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不動産活用の革命児たち フィル・カンパニー【第3回】

「空中店舗」から広がる地域活性。土地活用の先に目指す未来とは

2015/11/05
「駐車場+空中店舗」という新しいビジネスモデルで不動産業界に風穴を開けたフィル・カンパニー。「倒産寸前だった」という創業期のビジネスモデルから軌道に乗るまで、そして経営トップ交代の理由について社長の能美裕一氏と、創業者として引き続き代表取締役にいる高橋伸彰氏の対談を後半をお届けする。
第1回:街に再び光を。業界経験ゼロで挑む「駐車場+空中店舗」の土地活用
第2回:「訳あり土地」を収益化。地主の心をつかんだ異端経営(インタビュー前編)

シェアハウスなら固定資産税が免除になる自治体も

――インタビュー前編では、「オーナーの資金回収に失敗したことはない」とのお話ですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

能美:現在では、新たな土地活用について、WEB上からの問い合わせや、金融機関、弁護士、税理士などの外部パートナー機関からもどんどん相談が寄せられるようになりました。

失敗を避けられる理由は、徹底的な事前マーケティングです。1つの物件に対して、1週間程度じっくり時間をかけて周辺の状況を含め、さまざまな角度で検討します。ベースにあるのは2つ。「フィル・カンパニーがやるからには絶対成功しなければならない」「フィル・カンパニーがやるからには、面白い企画でなければならない」という心構えです。

実際の例をもとにお話しすると、都内某区のオフィス街のコインパーキングで相談を受けたことがありました。

物件の周囲にコインパーキングは少なく、しっかり利益を出している。しかも競合となるコインパーキングの急激な増加も考えづらかったため、駐車場を残す方針はほぼ即決でした。ただし、最寄り駅徒歩8分と駅からは少し離れるのでオフィスとしては魅力が低い。

われわれのテナントは大きく分けると「商業系」と「住宅系」に分類ができます。商業系の方がテナント賃料は高いのですが、一般的に「住宅系」の使用だと固定資産税や都市計画税が減免されるというメリットもある。

一方で、区によってさまざまですがその区では「空中店舗」は高床式の建物という扱いになり、「2階と3階の合計面積の半分を超える部分が住居」なら、固定資産税・都市計画税の減免が全体に適用される。そこで、3階は2階部分より少しだけ面積を広く作り、いま人気のシェアハウスとして活用することにしたのです。

マニアックな知識ですよね。しかし、フィル・カンパニーの社員であれば、みな当然のように知っていることです。1階駐車場・2階商業・3階シェアハウスといった具合に、総合的にみてハイパフォーマンスで面白い事業企画が一案件ごとにオリジナルにでき上がっていくんです。

高橋:ちなみに、われわれもフィル・パークに入居しています。不思議なことに僕たちが入っているオフィスには「ここ、いいですね」と入居希望者が来るんですよ。

われわれもテナントが最優先なので「どうぞどうぞ」と譲って、また別のフィル・パークへと移動していく。第1号の設立以来、ずっとそうやって本社が転々としている会社なんです。
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フィル・バーク京都三条 テナントがシェアハウスという物件も多い。

フィル・バーク京都三条
テナントがシェアハウスという物件も多い。

即時融資OKの連絡が来ることも普通に

――フィル・カンパニーは、建設スピードも速いと聞きました。どのような工夫があったのですか?

高橋:建設スピードは速い方が、オーナーにもメリットが大きいので、フローを追求して効率的に行えるように考えた結果です。“業界慣習”には、沿っていないことも多々あります。

“業界慣習”って、ずっとその業界内にいると当たり前のことでも、外部の目から見ると「それっておかしくないか?」とシンプルに疑問に思うものって、あるじゃないですか。

不動産・建築業界で言えば、「測量・地質調査には時間がかかって当たり前」「土地活用は税金対策が主流で、投資回収にはこだわっていない提案が多い」「利回りをはっきり公表しない」「どの会社に依頼をしても、パターン化された共通の提案しか返ってこない」とか。

他にも、いわゆる“下請け泣かせ”と言われるような長期の支払いサイトルールがあるとか、テナント誘致保証だって、絶対にあったほうがいいサービスなのに、どこもやろうとしていない。

われわれが業界シロウトだったからこそ持てた視点だと思います。その「なんか変」と感じることひとつひとつに、ビジネスとしてあるべき姿にとことんこだわった結果です。

能美:われわれのところに相談に来る土地オーナーには、必要に応じて税理士や金融機関の紹介も行っています。金融機関を紹介するときは全額融資の依頼に行くことがほとんどですが、「フィル・カンパニーの案件なら」と即時融資OKの連絡が来ることも普通になりました。

「そんなに早く結果が来るとは……!」とよく驚かれます。それぐらい他社の提案内容が横並びの中、フィル・カンパニーの企画は一線を画しているようです。

――軌道に乗り出したあとは、同業他社からの参入はなかったのですか?

高橋:把握しているだけでは大手デベロッパーが2社ほど、同様のサービスに着手していましたが、すぐにやめてしまったようです。やはり大規模な案件を手掛けるデベロッパーが、このニッチな世界にいきなりやってきて同様のサービスをやろうとしても、われわれが蓄えてきたノウハウには勝てないんです。

逆に言えば、われわれも数千坪・数十階建てのビル・マンション建設に対してはノウハウがないので手は出さない。駐車場運営会社やハウスメーカーとも多く連携しており、競合するより共存しているパートナーの方が多いです。

もともと、フィル・カンパニーのフィル(Phil)は「共存共栄」の願いを込めているので、その実現に向けて突き進んでいます。ビジネスで関わる人すべてがハッピーになるビジネスを追求しています。

本当にやりたいのは地域活性

――フィル・カンパニーが目指す未来は?

高橋:現在は、ビジネスモデルを分かりやすくするために、「土地活用を中心とした資産活用」を前面に押し出していますが、僕らが本当にやりたいのは、そこからはじまる地域活性です。

駐車場が増えた街並みって、どこか寂しいじゃないですか。夜道も暗いと治安面にも不安が出てくる。そこに僕らの空中店舗ができることにより、夜道が明るくなり人通りが増え、さらにそれが呼び水となって、新しい店舗が周辺にできてくる。そういう流れが作れると一番うれしいですよね。

実際、そういう事例が増えているんです。飯田橋や原宿、横浜関内などの物件周辺は、僕らが進出するまで、エリアはいいのにがらんとしていて誰にも見向きもされなかった。そのエリアが徐々に活気づいていくのを見るのはすごく鼻が高いです。

相談時には、ものすごく困っていた土地オーナーたちも、うまく資金が回りまた次の投資先を探す好循環のサイクルに入っています。持っている土地だけではなく「次はこの土地買っていい?」と相談も寄せられるほどです。

10年をかけて、ようやくビジネスが軌道には乗ってきました。

でも、全国にはまだ駐車場が12万カ所以上あるといわれている。僕らが達成しているのは、その0.1パーセントにも満たない。ビジネスサイクルの成長期にようやく差し掛かったところです。

もっと業務を仕組み化して効率をあげたい。もっと知名度もあげていきたい。加速度的に成長していくには、僕が経営トップにいるよりも、よりバランス感覚に優れている能美がトップに立つ方がいい。そういう思いがあって、この10月に経営トップを交代しました。

能美:高橋の情熱と人を引きつける力は、何物にも替えがたい。でも高橋が言う通り、経営者として全体の数字を見ながらかじ取りをするのは私の方が得意です。それであれば、お互いの得意分野を最大限に発揮していこうじゃないかという、われわれの覚悟の表明です。

高橋:最近では、高級住宅街の土地も相談が来るんですよ。僕らから見るともう宝の山だらけ。日本全国にそんな土地がいっぱいあるんです。考えるだけで興奮してしまいますね。

能美:私も高橋もずっとベンチャーで新規事業をやってきた人間なので、まだ誰もやったことがない新しい何かにチャレンジしているときが一番楽しいんですよ。

「フィル・カンパニーがやるからには楽しい企画を」というのも根底にあります。そういう期待値を超えるサービスを提供し続けていきたいですね。

能美裕一(写真右) 代表取締役社長。1974年生まれ。自動車流通ベンチャーに入社後、株式上場を経験。WEBを活用した新規事業部門の中心メンバーとして東証二部上場時の業績に大きく貢献。株式会社リラク常務取締役としてリラクゼーション店舗の第一号店立ち上げからチェーン展開まで急成長を成し遂げた後、フィル・カンパニーに参画。現在のビジネスモデルを確立し、徹底したユーザーファーストのもと事業の拡大を行っている。2009年取締役、2014年フィル・コンストラクション取締役(現任)、2015年代表取締役社長(現任)。国際規格ISO9001(品質マネジメントシステム)を品質管理責任者として取得し経営に活かした経験も持つ。 高橋伸彰(写真左) 代表取締役。1977年生まれ。オリックス株式会社、会計事務所などを経て、2005年6月にフィル・カンパニーを創業。2014年フィル・コンストラクション取締役(現任)、2015年代表取締役(現任)。

能美裕一(写真右)
代表取締役社長。1974年生まれ。自動車流通ベンチャーに入社後、株式上場を経験。WEBを活用した新規事業部門の中心メンバーとして東証二部上場時の業績に大きく貢献。株式会社リラク常務取締役としてリラクゼーション店舗の第一号店立ち上げからチェーン展開まで急成長を成し遂げた後、フィル・カンパニーに参画。現在のビジネスモデルを確立し、徹底したユーザーファーストのもと事業の拡大を行っている。2009年取締役、2014年フィル・コンストラクション取締役(現任)、2015年代表取締役社長(現任)。国際規格ISO9001(品質マネジメントシステム)を品質管理責任者として取得し経営に活かした経験も持つ。
高橋伸彰(写真左)
代表取締役。1977年生まれ。オリックス株式会社、会計事務所などを経て、2005年6月にフィル・カンパニーを創業。2014年フィル・コンストラクション取締役(現任)、2015年代表取締役(現任)。

(聞き手:久川 桃子 構成:玉寄 麻衣 撮影:福田俊介)

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。