日本の最大の問題は「年功序列と終身雇用」

2015/11/16

未来を予測していたジョブズ

佐々木 テクノロジーに詳しい佐藤さんからすると、テクノロジーを見ていれば、次に何が起きるか、ほぼわかるんでしょうか?
佐藤 ほぼ当たると思います。
たとえばiPhoneの議論。スティーブ・ジョブズは何十年も前から、コンピュータは小型化して手の中に入っていく、ポケットの中に入るようになるのは当たり前で、原理的にそうなってるんだよという話をしていましたが、実際そうなりました。
iPhoneとかタブレットに近いものをつくってた人は20年前からいたんですよ。でも当時はタブレットってめちゃくちゃ重かったし、ディスプレイの価格が高すぎて売れなかった。30万円くらいしました。
それはお金、経済の領域で儲からなかったからですし、当時はまだ、コンピュータというものを人間が感情的に受け入れづらかったという意味で、2つの軸を失っていた。それで結果的に普及しなかったのかなと思うんです。
なので、この3軸がちょうどいいタイミングで、ピンポイントで行動するとうまくいく。たぶんスティーブ・ジョブズという人は、そういう動きを読む天才だったんじゃないかと思います。
iPhoneはジョブズの発明したテクノロジーというより、同じテクノロジーを理解していた人なら誰でもつくれたものです。ただしジョブズは未来がどうなるかを予測できていて、どのタイミングならiPhoneが人々に感情的に受け入れられて、どのタイミングで出せば儲かるかを読みながら発売したんでしょうね。
竹中 いや、すごく面白い。それは、経済学の観点から言うと、あえてよく使う言葉で言えばね、invention(インベンション)とinnovation(イノベーション)は違うという話があるんです。
インベンションというのは、どういうコンピュータがつくれるかという話。イノベーションというのは、それをどのように利用して、どのような料金体系をつくって、普及させていくかという話。これは成功すれば、また次のインベンションにつながる。経済と人間とテクノロジーというのは、まさにそういうことですよね。
佐藤 おっしゃるとおりだと思います。