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部屋を借りず、トラックで暮らすグーグル新入社員

23歳のブランドンさんは5月中旬、米国マサチューセッツ州からカリフォルニア州のベイエリアに向かった。グーグルでソフトウェア・エンジニアとして働くためだ。サンフランシスコのアパートは法外に高く、ブランドンさんは部屋を借りることをあきらめた。その代わりに選択したのは、広さ約12平方メートルのトラックで暮らすことだった。

このアイデアが頭に浮かんだのは2014年夏。グーグルでインターンとして働いていたときだ。最も安い社宅を用意してもらったが、2ベッドルームの部屋で4人が共同生活して、1泊約65ドル(つまり、家賃は1カ月約2000ドル)だったという。

ブランドンさんは、社内でのプライバシーを確保するため、名字と写真の非公開を条件に、取材に応えてくれた。

「とてつもなく高い家賃を払いながら、家にはほとんどいなかった」とブランドンさんは振り返る。「このような無駄遣いは、どうしたって正当化できない。どぶに捨てているようなものだ。何かに投資しているわけでもなければ、将来のために資産を増やしているわけでもない。本当に受け入れ難い状況だった」

固定費はトラックの保険料月額121ドルのみ

グーグルへの就職が決まり、サンフランシスコに戻ることになったブランドンさんは、すぐさまトラックで暮らす準備を始めた。そして大学を卒業すると、長さ5メートル弱、走行距離25万キロ超の2006年式フォードを購入した。

ブランドンさんにとっては1万ドルの高い買い物だったが、入社時の契約金で全額支払った。ブランドンさんは、「Thoughts from Inside the Box(箱の中で考えたこと)」と名付けた自身のブログで、リアルタイムの「貯蓄時計」を公開している。そこでは、10月21日が「損益分岐点」と予測されていた。

固定費は、トラックの保険料である月額121ドルのみだ。電気は使用していないし、携帯電話料金はグーグルが負担している。

ブランドンさんはブログで、「コンセントにつなぐ必要があるものは何も持っていない」と説明している。「トラックの天井にいくつかライトが付いているし、動きを感知するバッテリー式のランプもある。小さなバッテリーパックを数日おきに職場で充電し、ヘッドフォンと携帯電話の充電に使っている。ノートパソコンは仕事中に充電しておけば、一晩は使用できる」

最低限のものしか置かれていないがらんとした空間だと、ブランドンさんは説明する。「主な家具は、ベッドとたんす。服を掛けるためのコートラックもつくった。それと、ぬいぐるみがいくつか。ほとんど何もない」

食事とシャワーはすべて社内で済ませている。朝、昼、夜と社食を利用し、毎朝、会社のジムでシャワーを浴びる。

経費がほとんど掛からないということは、相当な金額を節約できるということだ。「可処分所得の90%前後を貯蓄に回し、学生ローンの返済や投資に使いたい」とブランドンさんは話す。

学生ローンを6カ月で完済予定

ブランドンさんは、2万2434ドル相当の学生ローンを抱えて大学を卒業した。その金額は、4カ月で1万6449ドルまで減っている。「控えめに見積もっても(そして、ボーナスを計算に入れると)、6カ月後には完済していると思う。10年ローンが普通で、20年ローンなどもあるが、それらに比べると何千ドルもの節約になる」

さらに、家賃を支払う必要がないおかげで、おいしいレストランで食事するなど、サンフランシスコを満喫できている。

恩恵はほかにもある。トラックを泊めている場所から職場までの通勤は、歩いて数秒しかかからない。サンフランシスコの交通渋滞に巻き込まれ、数時間を無駄に過ごすこともない。

ある夜、映画を見て遅く帰宅した際、警備員と軽くもめたことがあったが、それを除けば、トラックでの生活は万事順調だ。映画を見た夜は、10人ほどの警備員に囲まれた。しかし、社員証を見せ、トラックを動かそうかと提案すると、警備員たちは夜遅くに邪魔したことを謝罪し、「素敵な住まいだね」と褒めてくれたそうだ。グーグルにコメントを求めたが、回答はなかった。

安さの代償は狭さ。そして、暖房やエアコン、トイレといった文明の利器だ。それでもブランドンさんは、約12平方メートルという空間は、これまでに過ごしたどのベッドルームよりも広いし、トラックにはほとんど寝に帰るだけだから、と満足そうだ。

夢は、世界中を旅すること

トラック暮らしが与えてくれるのは、経済的な自由だけではない。快適とは無縁の場所に身を置くことで、貴重な人生経験を積むことができている。ブランドンさんの夢は、世界中を旅することだ。

「世界中を旅することになったら、いつもと違う生活環境に慣れなければならない。トラック暮らしはその手始めとしてうってつけだ」とブランドンさんはブログに書いている。「それに、このような挑戦ができるのは今しかない。まだ若く、自由に動くことができるし、自分の決断が周りの誰かに影響を及ぼすのではないかと心配する必要もない」

ブランドンさんはトラック暮らしをいつまで続けるか考えておらず、期限も設定していない。「5カ月が経過したところだが、近いうちに何かの理由でやめることになるとは思っていない」

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Kathleen Elkins、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:macroworld/iStock)

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This article was produced in conjuction with Daiwa House.