テクノロジーとは何か。それは「生き方」そのものだ

2015/10/26
政治・経済・ビジネス・サイエンス・学問。あらゆる領域で、グローバル化が進行している。ただし、今のままでは、日本と日本人は世界での競争に勝つことはできない。日本人が世界で成り上がるには、これまでの成功体験を捨て、新しいメンタリティや方法論を身につける必要がある。
世界を舞台に活躍する慶應義塾大学教授の竹中平蔵氏とメタップス社長の佐藤航陽氏が、リーダーシップ、教養・哲学、テクノロジー、先見力などの切り口から世界を語る。第3弾では「テクノロジー」をテーマに語り合う。
(聞き手:佐々木紀彦・NewsPicks編集長)

テクノロジーという言葉が持つ3つの意味

佐々木 本連載では Vol.1でリーダーシップについて、 Vol.2で教養・アートについて語っていただきました。第3回はそこからちょっと飛びますが、デジタルも含めた「テクノロジー」というテーマでお話しいただければと思います。
「テクノロジーと資本主義」のようにマクロな話から、「テクノロジーと教育」「テクノロジーと未来を予測するためのカギ」といった、いろいろな切り口があると思います。
私たちはテクノロジーというと、すぐ「技術」と訳してしまいますが、本当はもっと広い概念なんじゃないかなと思います。ちょっと抽象的ですけれど、テクノロジーというものをどういうふうに定義すればいいのか。そこから佐藤さんに伺えますか。
佐藤 確かテクノロジーというのは語源がギリシャ語のtechnologiaという言葉からきていて、「技術を学ぶこと」という意味だったんですよね。
最初は道具みたいなものから始まっていって、17〜18世紀ぐらいのニューヨークでは、テクノロジーという概念そのものができあがってくる。その流れを見ていると3つぐらいの特徴があるように思います。
1つ目に、人間がもっている身体や精神の力を拡張していくという機能がある。
2つ目に、時間がたつにつれ、主従関係が逆転するという特徴。
つまりテクノロジーによって新しい仕組みが定着すると、私たちはそれに合わせて社会システムをつくるから、テクノロジーのほうが人間を教育するようになる。なので、いつのまにか主従が逆転していく。
3つ目に、空間の広がりを持つようになるという特徴。
私はよく「手のひらから宇宙」と言うんですが、最初に身体の近くから始まっていったものは、さらに遠く、遠く、離れていくという空間的な広がりをもつ。こんな3つの特徴を持っているような気がしますね。
進化のスピートがどんどん上がっていくというのも特徴かもしれません。テクノロジーはテクノロジーを誘発するので、もう二次関数的に進化のスピードが上がっていく。ですからテクノロジーに注目していると、次にどうなるかが読みやすくなります。
昔は100年くらいテクノロジーが変わらなかったので、生まれた瞬間と死ぬ瞬間がほとんど同じテクノロジーでしたが、今はもう10年単位で別の世界になっています。
竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
1951年、和歌山県和歌山市生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。1981年、ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員。1982年、大蔵省財政金融研究室主任研究官。1987年、大阪大学経済学部助教授。1989年、ハーバード大学客員准教授、国際経済研究所(Institute of International Economics)客員フェロー。1996年、慶應義塾大学総合政策学部助教授。1998年、「経済戦略会議」(小渕首相諮問会議)メンバー。2001年、経済財政政策担当大臣。2002年、金融担当大臣・経済財政政策担当大臣。2004年、参議院議員当選。経済財政政策・郵政民営化担当大臣。2005年、総務大臣・郵政民営化担当大臣。2006年、慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長。2009年、パソナグループ取締役会長、2010年、慶應義塾大学総合政策学部教授。2013年、産業競争力会議メンバー。2014年、国家戦略特別区域諮問会議メンバー。オリックス社外取締役。近著に『日本経済2020年という大チャンス!』(アスコム)、『日本経済のシナリオ』(KADOKAWA)。

リーダーに必要なのは正しい予言

佐々木 確かにiPhoneが出てきたのが、まだ8年前ですよね。8年で、こんなに変わった。