アマゾンはヨドバシカメラに勝てるのか?

2015/10/31
Eコマースでの存在感を拡大するアマゾンが、注力する重要分野のひとつが家電だ。しかし、家電量販店のメッカである日本では、ヨドバシカメラ、ビックカメラなど強力なライバルがひしめいている。アマゾンはECにおいて家電量販店を凌駕できるか。ロンジンの椎名則夫アナリストが分析する。
読者に伝えたい3つのポイント
・家電販売はEC化の先行分野。今後のEC化のペースは鈍る可能性もある。
・アマゾンは白物家電の自販化と新興メーカーの取扱いが今後のカギになるだろう。
・家電量販店はショールーミング化から逃れられず、中長期的には集約が続く。

家電ECがブルーオーシャンである理由

今回は家電販売のEC化がテーマであるが、肝心のアマゾンの開示データはない。
しかし、筆者が各種資料を見渡して見ると、アマゾンにとって家電販売は書籍・ソフトウェアについで売リ上げのウエイトが大きいと推測できる。戦略的に重要な事業なのだ。
家電はどちらかと言えば、ロングテールではなく定番商品と言える。品目数は一見多いが、商品群のグルーピングが容易だ。メーカー数が限られ新規参入はあまり多くない。この手の商品がアマゾンの得意分野であることは 前回述べたとおりである。
最初に、家電量販店の数字をおさらいしておこう。最新の決算の例としてビックカメラの2015年8月期の連結決算をひもといてみる。
ビックカメラは、売上高7954億円に対し売上総利益が2096億円、営業利益が188億円、経常利益が204億円になっている(四捨五入後)。
粗利率は26.4%に対して営業利益率は2.4%、経常利益率は2.6%となっている。粗利率と営業利益率のギャップが販売管理費(率)になるが、この中で大きな費目は人件費、地代家賃、ポイント関連費用だ。
アマゾンの目には、家電市場はブルーオーシャンに映っているはずだ。
筆者の推計ではアマゾンの家電販売の事業規模は、ビックカメラの事業規模にはおよばない(実はビックカメラはアマゾンに出店しているが、話がややこしくなるので今は忘れていただきたい)。そのため、ビックカメラと同水準の粗利率をアマゾンが出すのは(今のところ)難しいだろう。