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老後準備に失敗しそうな人々

カフェや食料品店の青果売り場で、こんな経験はないだろうか。

そこにいるあなたは、自分がやるべきことに集中していたのだが、ふとしたときに、お金についての誰かの会話が断片的に耳に飛び込んでくる。そして、その内容に唖然とさせられるのだ。

えっ? 退職後の蓄えを担保にしてローンを組んで、何を買おうとしているって!?

小耳に挟んだこうした会話ひとつで、私たちは信じられない思いで頭を振る。だったら、お金のプロはどんな驚くべき話を(しかも毎日)聞かされているのだろうか。

そこで、われわれは実際に確かめてみることにした。

全米各地のファイナンシャルプランナーに声をかけ、実際に彼らが顧客から聞いた、思わず困惑してしまうような、退職後のための貯蓄にまつわる面白エピソードを教えてもらったのだ。

沼沢地への投資から、簡単な計算をめぐる混乱まで、彼らの反応は、コミカルなものや信じ難いもの、あるいは胸が痛くなるものまで実に多岐にわたった。

お金に関する単純な誤解もあれば、軌道修正が必要な根本的な間違いもあった。そして、2~3ではすまないケースで、「次なる目玉」への投資を思いとどまらせる説得が必要だった(耳を貸さない人もいたのだが…)。

彼らに共通するものは何か? それは、ほとんどが、老後を迎える準備の失敗に関する訓話を提供してくれていることだ。

「老後のお金をテレビショッピングに投資したい」

1990年代にこんな顧客がいた。彼女は、夫の社会保障と年金に加えて、退職後のために50万ドルを蓄えていた。お金は賢明で安全な投資に回されていると保証しても、これだけでは不十分なのでは、と彼女は不安がっていた。

そして彼女は、テレビショッピングを制作している会社に投資できるように、株などをすべて売却してほしいと私に頼んできた。聞いてみると、その提案は60日後の利益を約束し、年換算利回りを180パーセントで計算していた。

もちろん、私はこの投資に反対した。

もっとよく調べましょう、初期の投資額を少なくしましょう、これに似た正当な投資先を見つけましょう、といった代替案を提示して彼女の説得を試みた。

しかし、深夜番組の愛好家である彼女は、私の説得に応じなかった。

案の定、「テレビショッピング制作会社」に彼女がお金を送ると、たちまち彼らは音信不通になった。お金の行方を海外の発信源まで辿ることはできたが、結局、彼女はすべてを失った。そして、税金まで負うことになった。彼女はお金を自分のIRA(個人退職勘定)からも引き出していたのだ(注:従来型IRAの場合、通常、59.5歳以前の口座からの引き出しには10パーセントのペナルティー課税が適用される)。

――コーリー・シュメルザー:公認ファイナンシャルプランナー(CFP)/サンディエゴ・ウェルス・マネージメント創設者。カリフォルニア州サンディエゴ

「我が家の男たちは、全員が退職するまでに死ぬ。貯金など知ったことか」

これは、彼の父と祖父、そして3人のおじの全員が、退職する前に亡くなったという顧客の話だ。

世の中には、どうせそれまで生きていないんだからと仮定して、老後のための貯蓄に払う大変な努力を一笑に付す人たちがいる。一件落着――ただし、彼らが長生きしなければの話だが……。

私は彼に言った。家族が早死にしたからといって、あなたもそうなるとは限りませんよ、と。「たとえ身体や職業、環境などの条件が同じでも、医学の進歩のおかげで健康を保ち、長生きできるかもしれないんですよ」

私は彼に、金銭問題の現実的な解決策が「早死にを願うこと」ではまずいことを同意させた。彼が100パーセント納得したとは思わないが、彼が401kプラン(確定拠出年金)の配分を増やし、贅沢なボートを買おうとするのをやめたのは事実だ。

――レス・サーカ:公認ファイナンシャルプランナー(CFP)/サーカ・ファイナンシャル・プランニング&インベストメンツ最高経営責任者(CEO)。オハイオ州クリーブランド

「会社の401kにはお金を入れるなと言われたもので……」

私の顧客の以前のアドバイザーは、投資選択の不足を理由に、彼女に会社の401kプランに加入しないように言った。

何年も前のことで、彼女はマッチ(加入者が賃金から拠出する資金に、企業が一定の割合で加算する給付金)と、見込まれる利益を得るチャンスを逃すことになった。加えてその間、彼女はほかの退職金口座に貯金していなかった。

そのアドバイザーが401kプランへの加入を勧めず、IRAへの自動積立を提案しなかったおかげで、私の顧客は退職後のための貯金・投資の機会を数年間逃すことになったのだ。

マーケットの状況次第では、401kプランの運用成績があまりよくないように見えることもある。しかし、結果は年ごとに異なるものであり、401kプランへの加入を選択肢から除外すべきではないのだ。

――リーサ・ピーターソン:公認ファイナンシャルプランナー(CFP)/ウェルスクリニック創設者。カリフォルニア州トラッキー

「このロシアの新興企業は絶対に巨万の富を生む!」

先日、ある退職前の人から、ロシアの食品サービスの新興企業について尋ねられた。その企業は何百万、いや何十億ドルのリターンを約束していた。

面白いのは、話題の新興企業についての質問は珍しくないということだ。

このような機会について尋ねてくる顧客の典型は、退職を5~10年後に控えた人々で、リスキーな案件に対する彼らの意欲はもともとは小さめだ。しかし、近所の人や友人が話題の新興企業に投資しているのを見ると、彼らは取り残されるのが怖くなってくるのだ。

私はこのような状況を、顧客と話し合うチャンスと見て、そもそもの目標と、それを達成するために協力して整えてきた計画を彼らに思い出させる。もし彼らが投資に失敗したら、損失を取り戻して悠々自適を実現するための時間はもうあまりないだろう。彼らは自身の長期目標を危険にさらすことになるだろう。

――ジェイソン・ジェンタイル:公認ファイナンシャルプランナー(CFP)/アペラ・キャピタル社シニアファイナンシャルアドバイザー。コネティカット州グラストンベリー

「高く買い、安く売れ!」

電話の三者通話サービスで話していたときのことだ。相手の一人は私の顧客、もう一人は彼の会計士だった。この顧客の投資スタイルは長期型で、彼のポートフォリオの大半は株で構成されていた。

通話中、顧客は会計士から、今は相場が下がっているから売って、上がるまで待って再投資すべきだ、と言われていた。

これはまさに、誰もが投資の初級講座で習う、あのマントラ「安く買い、高く売れ」の逆を行くものではないか。しかも、これを言っているのは会計士なのだ!

これを聞いた私は、顧客に言った。実はその、下がっているときに売れば、損をするのは確実なんだ、と。

過去22年間に私が聞かされたなかでは、これがいちばん馬鹿げた(驚かされた?)話だ。

――クリストファー・キンボール:クリストファー・V・キンボール・ファイナンシャル・サービシーズ公認ファイナンシャルプランナー(CFP)。ワシントン州レイクウッド

「100万ドルの1/4を相続したの。5人の息子たちに5万ドルずつあげて、残りは投資に回すつもり」

25万ドルを相続した顧客が、私に言った。「ダグ、息子たちに5万ドルずつあげたいの。そうすれば、あの子たちもおじいちゃんとおばあちゃんのことを忘れないでしょ? 残りは自分の退職後のために投資したいんだけど……」

彼女は数学が得意でないことに気づいた私は、丁寧な口調で言った。「どうなるか、一緒に見直してみましょう」

私は、会議室のテーブルの上にいつも置いている特大の計算機に、数字を打ち込んで、5人の息子に5万ドルずつ与えると、答えは25万ドルになる、と彼女に説明した。たった今、私が言ったことを彼女が飲み込むかたわらで、私はじっと座っていた。そのお金が目標達成には十分でないことに気づいた彼女の顔からは笑顔が消えた。

おそらく「100万ドルの1/4」を受け取ると聞いたときの彼女は、実感がなく、金額を過大評価していたのだろう。

世の中には、数字の観点から物事を考えない人もいる。だから、彼らの現実を反映する語彙を使って、彼らにコンセプトを説明する方法を見つけなければならない場合がよくあるのだ。

――ダグ・ゴールドスタイン:公認ファイナンシャルプランナー(CFP)/『Rich as a King: How the Wisdom of Chess Can Make You a Grandmaster of Investing』(キングのようにリッチになろう:チェスの知恵で、投資のグランドマスターになる方法)の著者。フロリダ州マイアミ

「ゴルフの先生から、耳寄りな投資話を聞いたんだよ」

中小企業を経営する顧客が、私のところに来て、ゴルフのティーチングプロからフロリダの不動産ベンチャーへの投資を勧められている、と言った。

私はこれに強く反対した。

彼がこの話を耳にする以前から、私たちは、ファイナンシャルプランの作成に取り組んでいた。そのなかには、リスク許容度の観点から彼のニーズを満たすように展開する配分で、株式や債券、不動産、投資信託などを活用して、退職後の生活および子供たちの大学進学のために余分なお金を蓄えておくことはもちろん、IRAに拠出することなども含まれていた。

残念ながら、プロのファイナンシャルアドバイザーのアドバイスを聞く代わりに、彼はすべてをこの不動産に投入した――下見さえせずに……。

結局、そこは沼沢地だったことがわかり、彼はこの投資で大きな痛手を追うことになった。

――キース・クライン:ターニング・ポインテ・ウェルス・マネージメント公認ファイナンシャルプランナー(CFP®)。アリゾナ州フェニックス

「次のテスラを見つけたぞ!」

かつて私は、富裕層向けのファイナンシャルプランニング会社でアナリストとして働いていた。当時の顧客に50代前半の男性がいた。彼の妻も同年代だった。その男性は、常に次の注目株を見つけようとしている「ギャンブラー」タイプの投資家だった。

2011年、彼は次の投資先として、フィスカー・オートモーティブに目をつけた。当時、テスラと張り合っていた自動車メーカーだ。

困ったことに、彼は小額の投資では気が済まず、フィスカーにすべてを投じたがった。

私は説得を試み、もしそんなことをすればすべてを失ってしまう可能性が高いことを彼に伝えたが、彼は聞く耳を持たなかった。

丸一日かけてフィスカーの調査を行った私は、同社が1台のクルマをつくるのに90万ドル近い費用をかけ、それを7万ドルでディーラーに売っていると書いている報告書を発見した。私がこれを見せると、さすがの彼もようやく正気に戻りはじめた。

彼を止めることができて本当によかった。というのも、この数年後にフィスカーは破産申請を行ったからだ。そればかりか、同社はテスラから技術を盗んだとして訴えられてもいたのだ。

――ジョン・デューリン:マネースマートガイズ元ファイナンシャルアナリスト/ブロガー。ペンシルベニア州フィラデルフィア

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原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Marisa Torrieri, LearnVest、翻訳:阪本博希/ガリレオ、写真:PeopleImages/iStock)

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This article was produced in conjuction with Daiwa House.