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エバーノートは多くの有力なIT企業が集まるグループ「ユニコーン」に仲間入りし、その先駆け的存在だったにもかかわらず、3年後の現在では収益面で進展が見られず、方針転換やコスト削減に苦心している。その背景を元社員らへの取材から、2回にわたってリポートする。

成功しているIT企業グループに仲間入りしたが、収益が上がらず苦境に陥る

メモ・アプリを手がけるエバーノートは2012年、「ユニコーン企業」と呼ばれる評価額10億ドル以上の非上場IT企業からなるグループに仲間入りした。その年、エバーノートの登録ユーザーは3000万人を超えた。調達資金の総額は2億7000万ドルにのぼり、近い将来、株式公開に踏み切る有力候補と目されていた。

それから3年が経った今、情勢は一変している。

2015年、エバーノートの登録ユーザーは1億5000万人に達した。にもかかわらず、収益面ではなかなか進展が見られず、同社は方針転換やコスト削減に取り組んでいる。これは、エバーノートの現役社員と元社員6名以上から話を聞いたビジネス・インサイダーの取材で明らかになったことだ。

エバーノートは、過去9カ月で人員のおよそ18%を解雇している。9月30日には、10カ所にある世界拠点のうち3カ所を閉鎖すると発表した。今年7月には、長らくCEOを務めたフィル・リービン氏に代わり、グーグルの元幹部であるクリス・オニール氏がCEOに就任した。

内情に詳しい情報筋は、ビジネス・インサイダーの取材に対して次のように語った。「前途は厳しいでしょう。エバーノートは株式公開を狙っていますが、その目的達成のためには、いまや収益面に力を注ぎ、金になるものを徹底的に優先させなければならなくなっています」。

エバーノートは、どの角度から見るかによって、沈みかけた船にも、通常の移行サイクルのさなかにある成熟途中の会社にも見える。だが、我々が話を聞いたほとんどの人のあいだでは、同社が猛烈な成長の勢いを活かせず、膨大なユーザー基盤から十分な収益を得られていないという点で意見が一致しているようだ。そしてエバーノートは今、病んだユニコーンの初期兆候を見せはじめている。

経営課題をめぐる現実を、冷静に判断できるかどうか。それ次第で、ひときわ熱いセンセーションを巻き起こしたIT企業でさえ、脱線してしまう可能性があるのだ。

「期待はずれ」の新製品を量産

エバーノートの複数の元社員は、焦点の欠如が同社の成長を妨げたと考えている。中核となるメモ製品や、無料ユーザーの有料サービスへの移行に焦点を絞るのではなく、ニュースの見出しになるくらいしかとりえのない多くの新製品や新機能のリリースに時間を費やしていた、と元社員らは語っている。

たとえば、2014年はじめに、ブログサイト「テッククランチ」の元ライターが、エバーノートの問題だらけの製品をこきおろした痛烈なブログ記事を公開した。

リービン氏はこの問題に迅速に対処した。そのライターに名指しで訴えかけ、2014年は「品質」改善に重点を置くと社員全員参加のミーティングで誓ったのだ。

だがその6カ月後には、エバーノートは新製品の量産に逆戻りしていた。そして、そうした新製品の多くは期待はずれのものだった。

「まちがったことを優先しているという雰囲気がありました」と元社員は語っている。「その動機が、マスコミを常に賑わせることにしかないのは明らかでした。成長を最適化し、改善する方法をまったく知らなかったのです」。

この元社員によれば、エバーノートには、今年になるまで、同規模の会社にあるようなしっかりした正式な市場調査チームや有用性評価チームがなかったという。

別の情報提供者によれば、同社では2014年になるまで、A/Bテストが必ずしも重視されていなかったという。A/Bテストとは、同じ製品の2種類のバージョンを市場でテストするという、ウェブ企業が用いる標準的なテクニックだ。

そうして生まれたバグだらけで品質の劣る製品は、ユーザーからの低評価や厳しい批判を招いた。エバーノートが2012年に買収した手書きアプリ「ペンアルティメット」が2014年に最初の更新版を公開した際には、多くの苦情が寄せられた。その結果、同社は謝罪を表明し、1週間も経たないうちに別のアップデートを公開することを余儀なくされた。

写真にキャプションやマークアップを追加できる「スキッチ」アプリは、アップルのアップストアの格付けで星3つ(5点満点中)にとどまっている。また、2014年にリリースされた新しいメッセージング機能「ワークチャット」の公式フォーラムには、ネガティブな感想が数多く寄せられている。

レシピや料理写真を共有できるスタンドアロン・アプリ「エバーノートフード」は、2015年9月にサポートが完全に打ち切られた。「エバーノートハロー」や「エバーノートピーク」といったその他の実験的な製品も、同様の道をたどった。

「言ってみれば、新しい光りものに飛びついては、次にすることを話しているだけ、という状況でした」と別の元社員は語っている。「明確な優先順位がありませんでした。そうした体制が、まったく存在していなかったのです」。

とはいえ、別の元社員によれば、この「手当たり次第」的なアプローチは、実際には見た目ほどでたらめではなかったという。

「どんなことも、何らかの意図があって行われていました」と、その元社員は言う。たとえば、新興の人気メッセージングツール「スラック」をあからさまに真似たとして批判されたメッセージング機能は、より多くのユーザーを引きつけ、有料サービス利用者を増やそうと考案されたものだった。

また、打ち切られた製品の要素のなかには、エバーノートフードで使われていた構造化データテクノロジーのように、のちにエバーノートの主力製品に組み込まれたものもある。

無料ユーザーが事業全体の負担に

エバーノートはもともと、「フリーミアム」モデルに則ってユーザーを急速に増やしてきた。フリーミアム・モデルとは、無料ユーザーがいずれ有料サービスに移行してくれることを期待して、製品を無料で提供するというビジネスモデルだ。

問題は、無料ユーザーのほとんどが有料サービスに移行しておらず、エバーノートの事業全体にとって大きな負担となっていることだ。テッククランチによれば、2014年のエバーノートの売上は3600万ドル前後だった。だが、売上は増加しているものの、その数字はまだ社内の目標には届いていないという。

エバーノートは最近、新たな価格帯の導入に着手した。その狙いは、無料ユーザーがエバーノートに金を落とすための選択肢を増やすことにある。

この動きはあまりにも遅すぎたと、エバーノートに近い一部の人は指摘している。行き当たりばったりの新製品の実験に時間をかけすぎ、収益化の取り組みに磨きをかけてこなかった、というのが彼らの見方だ。

エバーノートの広報担当者によれば、現在の有料ユーザー数は「数百万人」規模であり、同社製品のビジネス版を利用している企業数は2万社だという。

また、初めて有料サービスを利用したユーザーの数は、前年同期比で40%増加したという。だが、同社が非上場企業であり、財務状況を公開していないことから、具体的な売上の数字については明らかにされなかった。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Eugene Kim、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Erik Khalitov/iStock)

※ 後編は明日掲載します。

Copyright© 2015 Business Insider Inc.

This article was produced in conjuction with IBM.