけの長期休暇を申請するのは、そう簡単ではなかったようだ。

膳場さん自身、ご主人が育休を取ることに対し、「夫の今後のキャリアにマイナスになるのではないか、将来を狭めてしまうんじゃないかと、申し訳なく思ったり、けっこう気持ちが揺れました」と言う。

これに対し、「それも変な話ですよね。本当は」と語るスーさん。

「『母親なら、帰って世話するべきじゃないの』と考える人は一定数いるでしょうね。いますが、そこは『そんなことはない』という事実を重ねて周囲を慣れさせていくしかないのかもしれません」(スーさん)

一方で、スーさんはこの日本社会で「生きづらさ」を感じているのは女性に限らないと強調。

「女の人は、結婚すると『お仕事どうするの?』と聞かれる時点で、専業主婦という選択肢があるとされてるんですよね。実際には共働きじゃないと食べていけない家庭が増えている時代なんですが。でも、男の人は、就職したら65歳まで辞めないで働くことが当然の大前提になってしまっている。男性は、ある意味十字架を背負ってるんだなと」

こうして議論は、「男性も大変だ」論に発展していく。

第2回「夫が1年間の育休を取得。そのとき周囲の反応は?」に続く。

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育休からの復帰後、負担は少ないがキャリアアップが難しい部署に移される「マミートラック」問題──。

これについて、育休取得後、同じ仕事、同じ等級で戻れる保証がないと、「それまで築いてきた自分のポジションを失うのが恐くて、産むのを躊躇してしまいますよね」と指摘する膳場さん。

さらに、議論は短時間勤務の女性をめぐる問題に発展。スーさんは時短勤務の女性ができない仕事をほかの女性社員が補填(ほてん)する現象について、誰かが誰かの犠牲になるのは「おかしい」と言う。

「「同じ性別なのにわかり合えないやつら』って揶揄されているような気分になるのですが、それ性別に期待しすぎだと思います」(スーさん)

さらに、スーさんは、自身のような独身の“野良中年”が一番「生きやすい」社会は健全といえるのか、と課題を提起する。

第3回「『女の敵は女』問題は、なぜ起きるのか?」に続く。

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産後2カ月で早期職場復帰──。膳場さんは、ハタから見れば「スーパーウーマン」にしか見えない。

だが、ご自身は仕事以外はまるでダメ人間だと分析する。

ただ、仕事にかける思いは人一倍だ。今回の早期復帰も、実は女性に向けてあるメッセージを発信したいとの思いもあったと言う。そのメッセージとは、果たして?

第4回「産後2カ月で職場復帰。早期復職にかけた思いとは?」に続く。

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アベノミクス「新3本の矢」では「希望出生率1.8」を実現したいとの目標を示した。

だが、スーさんは日本の少子化対策は、民間企業や働く人の努力に頼りすぎではないかと疑問を持つ。出生率が上がった国で、何らかの政策が介在しなかった例を聞いたことがない、と。

日本が今後究極の高齢化社会に入る中、働くうえでハンデを背負うのは子どもを育てる人だけではなく、介護をする人、さらに本人が病気を抱える人など多様化するのは間違いない。

そこで2人は、モーレツ社員だけが「戦力」扱いされ、そのほかの社員が冷遇される社会はおかしいとし、新しい社会の役割分担のカタチについて議論を深めていく。

第5回「日本の出生率、どう上げる?」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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第1回:2月8日(月)公開
膳場貴子が「NEWS23」降板報道に反論した理由

第2回:2月9日(火)公開
夫が1年間の育休を取得。そのとき周囲の反応は?

第3回:2月10日(水)公開
「女の敵は女」問題は、なぜ起きるのか?

第4回:2月11日(木)公開
産後2カ月で職場復帰。早期復職にかけた思いとは?

第5回:2月12日(金)公開
日本の出生率、どう上げる?

(目次構成:佐藤留美、本編構成:ケイヒル・エミ、デザイン:名和田まるめ、撮影:遠藤素子)