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観戦には公式アプリが便利

データから読み解く、錦織圭とジョコビッチの全豪4回戦

2016/1/25

1月18日からスタートしたテニスの全豪オープンは本日から大会2周目に入る。

大会2週目では世界ランキング上位選手同士の対戦がほとんどとなり、より高いレベルの試合を毎日楽しむことができる。

ここでは、男子テニスを中心に大会2週目の展望について、そして全豪オープンの公式アプリから確認できるデータを基に、準々決勝で激突する錦織圭とジョコビッチの4回戦を振り返る。

決勝に進むのは誰だ

下に全豪のここまでの勝ち上がりをまとめたドロー表がある。
 全豪ドロー.001 (2)

トップハーフは昨日4回戦を終え、

ジョコビッチ ー 錦織圭

フェデラー ー ベルディヒ

の準々決勝を明日26日に控えている。決勝進出の第一候補はやはり王者ジョコビッチと見る声が多いが、好調を維持して勝ち上がっている錦織、もしくはフェデラーが、4回戦のシモン戦で不安定さを見せたジョコビッチを撃破してもおかしくはない。

また、ボトムハーフはナダル(第5シード)を筆頭に多少のシードダウンが見られたが、準決勝まではおそらくマレー、そしてワウリンカが勝ち上がるのではないか。

公式アプリで見る錦織の4回戦

IBMはテニスのグランドスラムを長年にわたってサポートし続けているが、テニス観戦のおともには同社が提供する公式アプリが便利だ。

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全豪オープン公式アプリのトップページ

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昨日の錦織とツォンガの試合結果は、アプリではこのように表示される。
 テニススクショ.002 (1)

スタッツ(試合のデータ)を詳しく見ると、以下のようになる。
 テニススクショ.003 (1)

スタッツからもわかるように、ツォンガが錦織より明確に上回っていたのはサービスエースの本数くらいで、

・ファーストサーブが入ったときの得点率
 ・セカンドサーブが入ったときの得点率
 ・ウィナー(ラケットがボールに触れずに決まったポイント)を決めた数
 ・アンフォーストエラーの数(自分に原因があるミスショットのこと。当然少ないほうがいい)
 ・リターンポイントの獲得率
 ・ネットで決めたポイント

と上記項目ですべて錦織が上回っていた。

つまり、ツォンガは得意なパワーサービスで一発を狙うくらいしか錦織からポイントを高確率で奪う方法がなく、錦織のサービスゲーム、また自身のサービスを返された後のストローク戦では、ほぼ主導権を錦織に握られていたことがわかる。

錦織は2011年の上海マスターズや2012年の全豪で当時格上だったツォンガを破るなど、トップ10に入る前からツォンガは得意にしていた相手だ。

ただ、昨年全仏での敗戦が印象的だったのだろう。戦前の報道を読む限り、メディアは必要以上にツォンガを怖がっていたように感じる。

おそらく、錦織はそのツォンガに負けた試合をしっかりと分析していたはずだ。昨年の全仏では、錦織はツォンガの苦手なバックにボールを集めることをあまりせず、得意なフォアハンドで打ち合ってしまい、ポイントを先行された。

一方、昨日の対戦では、錦織はツォンガのバック側にかなり意図的にボールを集めていた。

ツォンガは前への突進力があるパワー型の選手だが、左右の動きがトッププロの中ではやや見劣りする。

特にバック側に振られると、窮屈そうな両手バックからブロック気味にボールを打つか、片手のスライスで凌ぐことが多い(この点、ジョコビッチやマレー、錦織は、横の動きに強く、バック側に振られてもしなやかに強いボールで切り返すことができる)。

錦織はツォンガのバックサイドから甘いボールが上がってきた場合、そのボールを早いタイミングでオープンコートに叩き込みながら、時にドロップショットで前に落とすという戦術を試合を通して完遂できていた。

次はジョコビッチ

錦織の次の相手は、シモンとのフルセットの激闘を制したジョコビッチだ。
 テニススクショ.004 (1)

スタッツで見ると、シモン戦でジョコビッチは62のウィナーを取ったものの、100ものアンフォーストエラーを重ねた。
 テニススクショ.005 (1)

これは、シモンが自分からあまり強打をしていかないカウンターパンチ型の選手ということもあるだろうが、普段のジョコビッチから考えるとあまりにも多いエラーの数だ。

なぜ、ジョコビッチはここまでミスを重ねてしまったのか。筆者は、シモンの戦術にジョコビッチが巻き込まれてしまったと考える。

ジョコビッチに自分の好きなタイミングでラリーをさせてしまうと、早いタイミングで左右に角度のついたストロークでどんどん振り回されてしまう。ジョコビッチのこのストロークは文句なしに現在世界最高であり、形勢不利になるのは明らかだ。

昨年、あれだけジョコビッチに勝たれてしまったので、ほかの選手はジョコビッチのストロークのリズムをどう封じるかに知恵を絞っているはずである。

その一つの答えとして、シモンが見せたように、自分からあまり強いボールを打たず、緩くて深いボールをコートのセンターに集めるという戦術がある。スピードのないボールはライジングでパワーを乗せることは難しく、また、コートの真ん中から角度をつけてストロークを打つことも難しい。

シモンの緩いボールに対して、ジョコビッチは打ち急いでミスを重ねてしまった。最終的に勝ち切るところは、さすが世界1位といったところだが、試合後の表情は疲労を隠し切れていなかった。

では、このジョコビッチに対して錦織はどのように戦うのか。

おそらく、錦織はシモンのように緩いボールでつなぐことはあまりしないだろう。今大会はライジングのストロークが好調なため、ジョコビッチをも上回る早いタイミングのストロークで仕掛けにいくと筆者は見ている。

かなりリスキーな戦術ではあるが、この戦い方がピタリとはまれば、2014年の全米のようにジョコビッチを凌駕できるはずだ。