「雇われ経営者」が責務を全うするために必要なこと

2015/11/24
第22回では、朝倉氏が「雇われ経営者」について語る。創業経営者からバトンを引き継ぐ際に生じる課題とは。そして、組織を継続的に発展させるためには何が必要なのか。
雇われ経営者の話をしたいと思います。
「経営者」と聞いて、読者諸氏が思い浮かべるのはどんな人物でしょうか。おそらくは松下幸之助や本田宗一郎、井深大といった創業経営者が多いのではないかと思います。海外であれば、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグといったあたりかもしれません。
こうした自らも大株主である創業経営者、オーナー経営者に対し、既存の企業を継承して経営する人々のことを、なかば揶揄的に「雇われ経営者」、「サラリーマン経営者」などと呼びます。
現在、日本の経営者の平均年齢は60歳を超えており、年々高齢化が進んでいるそうです。創業者一代で会社をたたむ意思があればいいのですが、家業として跡目を継ぐ肉親のいない中小企業経営者の方々などにとって、事業承継は大変悩ましい問題でしょう。ましてや上場企業ともなると、ゴーイングコンサーンが前提として織り込まれており、経営者が負う責任はより重いものになります。
『貞観政要』では、唐の太宗が「帝王の業、草創と守成といずれが難き」、すなわち、創業することとそれを維持することではどちらがより困難であるかを重臣に問うたという逸話が紹介されています。守成は創業と同様、時には創業以上に困難をともなうもの。事業承継もまた然りです。
自分の人生と会社の命運が一体化した創業経営者に比べると、雇われ経営者はどうしてもインパクトに欠けます。「サラリーマン経営者が日本企業をダメにする」という言説を目にすることもありますし、確かにその通りだと思うことも少なくありません。
しかしながら、問題視すべきは「サラリーマン経営者」ではなく、「サラリーマン的メンタリティの経営者」ではないでしょうか。