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アフリカ市場を攻略せよ 第3回

【亀山敬司×牧浦土雅】海外に行っても帰国前提の日本人。それでは成功しない

2015/10/29
DMM.comの次の目標を「アフリカへの進出」と定め、手を挙げた社員をアフリカに送り込んだ亀山敬司氏。ルワンダで農業・流通などのビジネスを展開する、牧浦土雅氏。異色の起業家2人が、アフリカのビジネスチャンスについて語り尽くす。
第1回:死んでも文句言わないようなやつだけ、アフリカに行かせた
第2回:ルワンダを選んだからこそ、希少価値につながった

青年海外協力隊の任期は2年しかない

亀山:でも、やっぱり中国人のたくましさは感じるよね。ある意味ガツガツしすぎなんだけど、それくらいじゃないと入り込めない。日本企業だと同じことをやろうとしても「社員の安全性に懸念が残る」とかなんとかいって、中途半端に終わってしまう。

牧浦:日本の人って海外に行っても、いつかは帰国する前提なんです。でも、中国の人はそんなこと考えていない。向こうで生きるつもりで行っているから、そりゃ強いですよね。

僕が問題だと思うのは、青年海外協力隊の任期が2年に制限されていることです。1年目は現地のニーズがわからないから「何をやるか」を決めるのに費やされる。それで、「学校を建てよう」「ホテルを建てよう」と考えて実行に移しても、現地のビジネスパートナーを見つけるのに半年ぐらいかかる。体制が整って「よし、建てよう」となったときには、残り半年しかありません。協力隊の人が帰国する頃にようやく着工することなんてザラです。

もちろん、残りたかったら残ってもいいんだけど、そうするとJICAからお金がおりなくなる。この任期制をなんとかしないと、本当にアフリカビジネスに精通する人は育ちません。

亀山:あと、今はアフリカから日本に来る留学生も少ない。もっと支援して呼んであげればいいと思うよね。俺も人事に「日本語ができるアフリカ人を採用しろ」って言ってるもん。

牧浦:あくまでも「日本語ができる」アフリカ人なんですね。

亀山:だって、俺、英語できないからさ。俺中心だよ(笑)。向こうの優秀なやつを連れてきて、日本語を教えて日本人スタッフと一緒に仕事をさせる。で、アフリカに帰ってDMMアフリカの事業を手伝ってもらいたい。

日本人が向こうに行っても文化までは吸収できないから。だったら向こうの人間に日本語を覚えてもらったほうが、うまくいきそうな気がするんだよね。

ついでにいうと、英語でやりとりするときだって、ネイティブの英語よりもアフリカなまりの英語のほうが通じるかもしれないよ。だから、アフリカ人を採用したら、日本人社員には彼からアフリカなまりの英語を勉強してほしい。

牧浦:さらに言うなら、英語はおろか、言語がいらない場面もあります。しゃべるよりも脱いだほうが早い、とか。「My name is〜」と自己紹介するより、パッと脱いだほうが「こいつは信頼できる」と思われる。

亀山:俺も全然英語できないけど、現地の人に「泊めて」って日本語で言ったら、泊めてくれたよ。ボディーランゲージもだいたい通じる。食いたいものを指さして「これ」って言ったり、困った顔をしていれば、なんだかんだで助けてくれるものだよね。

亀山 敬司 株式会社DMM.com 取締役会長 石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT、太陽光発電、FX、英会話、3Dプリントと節操なく事業展開をする実業家。めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎に包まれている。

亀山敬司(かめやま・けいし)
DMM.com取締役会長
石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT、太陽光発電、FX、英会話、3Dプリントと節操なく事業展開をする実業家。めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎に包まれている

なぜケニアでモバイル送金サービスが広まったのか

牧浦:そういうところでは文化も独特ですよね。たとえばケニアには10年前から、エンペサというモバイル送金サービスが広まっていましたが、最近出てきたLINE PayやApple Payを先取りしてるんですよ。それがケニアから東アフリカに広がり、最近ではルーマニアなど欧州にも進出しつつある。まさに「リバース・イノベーション」(途上国で生まれたイノベーションが先進国に逆流すること)の好例です。

亀山:銀行が十分にないからこそ、流行したサービスだよね。インフラ回線が十分に整っていないアフリカに、いきなりスマホが入ったことで、先進国とは違った独自の使われ方になる。昭和初期の社会にいきなりスマホが登場したようなものだよね。

牧浦:ケニアには都市部にしか大きな銀行がありません。地方に行けば銀行をつくっても誰も使わない。だからモバイル送金が普及し、そして仮想通貨も先進国が規制うんぬん言ってる前にこういった国々の地方から普及が始まるかもしれません。

亀山:これはそんなに難しい技術ではないよね。ケニアではセキュリティどうこうよりも実用性が重視される。その光景を見て、すごく原始的なんだけど、同時に未来的だなと思った。

日本のゲームも、単純なものなら結構はやると思うよ。むしろDMMに渡してくれれば、それをスワヒリ語にして広めるというビジネスをやろうかな。

現地パートナーとミーティングをする牧浦氏

現地パートナーとミーティングをする牧浦氏

牧浦:ただ、日本人的なマインドでビジネスをやろうとすると、最初は苦労することもあります。相手がミーティングに遅刻する、仕事を「やった」とうそをつく、できる以上のことを「任せろ」と言う、なんてことは日常茶飯事ですから。

亀山:当たり前といえば当たり前でしょ。日本人が真面目すぎるんだよ。

牧浦:そう。その状況を楽しめるようになればいいですよね。

亀山:それくらいの鈍感さがないと多分やっていけない。とはいえ、アフリカに慣れちゃうと日本の社会で通用しない人間になっちゃうけどね(笑)。

牧浦:そうそう。向こうだとイエスを「イー」と言うんですが、数カ月ぶりに帰国して、成田空港のスタバでラテを買おうとしたときに、「ご注文は以上ですか?」といってきた店員に、「イー!」と言っちゃいました。「なんだこいつ」という目で見られて初めて、「危ない危ない。マインドを戻さないと」と感じました(笑)。

牧浦土雅 Needs-One Co.,Ltd. 共同創業者 1993年生まれ。東アフリカ、主にルワンダで国連と一緒に農村と市場をマッチングする事業を牽引。TED『世界の12人の若者』、NewsPicks Paper『40歳以下の日本人イノベーター』に選出。輸送用ドローンを開発するベンチャー立ち上げの経験を生かし、内閣府では、国家戦略特区でのドローン利活用についても議論を重ねている。最近では新たに教育サービスの世界展開にも従事。著書に『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』(DBS社)がある。

牧浦土雅(まきうら・どが)
Needs-One Co.,Ltd.共同創業者
1993年生まれ。東アフリカ、主にルワンダで国連と一緒に農村と市場をマッチングする事業をけん引。TED「世界の12人の若者」、NewsPicks Paper「40歳以下の日本人イノベーター」に選出。輸送用ドローンを開発するベンチャー立ち上げの経験を生かし、内閣府では、国家戦略特区でのドローン利活用についても議論を重ねている。最近では新たに教育サービスの世界展開にも従事。著書に『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』(DBS社)がある

(構成:野村高文、撮影:遠藤素子、協力:DMM英会話)

続きは明日掲載します。

*本対談はDMM英会話との連動企画であり、本編終了後には「裏・アフリカ対談」が同社公式ブログに掲載予定です。