スマートフォンにおける情報の見せ方・伝え方をテーマに、予測をします。
予測の3つのポイント
スマホ最適のこだわり進む
「スマホ漫画」「縦型動画」「モバイルVR」「5秒動画」と、スマホに最適化した表現が徐々にではありますが広がってきました。
スマホに適したサービスモデル、アプリのかたちが絞られてきて(メッセンジャー系が一番手)、今度はそのプラットフォーム上で扱う情報の見せ方に目が向いてきました。
流通網が整うにつれ、ようやく陳列やパッケージ、製品自体のスマホ最適が問われるようになったわけです。
これまでは便利なコンビニに、レストランで出すフルコースをそのままのかたちで出していたようなものです。
陳列・パッケージに関しては、LINE NEWSやApple MusicのFor Youがスマホ最適の好例です。
スマホで日々閲覧する情報の多くは3つの面(「陳列」「パッケージ」「製品」)でまだまだスマホ最適されていません。電子書籍でさえ、いまだに多くは紙のフォーマットを踏襲したままです。
スマホでの情報の見せ方・伝え方には大きなチャンスがあります。流通量が多いニュース、動画、音楽はこれからスマホ最適化へのこだわり競争が激しくなるでしょう。
○○らしくない表現が生まれる
こうした時期に必要なのは、「製品」「パッケージ」「陳列」それぞれで、従来のやり方を参考にしつつも新しい型を模索することです。
Comico(コミコ)の漫画は果たして一口に「漫画」と呼んでいいものなのか。NewsPicksで掲載しているインフォグラフィックは紙・PC向けのインフォグラフィックと同じものなのか。
スマホ最適化にあたり、一口に○○と呼べない表現が生まれるのは必然です。画面いっぱいの表現もPC画面ではうっとうしくても、スマホでは受け入れやすく、スマホならではの没入体験を演出できます。
Snapchat(スナップチャット)のDiscoverを見たときは、テレビ、ニュース番組の新しいかたちのようにも感じました。
「こんなの○○じゃない」と言われながらも普及する表現がこれからも出てくるでしょう。それらはどこから生まれるかというと、3つの条件を必要とします。
強固なスタイルがブランドになる
スマホで閲覧する情報は、ソーシャル・メディアやキュレーション・サービス経由で接することが増え、テレビや雑誌のように放送局や雑誌名を意識する機会がありません。
面白いと感じたインタビュー記事も内容やインタビューされた人のことは覚えていても、どこが発信元か、聞き手は誰かといったことはすぐに忘れられてしまいます。
細切れに扱われる前提で「あぁ、これは○○スタイルだね」「あぁ、これは△△だね」とどこで接しても感じてもらえる強固なスタイルがスマホ時代のブランド形成では欠かせません。
それはグラフィック、動画といったビジュアルを用いるだけではなく、言葉の隅々から醸成するものです。
たとえばWIREDの記事が、「イノベーション」をわざわざ「イノヴェイション」「ビジョン」を「ヴィジョン」と表記するのもスタイルの一つです。
根気よく繰り返すことで「あぁ、この表記ってことはWIREDね」と次第に感じてもらえるようになります。
クリエイティブ人材の資質
最後に、今回挙げたポイントに従って、スマホ表現を担う人材像を考えてみます。
(1)変化をチャンスと捉えられる人
これは創造的な仕事をする人すべてにいえます。「あの頃は良かったマインド」から新しいものは生まれません。
とはいえ「あの頃の良さ」を知っていることは大切ですし、資産になります。ポラロイドの良さを知っていたからこそ、Instagram(インスタグラム)は生まれました。
(2)いろいろな分野を越境できる人
画家はその時々で鉛筆、チョーク、水彩、油彩、あるいはデジタルツールといった具合に筆を持ち替えます。筆の種類が豊富であればあるほど環境に適した表現が可能になります。
中でもテクノロジーは最大の筆です。そこに言葉、デザイン、アートを掛け合わせた越境表現に無限の可能性があります。
(3)独自のスタイルを持っている人
ファッションでも、食べ物の好みでも、写真、映画、なんでもよいのですが、自分なりの強烈なこだわりを何かしら持っていることは重要です。
それをそのまま出すという意味ではなく、「スタイルってこういうことだよね」と心身で理解できていることに価値があります。スマホの狭い画面では変容しながらも継続するスタイルに支持が集まります。