クックパッド内紛。今後のシナリオと、スタートアップの構造問題
コメント
注目のコメント
佐野氏は近年、メディア露出がほとんどありませんが、まだ社長だった2010年に一度インタビューしたことがあります。
そのときの取材は今も鮮明に記憶していて、いい意味で、これほどビジョン、言葉にこだわりのある経営者は日本では稀だなあ、と感じました(「ビジョナリー・カンパニー2」が愛読書とのこと)。
当時のインタビュー(『週刊東洋経済』2010年3月27日号) を読み返すと、以下の言葉が印象的です。この「三つの輪」に照らすと、みんなのウェディングなどは手掛けるべき事業ではない、という判断になるのかもしれません)
<以下引用>
会社の意思決定の基準も明確化している。「本当に料理が楽しくなるのか」「世界一になれるのか」「儲かる仕組みがあるのか」という「三つの輪」があり、三つのうち一つでも実現可能性がないものはやらない。たとえば、どんなに料理が楽しくなって、儲かっても、世界で一番になれないとわかったらやらない。「グッドはやらない、ベストだけやる」というのが会社の決まり。
この三つの輪を見つけ出すのには7年ぐらいかかった。これは、社員が会社や企業活動を統制する憲法みたいなもの。たとえ社長の意見であっても、この三つの基準を満たす可能性が説明できなければ、その意思決定は認められない。オーナーやファミリーが株式の大半を保有しコントロールを維持する「ファミリー企業」には、いくつか共通の特徴があります。世界の富裕層ファミリーを広くカバーするCredit Suisseの分析(*1)によると、ファミリー企業には①パフォーマンスがIndexを上回る、②保守的な経営を行う、③レバレッジが低い、④長期目線での経営を行う、などの傾向ありとしています。
また、当分析はファミリー企業への投資には固有のリスクがあることも指摘しています。リスクの多くは「脆弱なコーポレート・ガバナンス」や「少数株主がコントロールを持ったり経営に影響を与え辛い点」に起因するとしています。特に創業者などが複数議決権を持つ種類株式を保有している場合に顕著です。
上記の通りファミリー企業への投資にはリスクがありますので、米国上場企業の年次報告書では通常当該投資リスクに関する注意喚起が行われています。
例えばFacebook社の10-K(年次報告書)(*2)における「Risk Factors(事業等のリスク - 議決権に関連するリスク)」では、CEOなどが持つClass B株式の存在により一般投資家(Class A株式への投資家)が会社のコントロールを持ちえないこと、会社の重要事項に関して影響を与えられない可能性があることを明示しています。
ちなみに、クックパッドの有価証券報告書(*3)における「事業等のリスク」は、Facebookと類似の”オーナーシップに関するリスク情報”の開示はありません。
ただこれはクックパッドが悪いというより、リスク情報の開示に関して、日本企業は米企業の開示と比較して限定的なのがマーケットのプラクティスです。今回のクックパッドの騒動を鑑みて、日本でもファミリー企業ではやはり当該リスクを開示しておいた方が無難に良いんじゃないかと思います(個人の感想です)
(*1) http://www.valuewalk.com/2015/07/family-firms-stocks/
(*2) http://investor.fb.com/secfiling.cfm?filingID=1326801-15-6
(*3) https://cf.cpcdn.com/info/assets/wp-content/uploads/20150402173955/14.12Q3h.pdf創業者の自爆テロ。少数株主カワイソス。まあ佐野さんの個性までリスク情報にはかかれないだろうしなあ。確かに優秀な社員の草刈り場になるだろうなあ。そもそもあきたさんに社長やってもらいたい会社はそれこそ山ほどあると思うし。http://horiemon.com/talk/6545/