(ブルームバーグ):約7年間にわたる東芝の不正会計問題で、証券取引等監視委員会は7日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に当たるとして、同社に対し過去最高となる73億7350万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。これまでの最高額は、2008年にIHIに科された約16億円だった。

監視委は発表資料で、東芝が一部の工事進行基準適用案件で損失引当金の過少計上や売上高の過大計上を行ったほか、映像、パソコン、半導体事業などの一部で売上原価や費用を過少計上したと指摘。こうした事実について虚偽記載した有価証券報告書を提示し、社債を発行した結果、投資家にとって大きな不利益となったと判断した。

東芝の第三者委員会報告書によると、経営トップの圧力により、社内のさまざまな部署で08年度~14年度途中まで不適切な会計処理が行われた結果、有価証券報告書の修正を迫られた。9月の発表によると、この期間の利益水増しと減損処理などで純損益を1552億円も減額修正している。責任追及のため、西田厚聰元社長ら歴代3社長を含む5人を相手取り3億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

監査委の課徴金勧告を受けて東芝は声明を発表、「勧告を真摯に受け止める」とし、その上で、特段の事情がない限り監視委に指摘された事実や納付する課徴金の額を認める方針だとした。課徴金で新たな損害が発生するのに伴い、元社長らへの損害賠償3億円を増額する方針も明らかにした。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、今回の事件が「信用失墜という意味では大きかった」とし、信頼回復には5 -10年かかると分析した。

刑事告発、妨げられず


監視委の佐々木清隆事務局長は7日の記者会見で、一般論と断った上で、「課徴金調査結果が出ても刑事告発を妨げるものではない」との考えを示した。今回の事案にどう適用するかについてはコメントを控えた。

佐々木事務局長は、「事件の根本原因はコーポレートガバナンスの不備にある」とし、東芝は委員会設置会社でありながら、機能していなかったと批判。「グローバルで日本を代表する大企業が起こしたという意味でも、重大で影響が大きい」との考えを示した。

菅義偉官房長官は7日の会見で、東芝の不正会計問題について「極めて残念」で再発防止に取り組むことが重要と話した。その上で金融庁が審判手続きの開始を決定しており、証券取引の公正、投資家保護のため厳正に対処すると語った。

東芝は15年3月期決算で課徴金を想定して84億円をすでに引き当て計上している。再発防止に向け企業統治を強化するため、社内取締役4人の倍近い7人の社外取締役を起用した。

事業再編も選択肢


東芝は不正会計で隠されていた不採算事業を見直しており、7日夕に記者会見した室町正志社長はパソコン事業について、富士通やソニーから分社化したVAIOとの再編は選択肢の一つだと語った。家電事業ではシャープとの再編も選択肢の一つとしたが、いずれも機関決定した事実はなく、他の選択肢も検討していると話した。

同社は既に、カメラに使われる画像センサー事業をソニーに売却するほか、照明に使う白色LEDの製造からも撤退することを明らかにしている。構造改革に伴い、早期退職者を募集する予定。

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