映像ディレクター・江口カン氏(中編)
【江口カン】カンヌ広告祭で金賞の男は表彰式に行かない
2016/1/13
今、日本と世界は大きな転換期にある。そんな時代において、世界レベルで飛躍する、新時代の日本人が生まれ始めている。本連載ではビジネス、アート、クリエイティブなど、あらゆる分野で新時代のロールモデルとなりえる「グローバルで響いてる人の頭の中」をフィーチャー。経営ストラテジストの坂之上洋子氏との対談を通じて、各人物の魅力に迫る。第2回は、映像ディレクターの江口カン氏と対談。
前編:世界を魅了。860万回再生の動画を創った男の思考術
表彰の場所には行かない
坂之上:江口さんの会社の受賞ページを見たら世界中で賞を取られていらっしゃいますよね。表彰されるときってどんな気分なんですか?
江口:えっと。僕、表彰の場所には、行かないんです。
坂之上:え? 行かない? どうして?
江口:本音を言うと、実は賞自体にはあまり興味がないです。終わったことだし。賞を取ることで、また次の仕事につながることだけがうれしい。
坂之上:お祭りみたいに大騒ぎして祝うのかと思ってました。
江口:僕は人が多い所とパーティーが苦手なので、そういうのが本当にダメですね。
坂之上:恥ずかしい?
江口:恥ずかしいっていうか、もう人が多いというだけで、出て行きたくなくなっちゃう。
坂之上:(笑)。
江口:おしゃれなとこも苦手だし。
坂之上:江口さんのCMが人々に響いているところは、普通の人がいとおしかったり、格好良かったりするところじゃないかって思うんですよね。
「男ですいません」とか、最高です。
江口:最初、この「男ですいません」というコピーが、女の人たちを怒らせるんじゃないかと心配したんですけど(笑)。
坂之上:これキャスティングも絶妙ですよね。
江口:そうですね。キャスティングは血ですから。
目力のない人を探す
坂之上:江口さんはキャスティングをするとき、「目力のない人」を探すっておっしゃってましたけど、それはどういう意味なんですか?
江口:普通に生活してて普通の人ってそんなに目をギラギラさせてないから。
坂之上:確かに(笑)。
江口:役者さんって、やっぱり役者を目指すだけあって、目がギラギラしてる人が多いんですよね。そこをできるだけ隠せる人を選ぶことが多いかな。
坂之上:世界最高峰の広告を競う「カンヌ国際広告祭」にて、金賞を取った「LOVE DISTANCE」も素敵でした。(編集部注:「LOVE DISTANCE -僕らは、10億ミリ離れていた。-」は、相模ゴム工業が開発した0.02mmの世界最薄コンドームPRキャンペーン)
江口:これは本物の遠距離カップルを募集してキャスティングしたんです。
坂之上:2人の表情がものすごくいいですよね。
江口:24日間かけて実際に1000キロ走らせたんですよ。
坂之上:コンドームの宣伝をこんなに真っすぐに、そして美しくつくったことに、世界中の広告のプロたちが驚嘆したんですよね。
(撮影:遠藤素子)
*続きは明日掲載します。