買い物上手のFacebook。ブランド形成に妙
2016/1/19
買収は成功したか?
Facebookはこれまでに3件の大型買収を行ってきました。
いずれもFacebookに統合するのではなく、独立したプラットフォームとして運営を続けています。
Oculusは今年1月にようやく製品版の予約が開始されたばかりで、プラットフォーム感はありませんが、InstagramとWhatsAppはすでに大きなコミュニケーションの場になりつつあります。
Facebook、そこからスピンオフしたMessengerと月間アクティブユーザーを並べてみると、その規模感がわかります。
同じメッセージング・アプリであるWhatsAppとMessengerは競合せずに、両方で高いアクティブ・ユーザーを得ています。
また、FacebookとInstagramも写真や動画の共有という点で重複する機能を持つサービスですが、こちらもすみ分けできています。それだけではなく、Facebookでうまくいった広告モデルを、Instagramでも導入して売り上げを伸ばしています。
補足Pick
・4億人突破のインスタグラム 売上2000億円も視野に
2012年から始まったFacebookのプラットフォーム買収は成功と言えます。
インドでも期待
大きなユーザー拡大余地であり、Facebookユーザーがアメリカに次いで多いインドでも、InstagramとWhatsAppは存在感を出しています。
似たような機能を持つプラットフォームを並列して持つ意味が見えてきた一年でした。この独立した複数プラットフォームがGoogleとの違いになってきています。
アパレルのようなブランド形成
Facebookが複数プラットフォームを持つことで得られるメリットは主に3つです。
1つずつ見ていきましょう。
(1)プラットフォーム間のシナジー
Facebookは1つのプラットフォームで確立したビジネスモデルや技術基盤を水平展開して生産性を上げています。
MessengerとWhatsAppに関しても、ビジネスモデルの共有や、Messengerで進めている人工知能(AI)を使ったパーソナル・アシスタント機能のWhatsApp導入が見込めます。
補足Pick
・Facebookは、Messengerアプリに「M」という名のパーソナルアシスタントを入れようとしている
(2)複数ターゲットへのリーチ
アパレル企業は複数のブランドを持つことで、いろいろな世代、性別、ライフスタイルを網羅していきます。Facebookが行っているのも同じことです。
それに対して、Googleは主力サービスの多くをGoogleブランドを意識させるかたちで展開してきました(例外はYouTube)。
Facebookのようなサービスの重複もなく、機能別にサブブランドを設け、1つのターゲットに向けて訴求していきます。
Googleのやり方は情報統合型のPCの世界においては有効でした。FacebookもGoogleのような展開を当初は考えていましたが、モバイルファーストの方針に伴いかじを切りました。
ウェブサービスからモバイルアプリへの転換期において、ブランドと機能をFacebookに統合するのではなく分散しておいたほうが多くのユーザーを取り込めると考えたわけです。
(3)リスクの分散
栄枯盛衰の激しいテクノロジーの世界、1サービスの死が会社の死につながることも少なくありません。
Facebookが廃れてもInstagram、MessengerがダメになってもWhatsAppといった具合に大規模プラットフォームを複数育てることにリスク分散の狙いも見えます。
役割を果たしてきたM&A
Facebookが複数プラットフォーム化をここまでスピーディに進められたのは、M&Aのおかげです。
Messengerも2011年に買収したBelugaのチームが開発に関わってきました。Facebookによるプラットフォーム買収はおおむね2年で結果を出しており、M&Aからは数年後のFacebookの姿が浮かび上がります。