[上海/香港 26日 ロイター] - 上海のダウンタウンにあるショッピングモール、迪美購物中心は、買い物するには驚くほど活気がない。中国でも有数の買い物都市にありながら、閑古鳥が鳴いている。

「ドレス1枚すら売れない日がある」と、同モールで婦人服店を営む女性は話す。

中国の9月小売売上高は、前年同月比で10.9%の増加となり、アナリスト予想および8月実績の10.8%増を上回った。だが、同国のモールや百貨店では、空室率の上昇と賃料の著しい下落は常態化しつつある。

この明らかな矛盾はなぜか。その答えとして、ネット通販との競争激化や、小売統計の数字を押し上げているとみられる政府の買い入れが挙げられる。また、そうした商業施設の管理の悪さもその一因だろう。故に、ショッピングモールが閑散としていても、さほど驚きではない。

さらに重要なのは、こうした実店舗を構える小売業者の苦境が政策的難問となっていることだ。本来は消費増大の恩恵を受けるはずの商業施設が、実際には対国内総生産(GDP)比160%に上る企業債務の問題を増幅させている。この割合は米国の約2倍に当たる。

客足が滞るということは、モールの小売店主や開発業者に流れるキャッシュフローが圧迫されることを意味し、減速する中国経済にとって潜在的な危険性をはらんでいる。

迪美購物中心の小売店主らは改装を考えているが、それが功を奏するかは不明だ。店舗を閉める店主もいる。

北京中心部の繁華街にある商業施設、東方新天地にある百貨店は今月、閉店した。百貨店のマネジャーはロイターに対し、「売り上げはまずまずだったが、全体としては減少傾向にあった」として、インターネット上により良い環境を求めていると語った。

<スリム化>

商業施設を運営する上場企業も痛みを感じている。不動産大手の大連万達商業地産は1月、施設30カ所を閉鎖もしくは再編すると発表、8月には一段の調整が行われているとした。

中国70カ所以上で展開するマレーシア系の百盛百貨(パークソン)は、中国での純利益が2013年に58%減少したのを受け、昨年には北部にあるいくつかの店舗を閉店させた。

「中国の成長率の減速を受けて小売売上高も伸び悩む中、モール用スペースにあふれる都市部では空室率がかなり上昇している」と、格付け会社ムーディーズのアナリスト、マリー・ラム氏は調査メモで指摘している。

景気を下支えするため、中国人民銀行(中央銀行)は23日、過去1年間で6度目となる利下げに踏み切った。

ING(シンガポール)のエコノミスト、ティム・コンドン氏は、中国の小売売上高に関する公式データには一部政府による買い入れも含まれていると指摘。家計消費だけを反映するものではないと警告する。

一方、電子商取引(Eコマース)は、一部で落ち着きはみられるものの、2桁成長を続けている。中国大手アリババ・グループ・ホールディングの2016年第2・四半期売上高は大幅に減少する見通しだが、年間ベースでは約27%増と依然として好調だ。

さらに中間層が拡大する中、娯楽を提供する場所も活気にあふれている。映画興行収入は10月の大型連休だけで、前年同期比60%増の3億ドル(約363億円)近くに上り、記録を更新した。

だからと言って、迪美購物中心のようなショッピングモールの慰めにはほとんどならない。加えて、買い物客と不動産開発業者の情熱が一致しなければ、過熱した建設ラッシュが銀行に不良債権を負わせるリスクが高まる。

<ショッピングモールの過剰生産能力>

事業用不動産サービス会社CBREによれば、世界のショッピングモール建設の半数以上が中国で行われている。ただし、その多くが投資家に高利益をもたらすとは言えないようだ。

中国連鎖経営協会とコンサルティング会社デロイトが共同で発表したリポートは、中国の新規ショッピングモールが年末までに計4000件に達し、2011年から40%超の大幅増になると予想している。

商業施設の建設が大きく伸びている現状の背景には、景気刺激策の一環として不動産開発を推し進める地方政府の要請があると、不動産を専門とするアナリストらは指摘する。そのため、ショッピングモールは短期間で建設され、ずさんに運営される結果となる。

客足がショッピングモールの良し悪しを決めるのは言うまでもない。

「建設しても客が来なければ、それは不良債権だ。そうなれば、銀行の問題となる」と、INGのコンドン氏は指摘した。

(原文:Pete Sweeney and Jessica Macy Yu 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)