タイに詳しいピッカーコメント、連載に付加価値
2015/10/29, NewsPicks編集部
タイ・カントリーリポート 第10回(最終回)Q&A
タイに詳しいピッカーコメント、連載に付加価値
2015/10/29
最終回となる第10回は、これまでの連載記事に寄せられた質問やコメントを紹介する。鋭い質問や付加的な情報を寄せていただいた方々をはじめ、すべての読者に感謝したい。プロピッカーの木場紗綾同志社大学助教からは、在タイ日本大使館での勤務経験や専門の東南アジア研究の見地から、もう一つの連載ができるほどのコメントをいただいた。
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仏教がつなぐ日本とタイ
ピッカーコメント
バンコクの中華街にあるワット・ラーチャブラナというお寺には高野山から派遣されている日本人の僧侶がいます。このお寺には1985年以降にタイで亡くなった日本人のお墓があり、その魂を供養しています。管理はタイ日本人会です。(第2回より)
筆者
日本とタイが仏教を通じてもつながっていることを示す情報。タイの地で亡くなった日本の先祖たちを大切にするという日本人会の活動は、高く評価したいところ。日本とタイには、こうした心と心が触れ合うような良いエピソードが多い。
政治に対する表面的理解は投資判断を誤ることに
ピッカーコメント
タイへの投資判断の際に軍事政権や政情不安をネガティブ要因として挙げる方が時々います。しかし、タイへの外資による投資は軍事独裁政権が存在した1950年代以降から始まっています。(第3回より)
筆者
タイ政治は一見するとネガティブに見えるニュースが多いが、このコメントの通り、タイは第2次大戦後に12回のクーデターが発生しているほか、軍事政権も経験した。「クーデター」や「デモ」という言葉を表面で捉えると正確な理解はできない。タイの政治や社会の在り方まで理解することが必要だろう。
ピッカーコメント
この問題は結局、タクシン政権のバラマキといわれる地方への投資と現地財閥企業の汚職体質をどう捉えるのかというのがポイントだと思います。タイの全国平均とバンコクの平均が5倍以上。タイには深刻なバンコク vs. 地方都市という対立がある。タイ全体の発展を考えればバラマキといわれる投資も必要だと私は考えています。(第4回より)
筆者
都市と地方の格差は、タイの経済と社会の発展を考えるうえで重要な論点。財閥による開発資金、政治によるバラマキマネーは、批判することは簡単だが、現実を見る場合に必要な側面もあることを指摘した良質なコメント。
近代国家成立以前のタイ、村をまとめる「ムアン」から中央集権へ発展
ピッカーコメント
近代化以前のタイの統治機構ってどうなってたんだろうね?(第3回より)
筆者
読書案内で挙げた柿崎一郎『物語タイの歴史――微笑みの国の真実』(中公新書、2007年)がおすすめだ。
近代化以前は、「ムアン」と呼ばれる国家の原型になるような原初的な統治機構があった。それが基本となり、近隣の中央集権化が進んでいる事例を参考に近代国家化を進めたという経緯がある。日本の飛鳥時代から平安時代にかけて、ムラ的な社会から国家の原型をなす統治機構が形成されていったのに似ている。
連載で取り上げたチャクリー朝はそれ以前のアユタヤ朝が原型になっている。タイの歴史は面白い。ぜひ、読書案内で取り上げた書籍を手に取ってほしい。
なぜTPPへの対応が遅いのか、大メコン圏を移動する具体的ルート
ピッカーコメント
タイ政府がTPPに乗り気でない(あと1〜2年は検討を要すると新聞に出ていました)のはなぜでしょうか。(第6回より)
筆者
タイは貿易依存度が高い国のため、基本的に自由貿易を促進していく必要がある。インラック政権は、発足して早い段階でTPP参加の方向という発言をしていたが、その後の政治混乱で棚上げの状態が続いていた。
時間がかかる理由として、まずは技術的な問題が大きい。条約の締結や批准を、現政権がやってしまってよいのかという問題がある。「1〜2年かかる」という点は、民政移管が早くても2017年であることと合致する。
ピッカーコメント
来月、南部経済回廊の起点であるベトナムのブンタウは行く予定です。12月はミャンマーなので、東西(中部)経済回廊起点のミャンマーのモーラミャイン、南部経済回廊の起点のミャンマーのダウェイには行く予定。
これらの経済回廊は、カンボジアのシアヌークビルからプノンペンを経由してラオスに北上するルートを、逆にどうつくるか(南部と中部の結合)が、東南アジア諸国連合(ASEAN)の陸の発展のキーになるのではとして変わった見方をしています。開発の三角地帯と呼ばれる場所をどう取り込むか。
南部経済回廊は、カンボジア内で大きく2つに分かれていて、シェムリアップ経由のトンレサップ湖北側ルートと、プティサト、バッタンバン経由のトンレサップ湖南側ルート。(第5回より)
筆者
大メコン圏の移動ルートがわかる価値あるコメント。筆者自身もこれだけの大移動をしてみたいと思うルート。大メコン圏発展の成否は、物流網の整備がカギの一つになるだろう。
プロピッカー木場氏の有益な連動コメント
プロピッカーの木場紗綾氏から有益な付加情報が多く寄せられた。ここでは、いくつかピックアップして紹介する。筆者の見方とは違う部分もあり、連載と比較して読むとタイに対する理解が深まるだろう。
ほかでは読む機会の少ない貴重なコメントのため、少々長くなるものの、若干の編集を加えた以外はほぼ全文を引用した。
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コメント
注目のコメント
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第10回、最終回となりました。最後までお読み頂き、ありがとうございます。
カントリーリポートのパターンとして、最後のQ&Aです。
タイは色々と知識をお持ちの方が多く、私としてもコメントを通じて学ぶところがありました。特にプロピッカーの木場さんからは、連載を補うようなコメントをほぼ毎回頂きました。
分量の都合から取りあげられなかったコメントもあります。復習の意味もこめて、連載とコメントを読み返して頂けると、タイについての基礎がOKとなると思います。
来月もカントリーリポート、そして、ASEANの新企画が動いています。引き続き、ご期待下さい。
※バックナンバー
予告編(無料)
https://newspicks.com/news/1211458
第1回:日本の中のタイ、タイの中の日本
https://newspicks.com/news/1211457
第2回:ロイヤルファミリーの絆が日タイ関係の礎に
https://newspicks.com/news/1212681
第3回:ASEANで唯一独立を保ったタイ。危機を救った伝説の名君
https://newspicks.com/news/1214559
第4回:新興アジアの優等生、今後は政治の安定化が急務
https://newspicks.com/news/1216403
第5回:世界有数の自動車と観光産業、大メコン成長のハブへ
https://newspicks.com/news/1218187
第6回:課題は少子高齢化、農業対策、輸出構造。不安定な金融情勢を読むポイントは?
https://newspicks.com/news/1219141
第7回:「タイ式クーデター」と「司法クーデター」。タイ政治を理解するカギ
https://newspicks.com/news/1219967
第8回:混乱続くタイ政治、経済に打撃を与える前に決着できるか?
https://newspicks.com/news/1221762
第9回:新書をはじめ良書が豊富なタイ関連書籍https://newspicks.com/news/1223579引用いただきましてありがとうございます。他の方々のコメントも毎回とても参考になりました。私がタイに住みはじめたとき、その前にいたフィリピンとは違って、日本人ビジネスマンやタイで起業されていた自営の方々、ロングステイヤー、学生、ジャーナリスト、その他、いろいろな日本人が参加できる勉強会や異業種交流会があちこちで開催されていることに本当に驚きました。日本では知り合うことがないかもしれない業種の方々とも出会うことができました。何らかの形でタイとかかわっておられる日本人はとても多く、タイ語を話す日本人もずいぶん多く、いつも学ぶことばかりです。川端さんの、ピッカーのコメントに対して執筆者が反応し、対話が続いていくようなスタイルを拝見して、こういうのがまさに東南アジアを学ぶ者の肌感覚かなと思いました。Newspicksの醍醐味であり強みですね。
ヨドバシでタイ語か、タイの観光客もかなり増えてるんだな。2014年は65万人で40%以上前年よりも増えて、第6位。
https://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/pdf/market_basic_thailand.pdf
考えれば、中国語、英語、韓国語の次の対応と言ったらタイ語になるのも普通の流れか。
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