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メモ・アプリを手がけるエバーノートは多くの有力なIT企業が集まるグループ「ユニコーン」に仲間入りし、その先駆け的存在だったにもかかわらず、3年後の現在では収益面で進展が見られず、方針転換やコスト削減に苦心している。前編に引き続き後編では、今後彼らの取るべき対策について検証する。

カンファレンス中止は資金繰りに苦しむ兆候?

複数の情報筋によれば、売上増加の取り組みを強化する一方で、エバーノートは支出の引き締めも強めつつあるという。
最初の兆候は従業員の解雇だったが、給料以外の面でのコスト削減の取り組みも目につくようになっている。

エバーノートはこれまで、全社員を対象に2週間ごとにハウスクリーニングサービスを提供していたが、いまでは廃止されている。

ある元社員によれば、以前はほとんどの社員が3週間の国外オフィスでの勤務を簡単に申請でき、その費用は会社が全額負担していたが、今では管理が厳しくなっているという。

1カ月分の電気自動車充電手当の新規申請も一時停止されている。一部のオフィスでは、特別仕様のデリバリーサービスを利用していた社食が、複数のケータリング業者を組み合わせたものに格下げされたという。

だがおそらく、コスト削減という点で最も効果が大きいのは、毎年開かれている開発者向けカンファレンスを中止することだろう。

「エバーノート・カンファレンス」と呼ばれるカンファレンスは、過去4年にわたってサンフランシスコで開催されてきた。昨年のカンファレンスには、人気テレビ番組の司会者や、リンクトイン共同創業者のリード・ホフマン氏といった有名人が登場するという派手なイベントだ。

「開発者向けカンファレンスの中止は、たいていの場合、資金繰りに苦しんでいる兆候です」とベテランのIT起業家でベンチャー投資家でもあるジェイソン・レムキン氏は言う。「必ずしもその会社が破綻しそうだというわけではありませんが、たいていはまずそうした行動をとります」。

エバーノートはどうやら、開発者向けに提供しているプラットフォームの担当チームを縮小しているようだ。最近のレイオフ対象となった社員のなかには、開発者向け広報部門の責任者だったクリス・トラガノス氏と、そのチームの複数のメンバーも含まれていた。

API提供を打ち切るのではという憶測もある。これに対してエバーノートは、まだ提供していると述べている。今後数週間でプラットフォームの統合が一層強化される可能性があるという説もある。

コスト削減効果が大きいとされる開発者向けカンファレンスについて、エバーノートは「今年はベイエリアで開催するつもりはない」と述べた。その理由として、ユーザーの75%が米国以外に住んでいるからだと説明している。確かに、ベイエリアでのカンファレンスに代わり、エバーノートは最近、韓国での1500人規模のイベントをはじめ、各地の都市で大規模なイベントを開催している。

そうした諸々の変化の結果、エバーノートを離れる社員も出ていると、複数の内部関係者は語っている。ある元社員によれば、ウーバーやツイッター、ドロップボックスといった企業が、有能な人材を次々に引き抜いているという。

ある内部関係者によれば、カリフォルニア州レッドウッドシティのエバーノート本社では、とあるフロアが「ゴーストタウン」のようになっているとのことだ。

「かなりの数の社員が退職しましたが、それは必ずしも、不満だったからとか、不幸だったからではありません。新しい社風を築こうとしちえるエバーノートが自分に合っているかどうかについて、それぞれが判断を下しているだけです」

新CEOで社員の士気が高まる

数々の不安な兆候はあるものの、エバーノートが問題解決に向けて積極的に動いているのは心強い事実だと、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズのパートナー、バイロン・ディーター氏は述べている。

「本気で偉大な会社をつくり、大きな理想を実現しようとするなら、状況が思わしくないときには、1歩下がってみる必要があります。そのあとで、さらに2歩進む努力をすればいいのです」とディーター氏は言う。ディーター氏の会社は、box(ボックス)などのエバーノートの競合企業に投資している。

「私が思うに、エバーノートが今リストラに取り組んでいるのは、将来的に自社の運命をきちんとコントロールできるようにするためではないでしょうか」とディーター氏は言い添えた。

レムキン氏もそれに同意し、新しいCEOが会社に新たなエネルギーをもたらすケースも多いと指摘する。「新しいCEOが就任すると、会社が息を吹き返すこともめずらしくありません。特に、新CEOが優れた経営チームを迎え入れられるなら、効果は大きいでしょう。(オニール氏は)膨大な顧客基盤と、一流のブランド力を持っています」。

ある元社員によれば、エバーノートのチームは、7月のオニール氏の就任に士気を高めていたという。「オニール氏はいくつかの賢明な決断を下していると思います。オフィスにいるほとんどの人は、大きな痛みを伴う行動であっても、彼には良い計画があると考えているでしょう」とその人物は語っている。エバーノートは、まだ窮地に陥っているわけではない。

ユニコーンと評価額にふさわしい企業とは別

まだ大規模なユーザー基盤を維持しているし、たいていのサブスクリプション方式のソフトウェア企業と同じく、一部の投資を整理縮小すれば、キャッシュフローを改善させることもできるだろう。

だが、評価額10億ドルの「ユニコーン」企業になることと、その評価額に真にふさわしい企業になることは、全く別の話だ。そしてエバーノートは、栄光の「ユニコーン」の座から急速に遠ざかりつつあるのかもしれない。

「会社に根本的な欠陥があるわけではありません。ただ、期待どおりに機能していないだけです」とディーター氏は言う。「エバーノートには、まだ数億ドルの価値はあるものと考えられます。ただ、現時点ではおそらく、数十億ドルの価値はないでしょう」。

今回取材したベンチャーキャピタルのなかには、今後12~18カ月のうちに大幅な改善が見られなければ、エバーノートが身売りをすることもあり得ると予想するところもあった。

だがおそらく、真に手痛いのは経営面のダメージではないだろう。シリコンバレーのクールな会社としての勢いを失うのに伴って、有能な人材の採用や、将来に向けた提携が難しくなっていることこそ、エバーノートにとって最大のダメージかもしれない。

元社員の1人は次のように語っている。「とても残念なことです。かつてのエバーノートは、誰もが行きたいと願う会社でしたから。まさに最先端の仕事ができる、一流の会社でした。その魅力が徐々に薄れてしまったのです」。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Eugene Kim、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:三井公一/アフロ)

写真は、前CEOのフィル・リービン氏来日当時のものであり、本記事と直接関係するものではありません。

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This article was produced in conjuction with IBM.