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イノベーターズ・トーク

【平将明×山崎元】アベノミクスの成長戦略は“本物”か

2016/2/1
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、毎週2人のイノベーターたちが、時代を切り取るテーマについて議論を交わす。
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第11回には、自民党衆議院議員の平将明氏と、経済評論家の山崎元氏が登場する。

2012年12月に発足した安倍政権は、民主党政権時代の相次ぐ失政でボロボロに傷ついた日本経済をデフレから脱却させるため、経済政策「アベノミクス」を掲げて改革に乗り出した。

あれから3年の歳月が経ち、アベノミクスのメニューは「旧3本の矢」から「新3本の矢」へと引き継がれた。だが、国民の間には「旧3本の矢の総括がまだ済んでいない」との声も多い。第1の矢(大胆な金融緩和)は効いた。第2の矢(機動的な財政政策)もそこそこ効いた。では、第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)はどうなのか、と。

足元の日本経済は年初来の株安傾向にある。海外に目を転じると、陰りを見せる中国経済や原油価格の下落など、不安の種は尽きない。果たして安倍政権は日本経済を再び安定的な成長軌道に乗せることができるのか。アベノミクスの「第3の矢」はブレることなく空高く飛ぶのだろうか──。

平将明氏は昨年10月まで、内閣府副大臣として地方創生、国家戦略特区、クールジャパン政策といった重要分野を担当してきた人物。アベノミクスの成長戦略の中枢を担ってきた、いわば“中の人”の一人だ。

一方の山崎元氏は経済全般の分析・評論を専門とし、時に歯に衣着せぬ物言いでズバリと本質を突く、当代きっての論客である。

アベノミクスの成長戦略に死角はないか。安倍政権の実行力に不安はないか。今回の対談で初めて相まみえた2人が、日本経済の行く末をめぐって熱い火花を散らす。

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まずは昨年までのアベノミクスを振り返っておこう。「昨年1年間のアベノミクスに点数をつけるなら?」という問いに、辛口で知られる山崎氏からは意外な答えが。失業率が下がり、経済的弱者の所得が上がったことを評価しつつも、消費税を8%に引き上げたことにはチクリと物申す。

一方、政策をつくる側である平氏は「1年の成果だけ切り出してアベノミクスの是非を問うのはナンセンス」とけん制。アベノミクス旧3本の矢の変遷を振り返り、進捗(しんちょく)は「予定通り」と自信をのぞかせる。

第1回「アベノミクスで放たれた『4本の矢』」に続く。

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アベノミクスは着実に成果を上げていると胸を張る平氏も、2017年に予定されている消費税増税については「やっかいだ」と認める。消費税増税は果たして予定通り断行されるのだろうか。景気の腰折れを懸念する山崎氏の口からは、ある大胆な提案が飛び出す。

消費税増税とセットで議論されている軽減税率の行方も気になるところだ。山崎氏は軽減税率の効果には懐疑的な目を向ける。平氏も、マイナンバーが導入された今「軽減税率より給付付き税額控除のほうが合理的」と個人的な見解を吐露。「でもこの期に及んで軽減税率をやらないという道はない」と苦衷をにじませる。

第2回「これでいいのか軽減税率」に続く。

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平氏の地元である東京・大田区では、国家戦略特区を利用して全国で初めて「民泊」が解禁される。国家戦略特区とは、エリア限定で規制緩和をするスキームだ。

山崎氏は「特区の中だけはやってもいいなどとケチなことはしないで、規制をなくせばいい」とズバリ。しかし平氏は、特区を利用することで、かたくなな態度の規制省庁にどのような変化が生じるか、その波及効果を説明する。

第3回「“最強のドリル”で岩盤規制に穴を開ける」に続く。

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日本経済を安定的な成長の軌道に乗せるため政府はさまざまな施策を行っているが、中でも「最も伸びしろがあるのは外需」だと平氏は言う。

輸出の促進やビザの緩和など、外貨を呼び込むための規制緩和策について語る平氏。だが山崎氏は「労働関係の規制が緩和されないと、もうひとつパッとしない」とけん制球を投げる。これに対し、平氏はいったいどう切り返すのか。

第4回「雇用・労働の規制緩和は進むか」に続く。

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対談も終盤に差し掛かった頃、山崎氏が1つの疑問を口にする。アベノミクスは金融財政と規制緩和というパッケージになっているが、「分配」のメニューが盛り込まれていないのだ。

民主党政権時代の子ども手当は「よかったと思いませんか?」と山崎氏が振ると、平氏は慌てて民主党政権の批判を始める。しかし山崎氏が畳みかけるとしぶしぶ「子ども手当はわかりやすい」と認め、マイナンバーが導入された今なら給付付き税額控除で対応できると語る。

第5回「アベノミクスにはなぜ分配政策がないのか」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
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第1回:2月1日(月)公開
アベノミクスで放たれた「4本の矢」

第2回:2月2日(火)公開
これでいいのか軽減税率

第3回:2月3日(水)公開
“最強のドリル”で岩盤規制に穴を開ける

第4回:2月4日(木)公開
雇用・労働の規制緩和は進むか

第5回:2月5日(金)公開
アベノミクスにはなぜ分配政策がないのか

(構成:常盤亜由子、デザイン:名和田まるめ、撮影:竹井俊晴)