VRはスマホの次のプラットフォームになれるのか

2015/11/15

2016年はVR元年

ゲーム業界では今、2016年を「VR元年」と位置付ける動きがある。2014年3月にフェイスブックが買収したオキュラスVRと、ソニーの両社が「2016年上半期に製品版を発売する」と発表したからだ。
しかし、VRのインパクトはゲームにとどまらない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、「動画の次は没入型3Dコンテンツの時代が必ず来る」と発言。さらに、2015年8月には、米「タイム」誌の表紙をオキュラスVR創業者のパーマー・ラッキー氏が飾るなど、VRへの注目度が世界中で高まっている。

VRの歴史

VRという概念、またVRを使った製品は決して新しいものではない。概念自体は70年以上前から存在し、具体的な研究は1960年代から進められてきた。
1968年には、VRを体験できるヘッドマウントディスプレイが登場し、1980年代には、VRという概念が徐々に世間に知られるようになった。
1990年頃からは「VRブーム」とも思える動きが巻き起こり、1992年にはアメリカの雑誌「コンピューターゲーミングワールド」が「VRは1994年までに誰もが使えるようになる」と予想した。
しかし、民間に普及はせず、その熱は冷めていった。実際、1995年に任天堂が売り出した、3Dゲーム機「バーチャルボーイ」が売れたのは77万台に過ぎなかった。

VRが再注目された理由

2010年頃から、急激にVRがという言葉が聞かれるようになった。
近年のVRの盛り上がりの火付け役は、間違いなくオキュラスVRだと言えるだろう。2011年に当時18歳だったパーマー・ラッキーがVRヘッドマウントディスプレイの試作品「CR1」を開発。その後、6つ目の試作品「RIft」のDIYキットを、「キックスターター」で25万ドルのクラウドファウンディングを試みたところ、目標をはるかに上回る240万ドルの調達に成功した。
その勢いはとまらず、2014年、フェイスブックに20億ドルで買収されたことでさらに注目度を上げた。

スマートフォンがVRを加速させた

2007年にアップルがiPhoneを発表してから、スマートフォンが全世界で広まったことも、近年のVR熱の高まりに寄与している要因の一つだ。
オキュラスVRがデベロッパー向けに配布した「DK2」にはサムスンのスマートフォンに使用されるディスプレイ部品が、サムスンのロゴが付いたままの状態で使用されていたことが大きな話題になった。

課題は山積み

各社の足踏みが徐々に揃ってきた状況であるが、VR普及にはまだまだ高い壁がある。
一番にあげられるのは、「酔い」の問題だ。
VRを体験しようとすると、ヘッドマウントディスプレイに視野を支配されるため、体験していると、吐き気がするというのは長年の問題だった。オキュラスVRが注目された理由の一つは、酔いの問題のブレークスルーだったが、それでもまだまだ発展途上だとする見方が大方を占める。
ほかにも、ケーブルなどハードの課題から、コンテンツのソフトの課題まで、解決すべきことは多い。

浮上する“モバイルVR”

手軽に体験できるVRコンテツとして、「モバイルVR」の広がりも見え始めている。
これは「Google Cardboard(グーグル・カードボード)」に代表されるように、スマートフォンを箱型デバイスに差し込んで、箱を覗くことでVRコンテンツを気軽に楽しめるというものだ。
日本ではSUUMOが、アメリカではニューヨーク・タイムズがグーグル・カードボードを配布し、VRコンテンツを公開したのは記憶に新しい。

VRは普及するのか

オキュラスを買収した、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは「VRはスマホの次のプラットフォームだ」と語る一方で、「まだまだ、長い目で見る必要がある」とVRの普及には、まだ時間を要することを認めている。
ザッカーバーグが引き合いに出すのはPCやスマートフォンだ。「2003年にブラックベリーのスマートフォンを買った人が果たしてどれだけいただろうか。しかし今、世界中の人々がスマートフォンを手にしている」。
VRは果たして、次なるプラットフォームになるのだろうか。
本連載では、VRの過去と現在に焦点を当て、未来を探っていく。