ヤマト運輸を苦しめる、アマゾンの“仁義なき買い叩き”

2015/11/3

アマゾンに潜入取材した男

アマゾンにとって、最大の強みになっているのが、「物流」である。アマゾン自身、倉庫を保有し在庫を効率的に管理するとともに、配送分野では、ヤマト運輸とのタッグで配送を行っている。
その配送網は鉄壁なのか。弱点はないのか──その問いを投げかけるのに、最適な人物がジャーナリストの横田増生氏だ。元・物流業界紙編集長である横田氏は、潜入取材のため、アマゾンの物流センターの作業員として半年間働き、2005年に『 アマゾン・ドット・コムの光と影』(文庫版は『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』)を上梓した。
そして今回は、ヤマト運輸の現場で働き、宅配ビジネスの最前線を取材、2015年9月に出版した『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』が話題になっている。
低収益、低賃金に苦しむ宅配業界は、今後もアマゾンの宅配網を支えることはできるのか。ヤマト運輸とアマゾンの蜜月は続くのか。アマゾンの抱えるリスクとは何か。「アマゾンの物流戦略」と「アマゾンのカルチャー」いう切り口から、横田氏に話を聞いた(全2回)。

アマゾンとの値段交渉はとにかく厳しい

──最初に、なぜ新刊の副題が「ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン」なのかを教えてください。「ヤマトVS佐川VS日本郵便」は、同じ宅配市場で競争する企業なので、「VS」となるのは理解できるのですが、アマゾンは配送業者ではなく、配送業者に仕事を頼む荷主です。立場の異なるアマゾンが「VS」の構図となるのはなぜですか。
横田 宅配業界をひっかきまわすトリックスターという意味合いで、アマゾンをタイトルに入れました。
アマゾンの物流量はダントツ。日本で一番宅配の物流が多い企業です。その一方で、アマゾン向けの荷物は、おそらく日本で一番値段が安い。ですから、配送業者にとって、アマゾンは最大の顧客であると同時に、アマゾンの荷物を引き受けるのは、とってもしんどいことなんです。