経営学は本当にビジネスの役に立つのか。読み解くカギは「理論と持論」
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ブルーオーシャンが向いている市場と向いていない市場ということですが、個人的にはバーニーの1986の分類は現代の複雑な競争環境を分類するには少しシンプルすぎるかなと思っています。もしそこまで踏み込んでこの考え方を応用するなら、よりその市場そのものの具体的な実体に踏み込んで考えないと危険かと。
これは入山先生の「経営学はビジネスに役に立つのか」に対する回答にも関連してくるかと思います。わたしの率直な答えは、「それはそれを理解して用いる人間による」というものです。
入山先生のおっしゃられるように、研究論文を読みこめば読み込むほど、あまりにも限定詞が多すぎて、とても経営学の理論に基づいて実務家にアドバイスしようとは思いません。少なくとも、経営理論に基づいて、「こうするべきだ」などと口が裂けても言えません。従ってわたしとしては、「少なくとも理論上はこうすべき」という発言もしないようにしています。
しかし、であるから経営学者が口を出さないというのもまた全くそれでは存在価値につながらないと思うのです。入山先生のおっしゃるように、こういう傾向がある。であったり、こういう事例がある。こういう関連性があるなど、事実とその分析に関する幅広い知見を通じて、経営者に貢献できるところはあるはずです。
また、そうした事実に基づいた発言は、わたしは全く怖くありません。それは実際のビジネスに関する事実であり、それは実務家に関して少なくとも直接の関係を持った可能性のある事実に基づいた指摘であり、研究者という中立的な分析家の持つ意見であるからです。
そして、もしそうした価値さえ提供できない研究が経営学に存在するのであれば、その研究には存在価値がないのではないかとすら思うのです。仕事の評価は客が決める。経営学が経営の実践の役に立つかどうかは、経営を実践している経営者に聞いてみるのが早い。『ブルーオーシャン戦略』は明らかに役に立つ(という評価が定着した本のひとつ)。だからといって、経営学のすべてが役に立つわけでもない。役に立たない(と多くの経営実務家が評価する)ものも山ほどある。しかもそれは程度問題。二分できるものではない。多くの人からすごく役に立つと評価されるものから、一部の人が評価するもの、まるで評価されないものまでさまざま。経営学に限らず、どんな仕事の分野も玉石混淆。
実際の経営をよく理解している経営学者の話は、経営に参考になる。経営を理解していない経営学者の話は、ゴルフを見たこともない人のゴルフ講釈と同じ。