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上空での人々の不満をGogoが解決

機内インターネットサービスプロバイダの最大手Gogoが、より高速な衛星通信サービスへの移行を進めている。これで「機内Wi-Fiへの不満」が少しは収まるだろうか。

人々は何年も前から、機内Wi-Fiの質の悪さに強烈な不満を抱いている。そして、彼らの怒りの大半は、この分野で最大手のGogoに向けられていた。

だがまもなく、3万5000フィート上空で人々が怒りを爆発させることは減るかもしれない。Gogoがブロードバンド衛星通信サービスを開始し、帯域幅を拡大して広大な地域をカバーできるようにしたためだ。

「帯域幅は売上を意味する。帯域幅はカスタマーサービスの向上に直結している」と、Gogoのマイケル・スモール最高経営責任者(CEO)は、シカゴにある本社で行われたインタビューで述べた。「文字どおり、実にシンプルな話だ」

この新しいシステムが「2Ku」と名付けられた理由は、2つのアンテナアレイを利用してKuバンド帯で送受信を行うからだ。Gogoによれば、このシステムは機体からわずか17cmしか飛び出さないため、遅延が少ないという。

Gogoは米国時間11月12日、同社の創設者である「Jimmy Ray」の名を冠したボーイング737のテスト機にメディアを招待し、インディアナ周辺を2度飛行して2Kuのデモを行った。

ガジェットを手にした航空関連やテクノロジー関連の報道陣数十名がJimmy Rayに乗り込み、Netflix、Facetime、YouTube、Periscopeといったデータを大量に消費するサービスを、Gogoの新しいテクノロジーを使って一斉に試したのだ。

まるで、「ジャーナリストたちの群れが機内で大量のデータを使って、みんなでシステムを壊そうとしている」かのようだったと、航空旅行向けサービスを手がける新興企業Routehappyのデータ調査担当責任者、ジェイソン・ラビノビッツは語っている。

Gogoの新サービスは見事に期待に応え、YouTubeのHD動画はきれいに再生された。このテスト飛行中に見られた最大の問題は、ページの読み込み速度がやや遅く、多数のウェブページが読み込まれるまで少し間が空くように思えることだった。だが、読み込まれさえすれば、快適に動作する。

数百人がいる機内でも動作するか

Gogoは、このデュアルバンドのKuサービスを、700 Mbpsの最高速度を提供できるサービスとして宣伝している。同社のこれまでの最高速度は、地上施設を利用した「ATG4」テクノロジーの9.8 Mbpsだった。衛星通信を利用した技術が完成したことで、今後は100 Mbpsの速度が可能になる、とスモールCEOは言う。

だが、他に2つの大きな問題が残っている。まずは、ガジェットを持つ数百人の乗客がいる機内で、このシステムは本当にうまく動作するのだろうか。この点についてGogoは、2Kuで数十台のデバイスを使ったテスト飛行をさまざまな場所で数え切れないほど行ったが、帯域幅の問題は起こらなかったと強調している。

もうひとつの問題は、航空会社がどのように料金を請求するのかということだ。ファーストクラスの乗客でない限り、価格表に無料と掲載されることはまずないだろう。スモールCEOによれば、同社はまだ価格について話をしていないという。

メキシコのアエロメヒコ航空は、11月11日に規制当局から認可が下りたのを受け、数週間以内に、2Kuを搭載した初の飛行機を飛ばす予定だ。ヴァージンアトランティック航空もそれに続く。

また、デルタ航空はこのサービスを利用できる米国最大の航空会社となる予定で、2016年には同社の一部路線でWi-Fiサービスが高速化されるはずだ。スモールCEOによれば、8つの航空会社の550を超える飛行機で、2017年から2018年までの間に2Kuの導入が完了する予定だという。

2014年4月に発表されたこの新しいサービスは、航空業界に大きな影響を与えるだろう。

Gogoは機内Wi-Fiサービスを独占してきたが、ViaSatやパナソニック、Global Eagle Entertainmentなど複数のライバルから激しい挑戦を受けている。

帯域幅の拡大は、新たなビジネスチャンスのきっかけに

Gogoが誕生したのは2011年だが、その前身は、1990年代に機内電話を手がけていたAircellだ。

9月30日締めの第3四半期に、前年同期比で22%の増加となる1億2600万ドルの売上を記録したが、2900万ドルの純損失も計上している。

Gogoが抱える問題は、地上の携帯電話基地局を使っており、衛星通信ほどの接続速度が出ないという点だ。この能力不足のため、一部のフライトでは、40ドル程度の料金を取ることによって、ユーザーが利用できる帯域幅を確保せざるを得ない状況になっている。

衛星への移行は、Gogoが米国外にサービスを確実に広げることが期待できる唯一の手段でもある。だが、帯域幅の拡大は、ユーザーにとっても株主にとっても期待したペースで実現していない。Gogoの株価は、2015年に5%下落している。

Gogoと違って自前の衛星システムを運用しているViaSatは、この衛星システム事業を活用し、またGogoのユーザーが抱える不満を利用して、機内Wi-Fi市場に進出している。ViaSatはジェットブルー航空やユナイテッド航空の多くの便に採用されており、世界規模で事業を拡大中だ。

ViaSatのKaバンド帯のシステムは、(アマゾンが設立した)ジェットブルー航空では無料で提供されており、接続速度はGogoの新しいシステムを上回ることもある。

だが、Gogoは2Kuのために複数の衛星通信会社と契約を結んでいるため、世界中でViaSatよりはるかに広い地域をカバーできる。Gogoによれば、2Kuシステムは民間飛行ルートの98%をカバーできる予定だという。

ただし、米国とアジアを結ぶ多くの便が含まれる北極圏を通過するルートでは利用できない。

Gogoでは、帯域幅の拡大を、乗客による利用以外にも、さまざまなビジネスチャンスが生まれるきっかけと捉えている。たとえば、パイロットが飛行機のメンテナンス状況を監視できる高機能のツールなどだ。

スモールCEOは、20年以内にこのようなデータ伝送がGogoの売上のかなりの部分を占め、乗客のWi-Fi利用を上回ると予測している。

「接続する必要のあるものが何かあるとすれば、それは飛行機だ」とスモールCEOは語った。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Justin Bachman、翻訳:佐藤卓/ガリレオ、写真:Gogo)

Image courtesy of Gogo®

©2015 Bloomberg News

This article was produced in conjuction with IBM.