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人口減少社会に備えよ Part4

【小泉×玉塚】ワーク・ライフ・バランスは政治家に考えさせてはダメ

2015/11/12
人口減少が急速に進み、2100年には人口5000万人になると予測される日本。今年生まれる子どもが、平均寿命まで生きて2100年を迎えることを考えれば、自分の子ども世代のために、真剣に考えなければならない問題だ。
そこで今回、小泉進次郎衆議院議員とローソン玉塚元一社長が、政策面・ビジネス面から人口減少社会に対する処方箋を語り合った(全5回掲載)。第3回・第4回は小泉氏と玉塚氏の対談を掲載する。(司会は読売新聞東京本社 調査研究本部 主任研究員の榊原智子氏)
第1回:私が「第1子からの支援」を訴える理由
第2回:ローソンはなぜ「健康コンビニ」を目指すのか
第3回:安倍政権の「第3子支援」は何が問題なのか

ボディーブローのように効いてくる

榊原:次に玉塚さんにお聞きします。日本再建イニシアティブが出版した『人口蒸発「5000万人国家」』を読んで、真っ先に理事長の船橋(洋一)さんに連絡をしたそうですが、それはなぜですか。

玉塚:事業というのは、今週の話、来週の話、3カ月の決算、1年の決算、と短期の話をすることが多くて、3年、10年といった中長期の話と行ったり来たりしながら最適解を見いだすことの繰り返しなんです。

この本は、社会の根底にじわりと起こっていることを正確なデータで示して、その影響が市場に与える影響を示唆している。こうした認識を持って、短期と中期と長期に対してどういうアクションを取るべきかを考えることが私たちの仕事だ、と感銘を受けました。

そこで船橋さんに連絡し、激烈なディスカッションをして認識を共有することができました。人口問題について一緒に取り組んでいきましょうと。

榊原:市場の縮小や地域の変化を感じている人は、ビジネスの現場では多いと思いますが、いまいち経済界の反応が鈍い気がします。それよりも「わが社の来年の収益はどうだろう」といった目先のことを考えている。

玉塚さんの話にあった、ダイバーシティ(多様性)社会や女性の活用など、民間ビジネスだからこそできることに取り組んでほしいのですが、あまり広まっていませんね。

玉塚:それは時間軸の問題でしょう。今すぐ明日、あるいは来年起こる問題じゃないですから、つい目先の収益のほうが気になる。でもこれはじわっと、ボディーブローのように効いてくる問題です。

私たちは全国津々浦々、それこそ限界集落に近いところにも店舗を出しているので、お客さんの変化、地域の変化、売り上げの変化が日々情報として入ってきます。

短期的な決算のことも気になるけれど、10年、20年先を見据えたときに自分たちに跳ね返ってくることとして、しっかり向き合わないといけません。

これは個々の会社のリーダーシップの問題ですが、そう思い始める会社も増えてきたし、官民一体となって取り組まないといけないと思います。
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350項目の作業を仕分け

榊原:玉塚さんのお話の中にも、政府の方向性と一致するものがいくつもありました。そのうちの一つ、ワーク・ライフ・バランスについて聞かせてください。

長時間労働ではなく、私生活とのバランスを取って柔軟に働きたいという考え方が若い人を中心に増えていますが、企業の中年世代との成功体験イメージが違って、いまいち変化が鈍いと感じます。

そのあたり、リーダーだからこそできることや、ビジネスの現場でこうしたらいいのでは、ということをお聞かせください。

玉塚:ワーク・ライフ・バランスはすごく大事です。でも表面的に「仕事と私生活のバランスを」と持ち出すだけではダメなんです。私の考え方は「やるべき仕事をやれる環境にし、生産性を上げること」です。

たとえばローソンでは、スーパーバイザーが8店舗、9店舗を担当して見ている。彼らのワーク・ライフ・バランスを適切にするなら、まずやるべきことは、彼らがどんな仕事をしているかをすべて棚卸しすることです。

実際にやってみると350項目も出てきて。一つひとつ見て「これはやらなくてもいいだろう」「これは本部の仕事だろう」「これはデジタル化できるだろう」と仕分けして、生産性を上げていくんですね。

生産性を究極まで上げることで、結果としてメリハリのある仕事ができ、自分の時間、家族との時間も増える。本質的なことを本気でやることです。小泉さんが言ったように、日本全体の生産性を上げていかないといけない。

日本の企業は生産性が低いと言われます。これは、1つのセクターに卸や孫請けがあって、全社的に見ると内容が重なる業務を行っているからなんですね。一つひとつのオペレーションは生産的なのに、あまりに分散していて結果的に生産性が高くなくなってしまう。

日本人は本当に器用だから、もっとICTを活用したり持っている技術を組み合わせたりして日本全体の生産性を劇的に上げることは、今後絶対に必要です。減るものは減るんですから。

政策によっては民間の方が優れている

小泉:ワーク・ライフ・バランスなんて、政治家と官僚に考えさせちゃダメです。そもそも彼らにワーク・ライフ・バランスなんてないんだから。ワーク・ライフ・バランスをずっと気にしている政治家や官僚なんて嫌でしょう?(笑)。何があってもいつでも対応できるようにしておくのが彼らの仕事ですから。

政治家や官僚が考えるから実態から離れる。ワーク・ライフ・バランスがない人に考えさせるのではなく、ある人、あった方が望ましい人に考えてもらうほうがいいですね。政策によっては民間の方が優れているところがいっぱいあります。

榊原:その通りですね。玉塚さん、仕事を細分化して棚卸しすれば、生産性が上がると体感していますか。

玉塚:間違いないです。誤解を恐れずに言えば、私たちのフランチャイズビジネスでは、5年前、10年前までは、本部はお店をつくってマーケティングをして、お店のことは加盟店さんが頑張ってくださいという感じでした。

でも、今ではそれが立ち行かなくなっている。トヨタ自動車が、ネジの回し方一つ、塗料の塗り方一つまでチェックしているように、私たちも一つひとつのお店のオペレーションにまで踏み込んでいかなければならない。チェーン全体として生産性を上げていくことです。

榊原:生産性の話にしても、ダイバーシティの話にしても、小泉さんが最初に言った「発想の転換」ですね。

小泉:発想の転換ができるかどうかは、すべてに言えることです。今はまさに、人口の問題も少子化の問題も、これまでの常識を疑ってみるいいタイミングです。
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(構成:合楽仁美、撮影:福田俊介)

*続きは明日掲載します。

*本稿は10月5日に開催された日本再建イニシアティブ(RJIF)主催のセミナー「『5000万人国家』の衝撃!人口減少がもたらす社会とビジネスへのインパクト」の内容を再編集したものです。