エムスリー稼ぎ頭部門長に聞く「最強の戦略」【MR君編】

2015/12/9

社長と創業メンバーが考えたモデル  

時価総額8600億円企業エムスリーの躍進は、「MR君」の成功から始まった。
改めて「MR君」とは、製薬会社の“医療プロモーションのIT化”と言える。製薬会社のMR(医薬情報担当者)が行ってきた自社医薬品情報の伝達を、インターネットを活用し発信する。ローンチから15年。現在は、100億円事業に育った。
世界に先駆けて、このビジネスモデルを“発明”したのは、「マッキンゼーのコンサルタント出身の社長谷村格氏と創業メンバーだった」と同社取締役の辻高宏氏は振り返る。
「もともと谷村はプロバイダ『ソネット』の一部分で展開していた医療関係者向けのコンテンツの新規サービスの可能性について、コンサルタントとして関わっていた。その過程で、医療界には非効率がたくさんあると気づいたのです」(辻氏)
エムスリー取締役 辻高宏氏

「先生」にメールを送れない

当時、MRの医師への情報提供活動は、個人プレーを軸として非効率だった。しかし、インターネットを活用し、MR自らが医師に情報を流し情報の共有が進めば、営業が効率的になる。
また、情報の受け手たるドクターも、MRに病院にノーアポで来られて時間を拘束されるより、自分の好きな時間に情報を自ら取りにいきたい思いもあった。オンラインだとそれが可能となり、利便性が増すことが発想の原点だった。
「医師は理系なだけあって、もともとネットリテラシーは高かった。にもかかわらず、m3.com立ち上げ当時、医療現場ではインターネットがほとんど使われていませんでした。そこに、すごいギャップがあったのです」(辻氏)
さらに、医師とMRとの間には、普通の民間企業とは異なる世界があった。「先生」である医師にメールを送るなんて恐れ多くて失礼との認識があり、双方がうまくコミュニケーションできない課題もあったのだ。