シリコンバレー発のパーソナル教育「AltSchool」体験記

2015/10/27
前回に引き続き、注目の学校「AltSchool」の全貌に迫るとともに、親子でサマースクールを体験した岡昌之氏の体験記を掲載する。

アップル、ツイッター、アマゾン、ウーバー……etc.「チームAltSchool」の豪華すぎる面々

校舎にはクラス一つだけ。膨大なデータを分析し、生徒一人ひとりに最適なプログラムを提供する。生徒は1日の授業の半分を個別に組まれた課題にあたる。
AltSchool創業者のマックス・ヴェンティラは、グーグル在職中、そんな「マイクロ・スクール構想」を同僚たちに持ち掛けた。
すると、多くの仲間たちが関心を示した。ヴェンティラのアイデアは、ベイエリアのエリートたちが初等教育に対してずっと感じていたモヤモヤを解決するだけでなく、ひょっとするとアメリカの学校教育のかたちを変えるかもしれない、と感じたのだ。そして、すぐにヴェンティラの計画に巻き込まれた。
そんな彼らが「チームAltSchool」となり、2013年春にグーグルを退社。彼ら彼女らのほかにもアップル、ツイッター、アマゾン、Uber(ウーバー)、Airbnb(エアビーアンドビー‎)、ジンガ、Rocket Fuelなど西海岸の著名企業から優秀なデザイナーやエンジニア、多数のTeach For America経験者、そして熱意あふれる教師たちが続々とプロジェクトに参加した。
こうして、同年9月、20人の生徒と30人のスタッフでAltSchoolの第1号校はスタートした。ヴェンティラらのグーグル退社から、わずか半年のスピードだった。
ここで改めて、マイクロ・スクール構想“AltSchool”とは何かについて振り返りたい。
(1)Pre-KからG8までの学年を持つ学校(日本でいうと、幼稚園から中学校まで)
(2)生徒はLower Elementary(Pre-K~G2〈5〜8歳〉)、Upper Elementary(G3~G5〈8〜10歳〉)、 Middle School(G6~G8〈10〜12歳〉)と分かれる
(3)1つの校舎には平均100人前後の生徒、3学年が1つのグループとなる多年齢クラス
(4)校舎にはクラスルームしかない。毎週1日は近隣のさまざまな公共施設へ出掛けるなど、外部のものを利用し尽くす
(5)1日の授業の半分は生徒個別に組まれた課題にあたり、もう半分は共同で取り組む課題や公園でのスポーツなど
(6)タレントぞろいのPEDチーム(プロダクト、エンジニアリング、デザイン)が膨大なデータを分析し、個や集団にとって最適なプログラムを提供する
(7)各地区に配置されるAltSchoolがPEDチームを中心に有機的につながり、あらゆる情報も共通化。校舎間の人の移動もスムーズに行われる
(8)システムやサービスの一部を導入したほかの学校もサードパーティーとしてネットワークに参加可能となる

世界初の試み、AltSchoolが持つ“2つの顔”

AltSchoolには2つの顔がある。1つは、教育の現場である学校の顔。そしてもう1つは、データを収集・分析し、効果的な学習プログラムを作成したり、アプリを製作したりするPEDチームの研究開発(R&D)の場としての顔だ。